第四話 町探検
「始まるよっ始まるよっ始まるよったら始まるよ!私達の時代が始まるよー!」
意味なんてないがハイテンションのまま歌いながら上機嫌で歩く。
「「始まるよっ始まるよっ始まるよったら始まるよ!私達の時代が始まるよー!」」
ずっと歌ってたら一緒に歌ってくれるようになった。ケラケラと笑いながら二人で笑って歌った。まだ何もしてないのに自由が手に入ったという事実が私達をハイテンションにさせていた。
「ねぇ!どこに行きたい?」
当てもなく自由に適当に歩いてただけだから聞いてみた。私は孤児院から抜け出してまた外に出れるけど、アーマーは本当に自由に過ごせるのは今日だけかもしれない。だからアーサーの意見に従う方がいいと思った。
「森で冒険する?街でブラブラする?このままどこに行くかもわからずに歩く?」
「俺さ!街で遊んでみたかったんだ!」
「いいねー!街でたくさん遊ぼう!!」
おそらく一回も街で遊んだことがないんだろう。街への憧れが目の輝きからわかった。アーサーは走り出す。
「街へ早く行こうよ!時間がもったいない!」
「無理だよ〜私そんなに走れない〜」
ひょいとアーサーは私を抱き上げ、お姫様抱っこをした。
「ひゃあ!!何すんの!!」
「遅いから持っていこうと思って。」
「え!無理だよ!私もう六歳だもん。」
「めっちゃ軽いから大丈夫。」
そういうとアーマーは私をお姫様抱っこして走りだした。
「ひゃーーーーーーーーー」
「アハハハハハハハハハハハ!!」
めっちゃこわい!!バカみたいなスピードで走ってる。手を離したら本当に死ぬ!!アーマーは私が大騒ぎしているのをみてめちゃくちゃ笑ってた。
「せめて!せめておんぶで!!」
「わかったよ」
おんぶに変えて貰ったけどめっちゃこわい。おんぶになってもこわいこわいこわい!と騒いでしまった。アーマーはずっと笑ってた。
「そういやお前なんて名前なの?」
「ルナです!」
「ルナ今日俺はお前を世界一幸せな女にしてやるよ。」
「じゃあ降ろして一緒に歩いてくれるかなぁ?」
「無理!」
「なんで!?」
「俺におんぶされる女は世界一幸せなんだよ!」
「めっちゃこわい思いしてるのに!?じゃあ歩いてよ!!」
「時間もったいから無理!」
「アーマーは女を幸せにする才能ないと思う!!」
全速力で連れて行かれたのでめちゃくちゃ早く街に着いた。朝早くから街は賑わっていた。街に着いたけどお金がなかったから、換金する場所にアーマーを連れて行き、高そうな上着を売って今日の資金にした。さすが王族の服。一日二人で遊ぶには充分なお金が貰えた。疲れたから休憩しようとカフェに入ることにした。アーマーはカフェに入ることが初めてだったようだ。私も一回目の人生で一回だけ入ったことがあるだけだけど。お金を気にせず注文出来るのは初めてだった。人のお金で贅沢するなんて良心が少し痛いが、遠慮するとアーマーも楽しめ無くなるかもしれない。今日だけは何も考えず全力で楽しもう。
「私はオレンジジュースとパンケーキとマカロンをお願いします!」
マカロンは食べたことない。食べてみたくて作ろうとしたこともあったけど失敗して食べれなかった。美味しそうで食べてみたかったからめっちゃワクワクする!!
「俺は珈琲とチーズケーキをお願いします。」
かしこまりました。と言って店員さんが注文を承り、キッチンへと伝えに行く。
「アーマー珈琲なんて飲めるのー?めっちゃ苦いんだよ?知らないの?」
「俺はルナのようなお子様じゃないからな。」
残念。私はお子様ではない。十六歳は立派なレディだからね。もちろん珈琲だって飲める。飲めるだけであんまり好きじゃないけど。
「私、実はお子様じゃないんだよね。アーマーが飲めなかったら私が珈琲飲んであげるね。」
「マカロンが楽しみすぎてウキウキしてるやつはガキだよ。」
「なんでわかったの!?」
「顔に書いてあるよ。私マカロン食べる初めてだから楽しみだなーって。」
「アーマーってエスパーなの!?」
「ルナがわかりやすぎるんだよ。」
「でも、私もわかるよ!アーマーカフェに来たこと初めてでしょ?」
「なんでわかった!?」
「顔に書いてあるからだよーん!」
そんな雑談をしている間に注文した品がテーブルに並ぶ。これがマカロン!色々な色があるけど何味なのか全然わからない!!実際に口にしようとすると緊張する…とりあえずピンク色のマカロンを手にして食べてみる。
「凄い!!何これ!!口の中で溶けて…なんかわかんないけどめっちゃ美味しいーーーー!!」
感動!!こんなお菓子が世の中にあったなんて!!
食べるのがもったいぐらいだよ。
「緑色のやつもなんかわかんないけど美味しい!!」
「ハハッ!!ルナが幸せそうでよかったよ。」
「えー!!私だけじゃなくてアーマーだってケーキ食べられて幸せでしょ?」
「俺の家はシェフが毎日作ってくれるから。」
「じゃあカフェはつまらなかった?」
「そんなことない。すげぇ楽しいよ。今人生で一番幸せな気分だ。」
「えへへ!私もー!!」
よかった。アーマーも楽しんでくれてるみたい。でもカフェは私が疲れたから入ろうって言っちゃったからな。アーマーのこと優先して行く場所決めようと思ってたのに…
「ねぇ次はどこに行きたい?」
「服屋とかどうだ?」
「いいね!」
「なんでも好きな服買ってやるよ。」
「え?私に?」
「うん。」
「いらないよ〜。」
「はぁ?」
「今ある服で充分だもん。」
「ドレス着てみたいとかねぇのかよ?」
「私そういうの興味ないもん。」
ドレスって可愛いけど動きづらいし本当に苦手。
「じゃあアクセサリーとか宝石とかなんか欲しいもんねぇのか?」
「え?何?今日のお礼にプレゼントしようとしてるとか?」
「いやそれもあるけど…ルナが喜ぶかなと思って…」
「いやいやいや!いらないよ!それに元々このお金アーサーのやつだし、それでこんなにマカロンご馳走になっただけで罰当たりなぐらい充分だよー!」
人の服剥いで売らせた金で楽しく食事してる時点でもう既に人として終わってる。
「ルナを今日一番幸せにしてやりてぇんだよ。」
今日しか自由がないかもしれないのに。さすが将来正統派な紳士の王子様になる方は凄い。
「ありがとう!でもアーマーの好きなこともしようよ!」
「……よくわからない。」
そりゃそうか。今まで遊んだこともないんだから何が好きか嫌いかもわからないのか。
「ルナは服とかプレゼントされて嬉しくないのか?俺はルナが喜んでくれるならそれでいい。」
「うーん…じゃあ私がアーマーに服を選んであげる!」
「え?」
「全身コーディネート!楽しそうだから!!」
「ルナがやりたいなら…」
渋々了承してくれた。なんだか私だけ我儘放題な気がするのだが…でもアーマーが楽しんでくれるように全力で全身コーディネートするぞ!
カフェで最高に楽しい時間を過ごした。ちなみに珈琲はアーサーが普通に飲んでいた。私は十六歳でも美味しく飲むことは難しかったのに…普通に美味しそうに飲んでいた。それだけなのに負けた気分で、アーマーの方が大人のような感じがした。
その後はブティックでアーマーの服を選んだ。試着でたくさんの服を着せた。メガネインテリ系や、ワイルド系、ショタ系、王子様系、顔がいいから全部似合っていた。
「本当に私の好みで決めていいの?」
「あぁ。」
「じゃあめっちゃ可愛い男の子に仕上げて下さい!!」
「!?」
「まだまだ可愛い子供だからね!」
「嫌がらせか?」
「そんなわけないじゃん。私かっこいい男より可愛い男の子が大好きなの。」
「なんで?」
「人の趣味なんて理由があるわけないじゃん。」
「ふーん…じゃあ今の俺はお前の好み?」
「完璧だね!」
満面の笑みで答える。本当は落ち着いた大人な男の人が好きだけど、いつも大人びたことを押し付けられてるアーマーには可愛らしい子供になって欲しかった。
「上目遣いでおねだりとかしてみてよ!」
「ルナ…俺もルナをコーディネートしたい…ダメ?」
本当に上目遣いでおねだりされた。顔がいいって凄い。こんなおねだりされて断れる人間はいない。キラキラだもん。アーマーのおそらく厳格な両親でもこんなおねだりされたら絶対イチコロだと思う!
「いや〜。そんなおねだりされたらしょーがないなぁ〜。」
顔がニヤニヤしてしまう。アーマーの可愛い一面を発掘した私は天才だと思う。アーマーに言われるがまま服を着る。清楚なお姫様ような水色のドレスだった。アーサーは聖女と恋仲だったから清楚系がやっぱり好みなのか。
「綺麗だよ。ルナ。」
「ありがとう〜。」
「…このまま俺のお姫様になってよ。」
「やだ。」
「なんで!?絶対幸せにするよ!?」
「別に幸せになんてなりたくないの〜」
「はあ?なに意味わかんねぇこと言ってんだよ!」
「だってこんなドレスじゃ街でまた遊べないよ?」
「………」
「私は自由に動ける服が好きなの!」
「そうだな。今日は世界一自由な日だからな。」
そう言って今度は水色のワンピースを持ってきたので着替えた。このワンピースもいかにもお嬢様みたいな服だな…。大人しくて可愛い女の子が好きなんだろうなぁ。
「どうかな?似合う?」
「世界一可愛いよ。」
九歳でこの紳士力。恐ろしい。流石本物の王子様。
「えへへ。じゃあ私もおねだりしちゃおうかな〜。」
「なんなりと俺のお姫様。」
そう言って跪き私の手にキスをする。
「ひゃあ!?」
思わず声が出てしまった。キラキラが眩しい!心臓が痛いぐらいドキドキする。
「もう〜恥ずかしいからやめてよ…。」
顔が真っ赤になってしまった。こんなことされて正気でいられる女の子はいないよ。
「フフフッ初めて男としてみてくれたね。嬉しいよ。」
「別にそんなんじゃないから!こんなことされたら誰だって照れるよ〜。」
「お爺さんでも?」
「当たり前でしょ。」
アーマーは少し不満そうな顔をした。いけないいけない今日はアーマーを自由にして楽しませる日なのに。
「ねぇ!公園で人形劇があるみたいだから見に行こうよ!」
「へぇ。見たことないから楽しみだな。」
それから私達は今着ている服の会計を済ませて脱いだ服は紙袋に入れて貰い、公園へ人形劇を見に行った。公園はお祭りを丁度やっておりワゴンカーでお店がたくさん来ていた。お昼ご飯をまだ食べていなかったので、私はクレープを買って、アーマーはパンを買った。食べながら私達はもうすぐ始まる人形劇を待っていた。人形劇はかなり本格的な劇団がやっているようで、見応えがあって楽しかった。
ストーリーは悲恋の物語だった。王子様と町娘が身分違いの恋をして駆け落ちをする話。申し訳ないけれどストーリーは全く感情移入できなかった。君と一緒なら地獄でも構わないとか言ってて、そんなわけないだろうと思った。そんな恋やめて普通に平凡な暮らしをした方がいいに決まってる。劇が終わってぱちぱちと大きな拍手が鳴り止まず、大量のお金が缶に投げられていく。私達も缶にお金を入れて公園を出た。
「……凄いいい話だったな…」
私とは正反対でアーマーは今の話に感銘を受けて価値観も変わったかのような顔をしていた。
「いい劇だったね!」
「愛する人と一緒なら地獄でも楽しいか…。」
アーマーは将来、婚約者のサテライト様じゃなくて、聖女のカリン様と結婚するんだからやっぱり決められた結婚より恋愛結婚に憧れがあるんだろうな。サテライト様もめちゃくちゃ美人だったのに。
「私は一人でもいいから普通の暮らしがいいな〜。」
「は?」
やばっ。感動してる人に言う言葉じゃなかったよね。
「アーマーは意外と情熱的だよね!燃えるような恋に憧れるんだ〜。」
「…ルナは憧れないの?」
「あー…私は独り身でいいかな……」
「なんで?」
「うーん…自由が好きだから?」
「…へぇ。」
めちゃくちゃ気まずい雰囲気にしてしまった。恋愛物語の後に独身主義を語るなんてぶち壊しにも程がある。
「まぁ…私は恋をしたことないから気持ちがわからないのかも…。」
「そうか。まだまだお子様だからな。」
「まだまだ六歳だからね!」
そう言って笑い合った。人形劇も終わり夕方になろうとしていた。
「そろそろ孤児院に戻らないと。」
「は?今日一日自由にするって言ったじゃん!明日になるまで遊ぶぞ!」
「いやいやそんなことしたら大問題になるよ。私殺されちゃうかも。シスターや貴方の両親に気付かれる前に帰らないと。」
「絶対やだ!帰りたくねぇ!」
「うーん…ごめんね。私もお仕置きされたくないからさ…。」
そう言うとアーサマーは大粒の涙でボロボロと泣き始めてしまった。
「いやだ…今日がずっと続けばいいのに…あんな場所戻りたくねぇよ…」
私は思わず抱きしめる。
「ごめんね。孤児院に遊びに来てくれたらまた遊べるから。」
アーマーはもう孤児院には来れないかもしれない…でも今はそう言うことしかできなかった。
「行こう。」
そう言って泣いているアーマーの手を引いて孤児院へと帰った。幸いまだシスターがまだ来てなくて、外へ遊びに行ったことはバレてない。急いで元の服に着替えてアーマーの両親を待った。孤児院に着いた時には涙は止まっていたが、元気がなく塞ぎ込んでしまっていた。両親が迎えに来た時、アーマーは別れの言葉もなく大人しく帰っていった。




