第66話 道化劇
わかっている
ルナが俺に恋してるわけじゃないことぐらい
嘘でも偽りでも
ルナが恋人として振る舞ってくれることが嬉しくて
柄にもなく浮かれている
そう、2回目のデートでペアの指輪を渡そうとしているぐらいには
俺の心は浮かれまくっている
明日はルナとの2回目のデートなので
俺は指輪購入しようとしているが
指輪の購入は初めてだから
なれている大人にアドバイスを貰おうとジャッカルに話を聞きにいく
「経験豊富なジャッカルさんに伺いたいことがあるのですが。」
「アーマーが下手に出て話しかけてくるなんて今日は雨が降るんじゃないか。」
「俺とルナは恋人になったんですけど。」
「知ってるよ。おめでとう。あんな女を愛せるのはお前だけだよ。」
「ありがとうございます。明日は2回目のデートなんです。」
「月2回しか出来ないデートね。そんな約束する彼女でいいのか?お前は。」
「不満だらけですよ。でも月に2回なら毎回キスしてくれるって言うから…」
「あいつ小悪魔すぎるな…」
「惚れた方の負けなんですよ。」
「ご愁傷様。」
「プレゼントを渡そうと思って。」
「いいんじゃないか?」
「指輪にしようと思ってて。」
「くそ重いな。アーマーらしいけど。」
「指輪なんて買ったことないからアドバイスを貰おうと思って。」
「俺もない。」
「いつも女囲ってるのに?」
「俺は遊びでしか女と付き合ったことはない。デートもしたことないし、プレゼントも送ったことはない。」
「うわぁ…」
「この仕事をしているんだ。特定の相手と交際出来るわけないだろう?」
「リリーは?」
「大事な仕事仲間に手は出さないよ。」
「遊びじゃなくて本気で付き合えば問題ないだろう?」
「別れたときにリリーが音楽団を辞めると言い出したら困るからな。アース音楽団のスーパースターだからリリーは。」
「一生大事にしてやればいいじゃないか。」
「俺は飽きやすい男なんだ。色々な女と遊ぶことが好きなんだ。」
「そう。最低なことはわかったよ。」
「指輪なんて俺は絶対嫌だね。ルナも嫌いなんじゃね?束縛されてるみたいでキモ…」
ジャッカルがいい終わる前に俺はジャッカルの口に指を突っ込んで塞ぐ
「なんか言ったか?」
「ふごふご!!」
「わかればいいんだ。」
「アドバイス貰いに来たくせに意見が気に食わないという理由だけで攻撃してくるな!!帰れ!!!」
「不誠実な恋愛しかしないおっさんに聞きに来た俺が悪かったよ。」
俺はジャッカルの部屋を出て、ナイルに会いに行った
「真の大人の男にアドバイスを貰いに来た。」
「嫌な予感しかしない…」
「ルナへ指輪をプレゼントしたいんだ。」
「いいじゃないか。」
「どんな指輪がいいかな?」
「うーん…宝石が付いてなくてシンプルな指輪の方が喜びそうかな。」
「そんな地味な指輪を?」
「ルナはゴージャスな物を寧ろ嫌悪している風潮があるし…質素な物の方が喜ぶと思うよ。」
「それはそうかもしれないけれど…特別感がないから…」
「刻印すればいいよ。」
「そんなことが出来るのか?」
「イニシャルを入れるカップルはたくさんいるよ。」
「そうなのか!素晴らしい情報をありがとう!」
「喜んでくれるといいね。頑張って。」
なんて余裕のある大人なんだ
ジャッカルとは大違いだ
初めからナイルに聞きに来ればよかった
ナイルは酒を飲んでいない時はこんなにも落ち着いたかっこいい大人の男性なのに
酒を飲むとだらしなく何も出来ない無能な大人になるからな
醜態を晒すだけなのになんで飲むんだろうか
「ナイルは酒を辞めたら?なんで飲むの?」
「お前はルナを好きな気持ちを辞めれるのか?」
「え…絶対無理…」
「それと同じだ。俺も酒を好きな気持ちを一生辞めれない。」
「酒にそんな激重の愛情があるの!?」
「そうだ。俺は酒に激重執着愛をしている。わかったか。」
「なんでそんなに好きなの?」
「気持ちよくなれるから。最高の気分にさせてくれるんだ。」
「周りはとんだ迷惑だけどね…」
俺はナイルにお礼を言ってジュエリーショップへと向かう
「いらっしゃいませ。」
「恋人へ贈る指輪が欲しいんだが。イニシャルで刻印出来るようなやつ。」
「畏まりました。」
店員は何点か目の前に出してきた
俺は気に入った指輪を選んだ
プラチナで作られている指輪らしい
値段は40万前後で初めて恋人に贈るプレゼントとしては少し安い気がするが、宝石を散りばめるとルナは嫌がりそうなのでシンプルなこの指輪にした
刻印は明日の朝には出来るということなのでお願いをして支払いを済ませて店を出る
翌日、朝一番に指輪を取りに行ってお昼からのルナとのデートに備える
服装はシャツにカーディガンを羽織って黒のズボンを履いてシンプルにした
待ち合わせ場所の噴水広場でルナを待つ
「お待たせ。アーマー。」
目の前のルナはゴシック調の黒のワンピースに黒のブーツ、髪の毛は巻かれていて少し濃いめの化粧もしていた
この瞬間が堪らない
普段服装も髪型も無頓着なルナが
俺の為だけにオシャレをして来てくれる
この場で抱きしめてしまいたい衝動に駆られる
愛おしくて堪らない
「今回も凄く似合ってて可愛いよ。ルナ。」
「えへへ。ありがとう。」
「今日は公園の池でボートに乗ろう。」
「いいね。楽しそう。」
俺はルナをエスコートして歩く
公園に着いてルナの手を取り一緒にボートに乗った
「風が気持ちいいね〜。」
「そうだな。」
ルナはボート上で寝転がり空を仰ぐ
「こんな風に2人で過ごせるなんて想像もしなかったな。」
「俺は想像ばっかりしてたけど。」
「フフッ。そうなんだ。」
「夢が叶って幸せだよ。」
「私も。こんな風に自由に過ごせるなんて夢みたい。ずっとこのままでいられたらいいのに。」
「ルナが望むなら。俺はずっとこの幸せを守ってみせるよ。」
ルナはにっこりと微笑んだ
俺はボートを漕ぐのを辞めて寝転がるルナの上に乗る
ルナの顔に近づき俺はキスをした
抵抗することもなく受け入れてくれるルナが嬉しくて俺は何度もキスをした
流石に何度もキスをしているとルナは俺の顔を手で押さえて言う
「ちょっと…動くと危ない水の上でそんなことするの卑怯だと思う…」
「こんなところで寝転がるルナが不用心だよ。」
「私はアーマーが紳士だと思っていたんですぅ。」
「狼で悪かったな。」
「反省しろ!」
「ルナがな。」
俺達はボートに座り態勢を直した
「これ。俺からのプレゼント。」
俺は用意した指輪を渡す
「…指輪?」
「うん。」
動かないで固まってしまった
重いと言われて束縛するなと怒られるだろうか
失敗したかな…
すると突然ルナの目から涙が流れる
「ご…ごめん!!重かったか!?束縛したいとかそんなんじゃなくて…!!」
「違うの…嬉しくて。ありがとう。アーマー。」
嬉しくて…?
俺は思わずルナを抱きしめる
「俺も…喜んでくれて嬉しい。大好きだよ。ルナ。」
ルナがどこまで本気で言っていて
どこまで演技で言っているのかがわからない
それでも…今、最高に幸せだ
騙されて浮かれているだけなのかもしれない
でも…このまま騙され続けても
俺はそれでも構わない
俺を一生騙してくれ
自由の為に手段を選ばないだけだとわかっていても
この道化劇を俺は辞めれない
「




