第55話 幸せになりたくなかった
世界唯一の聖女様がこんなに性悪なわけがない
この女の子はよく似た他人だ
「こら!!カリン!!お客様になんてことするんだい!!」
秒でフラグ回収されていった
正真正銘カリン様だ
この人はカリン様のお父様だろうか
「お金を持っていない人間は客じゃないからセーフ!!」
「お店に来てくれる人は全員お客様だ!!」
「買わないくせに?」
「買わなくてもお客様だ!!」
「気持ちの悪い正義論ね。商売人向いてないわよ。」
目の前で親子喧嘩が勃発している
「あの…私は大丈夫なので…」
「いやいやいや!そういうわけにはいかない!うちのカリンが失礼なことをして本当に申し訳ございません!」
「いえいえ。気にしていませんので。」
「被害者面して歩いてる方が悪いわよ。」
「カリン!!やめなさい!!」
「では私はこれで…」
「お待ちください!無礼を働いたお詫びに一緒に夕食しませんか?」
「お気遣いなく…」
「もうお店締めますから!行きましょう!」
強引な人だなぁ…
私はカリン様とカリン様のお父様に連れて行かれて着いた場所はカリン様の家だった
夕食一緒にってお店じゃなくて家で食べることだったんだ…
「申し遅れました。私はリチャード・トランスと申します。そしてこの子が私の娘です。ほら。挨拶しなさい。」
「リチャード・カリンです。」
「ルナです。よろしくお願いします。」
「私は夕食の準備をするから座って待っていてくれ。」
そう言われて私は食卓の椅子に座る
私の目の前にカリン様が座った
「私。貴方のこと知ってる。」
「…え?」
「アース音楽団の団員でしょう?」
「は…はい!!そうです!!認知して頂いてるなんて光栄です!ライブに来てくれたんですか?」
「私がそんなとこに行くわけないじゃない。噂になってたわよ。音楽団のルナが奴隷にされそうになっていたってね。」
「あぁ…そうだったんですね。」
「昨日はイケメンの男2人に囲われて護衛されながら街を探索するなんて平民のくせにお姫様のように扱われてたじゃない。羨ましい。」
「あれは私が問題を起こさないか監視しているだけですけどね…」
「はぁ?気持ち悪い謙遜してんじゃねーよ。ブス。」
「…申し訳ございません。」
お詫びに夕食に招かれたはずなのにもっと鋭い言葉のナイフ刺してくるじゃん
「私はね!こんな平民の貧乏臭い生活が大嫌いなの!!将来は絶対に身分の高い人と結婚して裕福な暮らしをして、毎日豪華なドレス着て、豪華な食事をして、優雅に暮らすんだから!!」
「…。」
「何?こんな平民には無理と思ってるの?実は私はただの平民じゃないんだから。私に力が覚醒したら絶対に搾取され続ける生活を終わりにしてやるんだから。」
「力が覚醒…。」
「ふん。私はあんたと違って特別な人間なの。」
聖女の力が覚醒することをカリン様は知ってる
世界に1人だけしか使えない奇跡の力のはずなのに
カリン様に覚醒することは既に決まっているんだ
「私は…ただ自由に生きたいです。私の望みはそれだけです。」
「じゃあ奴隷商人に捕まってルナの人生おしまいね。」
「…そうですよね。」
わかってる
私が言ってることが無茶苦茶なことぐらい
1人で自由に生きることなんて現実的じゃない
だからライトは私に音楽団に入って旅をするように言ったんだ
12歳の女の子が1人で旅をするなんて
あっという間に悪い大人に捕まってしまうに決まっている
「自由になりたくて逃げ出したの?」
「はい…」
「アハハハハハハハハ!!!ばっかじゃないの!!!あーあ!あのままほっとけばよかったなぁ!!今頃捕まって奴隷生活してただろうに!!アハハハハハ!!!」
「私は…監禁されて豪華なドレスを着せられて豪華な食事を与えられて過ごしたことがあるんです。だから…」
「嫌だったの?」
「当たり前でしょう…?」
「嘘ね。」
私はカリン様を睨みつける
「よかったじゃない。いい人に監禁されて幸せな暮らしだったでしょう?」
「幸せになんてなりたくない。」
「アハハハ!!幸せだったと認めてるじゃない。」
「それは…!!」
「幸せだった。そうでしょう?」
「…監禁するなら酷い扱いすればいいのに。そしたら恨んで憎んで嫌いになれたのに。大事になんてされたくなかった。幸せになんてなりたくなかった。恨むことも憎むことも出来なくて。好きにも嫌いにもなれなかった。そんな自分が嫌いだった。」
「悲劇のヒロイン気取りキモイ。」
「フフッ。喜劇ならよかったのにね。」
「それで今は音楽団に大事にされすぎてて辛い。ぴえん。って逃げ出したんでしょう?」
「客観的に言われると私って本当にバカなことしてますね。」
「うん。くそ気持ち悪いメンヘラ女だわ。」
「あの…暴言のお詫びに私呼ばれたはずなんですけど…」
「愛の鞭だから。1回締めないとバカが暴走するから。愛よ。愛ゆえに。」
「愛があればなんでも許されると思ってませんか?」
「愛があれば殴ってもいいのよ。」
「誰がそんなこと言ったんですか…?」
「私。」
雑談している間に夕食が出来たようで
暖かいシチューをご馳走になった
「とても美味しかったです。ありがとうございました。」
「お口にあってよかった!!今日は泊まっていきなよ!夜遅くなって危ないし!」
「いえ。もう落ち着いたので帰ります。本当にありがとうございました。」
「えぇ〜。私もうルナちゃんは泊まるから心配しなくて大丈夫だよって宿に電話しちゃったよ〜。」
「えぇ…。」
トランス様謎の行動力すぎるよ
強引にお節介をやくのは聖女の家系らしいのかもしれないな
聖女様当人のカリン様は性悪だけど
「ほらほら!お泊まりするパジャマもあるよ!お風呂先に入って!」
「では…お言葉に甘えて…」
私はトランス様に言われるがままにお風呂を借りようとすると
ピンポーン
とベルが鳴った
「はーい。」
トランス様が扉を開けると意外な人物がそこに立っていた
「ルナ。帰るぞ。」
「…カイ?どうしてここに?」
「宿に電話があったから。ここにルナがいるって。」
「カイが迎えに来るとは思わなかったな。私のこと嫌いなくせに。」
「嫌いだよ。ジャッカルもリリーもナイルもホリーもアーマーもお前のことを心配してうじうじぐだくだ宿の雰囲気はお前のせいで最悪だよ。」
「ごめんね。」
「…別に。」
「帰るよ。来てくれてありがとう。」
私はトランス様とカリン様にお礼を言って家を出た
「少し1人になって落ち着いたからもう大丈夫だよ。」
「あのさ…俺ってそんなに頼りない?」
「え?そんなことないよ?」
「赤の他人に相談して元気になるなんてなんだかむかつく。」
「なにそれ。」
「俺はルナのこと嫌いだけど。ルナの音楽は好きだよ。」
「知ってるよ。」
「だから辞めんなよ。」
「プッ。アハハ!!カイが私のこと追い出すまではずっといるわよ!!」
「…ルナが恐ろしいことに巻き込まれたのに支えになれなかった。ごめん。」
「…ちょっと。何言ってるの?カイらしくない…。」
「ルナが傷ついてるのに助けてあげられなくてごめん。」
その言葉に私は泣き出す
「バカ…!!私がバカだっただけだから!!我儘言っただけだから!!」
「俺はなんて言ったらいいかわからないけど。俺、ルナと一緒に音楽やりたいよ。」
「バカね。1番嬉しい言葉だよ。迎えに来てくれてありがとう。カイ。」
私達は手を繋いで仲良く宿へ帰った




