第四十一話 恋バナ
「あーあ。アーマーは可哀想だよなぁ。こんな女に人生捧げちゃってさぁ。」
ちくちくといつも小言を言うこの人はアース音楽団ドラム担当のカイだ
「私もそう思いますよ。是非カイがアーマーの目を覚まさせてあげてください。」
「うーわ。可哀想。こんなにも好きな相手に簡単に捨てられるなんて。」
「こんな女に人生捧げる方が可哀想でしょ。」
「ハハッ!まぁそんなんだけどさぁ。ルナが付き合ってあげれば丸く収まるくね?」
「いつも言ってるじゃないですか。私は執着してくる男は嫌いだって。」
「一途ないい男じゃないか。」
「振られた後、家出して旅についてくる男はまともじゃないです。」
「お前らさ、濁して誤魔化してるけどアーマーは貴族なんだろう?子供のくせに大人よりも強いからな。騎士として教育されてたのか?」
貴族どころか王族だし、グリード家の正統後継者の王子様だよ
この世の全ての魔法を使えるバケモノじみた強さだよ
身バレ防止の為に旅に出てからは一回も魔法使ってないけどね
魔法がなくても体術だけで一般市民相手なら倒せるから
「その件については黙秘します。」
「ルナは平民だろ?アーマーの所で働いてたのか?使用人に恋をして駆け落ちでついてくるなんて一途な男じゃないか。」
「私も貴族だと思わないの?」
「え?平民だろ。ルナは。品位がねぇもん。高貴なオーラを感じない。硬いパンが好きだとか言って頬張ってるし。」
「アーマーだって硬いパン食べてるじゃん。」
「アーマーは人の食い物じゃねぇって顔して食べてるよ。アーマーは高貴なオーラを感じる。」
当たり前だ。王子様なんだから
「もしも本当にアーマーが身分の高い人で私が平民だったら恋仲になんてなれるわけないでしょう?身分が違いすぎるわよ。」
「だから身分を捨ててアーマーはルナを選んだんだろう?それなのにさ…はぁ…可哀想。」
「可哀想なのは勝手についてこられて文句いわれてる私の方だと思うんだけど。」
「束縛と執着の男が世界一嫌いな理由って何?」
「監禁されたトラウマがあるから。」
「ひぇ…。身分の低い可愛い幼女は狙われやすいからな…。なんかごめん嫌なこと話させて。」
「別に。哀れで可哀想なのは私の方だとわかってくれたならいいけど。」
「いや。それとこれとは別だけど。アーマーに報われて欲しいよ。俺は。」
「私も報われて欲しいわよ。なんで私は変な執着男に纏わりつかれる運命なの?」
「その監禁男とアーマーを一緒にするのは可哀想だよ。アーマーは監禁なんてしてないじゃないか。ルナが自由に旅していることを寧ろ応援して喜んでいるのに。」
「まぁ…それはそうだけど…。」
アーマーは私の行動を制限したりはしない
執着はするけれど
束縛はしない
彼なりに私のことを尊重してくれているのだろう
「ほら。アーマーはそいつとは違って一途なだけのめっちゃかっこいいイケメンの男だよ。拒む理由なんてないだろう?」
「でも今は音楽に人生捧げてるから。アーマーに構ってる暇なんてないもの。」
「いやいやいや。恋の経験がない音楽なんて人の心に響かねぇよ。音楽極めたいならまず人生経験だろ?そんなんじゃいつまでも子供の音しか鳴らせないぜ?」
「ラブソングなんて書いてないからいいんだよ。」
「ラブソング書けない音楽家なんて終わってるよ。そんなんで天下取れるわけねぇじゃん。」
「…。」
「ほら。音楽極めたいなら付き合っちまえよ。」
「やだ。」
「あーあ。音楽家としても中途半端だなぁ。ルナは。」
「ねぇ!!私のこと絶対嫌いだよね!!カイ!!」
「バレた?」
「バレバレだよ!!私に対して当たり強すぎでしょ!!」
「いやぁ。俺のギターの初弟子がさぁルナにいじめられて毎日泣いてるからもう可哀想で可哀想で。」
「話盛らないでくださいよ!私はアーマーをいじめたことなんてないですから!!それにアーマーが泣いてる所なんて一度も見たことないから!!」
「心の涙が大洪水なんだよ。」
「ただのサイの想像じゃん。」
「俺には見える。アーマーの涙が。」
「幻覚ですから。大丈夫です。」
「それにさ。束縛とか執着する男が大嫌いなくせに女癖悪い男も大嫌いなんだろう?束縛が嫌いなら男の浮気とか許す心の器のデカさぐらいあって欲しいよな。矛盾してね?どっちも嫌いなんてさ。」
「してないわよ!普通の!普通の男がいいの!!」
「作曲する上でさ。そんないい子ちゃんの正論振りかざすようなラブソング書くんだろうな。ルナは。しょうもねぇ。ロック魂はどこにいったんだよ。」
「ハァ〜???ラブソングなんて万人受けした方がいいだろうがよぉ!!一緒に過ごせて幸せ♡みたいな感じに書けばいいでしょう!?」
「しょうもねぇ!!上辺だけのうっすうすのラブソングしか書けねえんだろうな!!」
「うぅぅ…!!!」
「ガーキ!!!」
「うるさい!!ガキなんだから仕方ないじゃない!!」
「アーマーと付き合うだけで音楽の幅が広がるのになぁ。音楽に人生捧げてるなら割り切って付き合うぐらい出来るよなぁ!?」
「無理!!!私は自由に生きるのにアーマーに私の人生振り回されてたまるか!!」
「アーマーはもうルナに振り回されてるのになぁ。」
「私は悪くない!!!」
「アーマーも悪くないよ。だからもう少し優しくしてやれよ。可哀想だろうが。」
「ううぅ…。優しくして暴走されたら怖いもん…。」
「いいじゃねぇか。暴走させてやれよ。」
「私の味方っていないの?」
「いない。」
「辛い…。」
「俺さ。ルナのアーマーに対しての塩対応とか女遊びにうるさくて正論かざす所とか大嫌いだけど…それでもルナの作る曲だけは大好きだよ。」
「え…ほ、本当に?」
「マジでかっけえよ。曲だけは。」
「い…いやぁ!!!そんな…照れる…。えへへへへへ。」
「うん。曲以外はマジで気持ち悪りぃな。お前。」
「いいもん。曲がいいんだから。私の曲が好きなら私のことが好きだと言っているようなものだもん。」
「天才作曲家ってやっぱり頭おかしいやつ多いんだな…。」
「偏見が過ぎるよ!!!私はまともだもん!!」
「いや。狂ってるよ。ルナは。」
「普通の可愛い女の子だよ!!」
「こんな歳で一人で旅に出ようとするなんて狂ってないと無理だよ。」
「まぁ…。」
「狂ってるなんて褒め言葉だよ。俺達音楽家からしたらね。どこか感覚がおかしくないと人を惹きつけることは難しいからな。」
「ふーん。じゃあ私カリスマ性低いかもね。」
「寧ろカリスマ性だけはあるけどな…。」
「私は普通だよ?主人公は絶対アーマーだから。」
「アーマーが主人公ならルナはラスボスだろうね。」
「ヒロインじゃないんだ…。」
「尖りすぎだろこんなヒロイン。」
「どこが?普通じゃん。普通。」
「自覚ないのがこわいよ。」




