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第58話 今際の際まで忘れない

食事の後にトイレに行こうとしたら

目の前でルナが頭から血を流して倒れていた

全身の血の気が引くことを初めて経験した

体の震えた

怒りで震えたのか

ルナを失う恐ろしさで震えたのか

わからないけれど

震えた拳でルナを襲撃した男を殴った

絶対に殺してやる

殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる

俺は男の首を締め上げた

男の顔が苦痛で歪む

このまま男の首をへし折ってやろうと全力で首を絞める

「やめろ!!ルナの手当てが先だ!!」

と叫ぶジャッカルの声で俺はルナを見るとルナは頭の血が止まらず出血していた

震える手で俺は止血した

いやだ

無理だ

ルナだけは絶対に失いたくない

俺は移動魔法で急いで病院へルナを連れて行った

医者に見せている間生きた心地がしなかった

すぐに止血はしたし、意識もしっかりしている

大丈夫なはずだ

大丈夫…

大丈夫…

…ルナに傷一つつけないほど強くなったと思っていたのに

結果はこの様だ

自分の無力が憎い

全ての魔法が使えても好きな女一人守れないのか

何の為の力なんだよ


ルナは医者に診てもらって包帯をぐるぐる巻きにされて出てきた

医者に安静にしていれば大丈夫だと言われてホッとした

もう二度とこんな思いをしたくない

ルナも怖い思いをしたのだろう

いつもより不安そうにしていた

俺の腕を掴んで離そうとしない

“大丈夫だよ”

“助けてくれてありがとう”

と笑っているがいつもの明るい笑顔ではなく

陰りがある笑顔だった

ルナは頭の怪我よりも

首に掛けられた首輪の方が恐ろしかったようだ

俺は首輪を壊そうと触るが下手に壊そうとすれば

ルナの首も飛びそうだった

俺の魔法の力は大きな力を出すことは出来ても

精密な力のコントロールをすることは出来なかった

諦めたように悲しげに首輪を触るルナを俺は助けてあげることが出来なかった

何も出来ない

俺は…何も…

宿に帰るとリリーがルナの怪我を見て騒いでいた

ナイルもカイもホリーもルナを心配して来てくれた

ルナはこんな時だからこそ曲を書きたいんだと聞かない

ルナはリリーに無理やりお風呂に入らされた後に

ジャッカルが帰ってきた

ジャッカルは警察から貰った鍵でルナの首輪を外す

首輪を外した瞬間ルナは泣き出した

俺の前では大丈夫だと過剰に振る舞っていたのに

ジャッカルに抱きしめられて泣いているルナを

俺は醜い嫉妬の感情でしか見ることが出来なかった

俺がルナの理解者でいたい

俺がルナの一番頼れる存在でありたい

俺がルナのヒーローでありたかった

その役割を取られてしまった

ドス黒い感情がら蠢く

俺からルナを奪うなら

誰であろうと始末してやる


夜になったが眠ることなど出来なかった

黒い感情が身体中を支配して

体も心も休まることなんて出来ない

感情が蠢いて一晩中苦しんでいたが

「え?」

急に追跡魔法が発動する

驚いて俺は部屋から飛び出す

ルナは何故か宿のロビーに一人で移動していた

話を聞くと部屋ではリリーが寝ているので一人で楽譜を書く為に移動したそうだ

どうしてあんな目にあった後に

こんなに危ない単独行動をするんだろうか

頭の血管がはち切れそうだ

““奴隷になるぐらいなら死んだほうがマシ”

ルナはそう言った

ルナの一度目の人生の話はガリバーから報告を聞いているから知っている

だから…ルナが束縛や執着を人一倍嫌っていて

自由を求めているのはわかっている

でも…ルナが命を軽く扱っている姿には

苛立ちが募っていく

今が幸せだからいつ死んでも悔いはないかのように

ルナは明日死んでも構わないと思って生きている

2回目の人生はゲームのボーナスステージのように感じているのだろう

許さない

ルナが一人で死ぬなんて

俺は絶対に許さない

俺をこの世に残して一人で先に死ぬなんて

そんなこと絶対にさせない

俺はルナがいなくちゃ

ルナと一緒じゃないと

楽しくない

何も感じない

他の人間なんて

本当にどうでもいい

ルナだけ

俺にはルナだけ

それだけでいい

それ以上は何も望まないから


眠れない日々を過ごしていたが、ルナに気付かれてしまった

ルナは俺に添い寝をして歌を歌って寝かせてくれた

黒い感情があっという間になくなっていく

あぁ…幸せだ

俺が眠れないと知って、次の日も俺と一緒に添い寝をしてくれた

なんて優しいんだろう

俺の為にルナは尽くしてくれる姿が愛おしくて堪らなかった

眠れない日々が嘘のように

静かに眠りにつくことが出来た


翌朝起きたらルナの姿をがあった

俺は幸せを噛み締めていた

…この匂いは何だ?

酒か?

俺が寝ている間にルナは何処かに行った?

黒い感情が溢れる

ルナが起きて問い詰めると嘘をついて隠した

何故俺に秘密にして行動する?

俺が怒るとルナは激怒してしまった

“こんな雁字搦めの毎日なら死んだ方がマシだ”

そう言い残して

追いかけることは許されなかった

俺はまた部屋に閉じこもって震えて待つことしか出来なかった

何がダメだったんだろう

初めて会ったあの日

俺を初めて自由にしてくれて街へと遊びに行ったあの日を

幸せに満ちたあの日を

俺は毎日過ごしたいだけなのに

ルナと一緒にいて楽しく過ごしたい

それだけで

俺の望みはそれだけなのに

何故上手くいかない

この執着を束縛を

ルナは心の底から嫌うのに

どうしてもやめられない

気持ちが止められない

嫌われたくなんかないし

ルナを失いたくもない

ルナのいない毎日を過ごすことが

俺はこの世で1番恐ろしいよ

こわいよ

いやだよ

早く帰ってきてよ

俺が悪かった

仲直りをしよう

俺から離れていかないで

お願いだから


その日の夜にルナはサイと一緒に宿へ帰ってきた

“心配かけてごめんなさい”

そう言ってルナは帰って来てくれた

いいんだよ

俺はルナさえいればそれだけで

俺の元に帰ってきてくれたなら

それでいい

一緒に寝ようと言うと断られた

辛い

何故俺じゃダメなんだろう

俺が1番ルナを大事にするのに

俺が1番ルナを大事に守れるのに

ぐるぐるとしたモヤモヤとした気持ちがまた渦湧いて眠ることは出来なかった

翌朝の朝食も断られた

“適度な距離を保とう”

そう言われて

何で?

どうして?

俺じゃダメなの?

カイとルナが2人きりで朝食を食べに行く姿を見て

幸せそうに笑う2人を見て

嫉妬で頭がおかしくなった

俺達が初めて会ったあの日のように

2人は楽しく嬉しそうに出掛けていく

俺がルナの隣でいたかったのに

俺がルナを笑顔にさせたかったのに

何故俺はその立場になれないんだろう

何で…

俺は…

こんなに醜い感情しか抱けないんだろう

もう限界だ

俺以外の男と仲良くする姿を見続けるなんて

こんな苦痛な人生はない

もういいや

何もかも全部

もう全てどうでもいい

燃やしてしまおう

全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部

灰にして全て忘れてしまえばいい


カイとルナが帰ってきた

ルナは何故か花束を抱えている

満面の笑顔でルナは言う

「アーマーが大好きです。私を恋人にしてくれますか?」

何が起こったのかわからない

震えが止まらない

膝から崩れ落ちる

涙が止まらない

嬉しい

嬉しい

嬉しい!!!!

マナが初めて俺のことを大好きと言ってくれた

恋人にしてくれると言ってくれた

あぁ…俺は今日のこのルナの笑顔と

この花の香りを

死ぬまで忘れることはないだろう









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