第三十八話 自由と束縛
ライブは大盛況で無事に終わり
この街にもあと一カ月程滞在をして
また別の街へと移動する
アース音楽団はこのサイクルを繰り返して活動をしている
あと三回ライブをしてまた移動する予定だ
今回のライブ後、アーマーは作曲活動を辞めた
そのかわり私に異常な程くっついて行動をしてくるようになった
今日はリリーと街へ遊びに行く予定だったが
私とリリーが街へ出掛けることを知ったアーマーがついて来ると言い出して
それなら二人の邪魔は出来ないからとリリーは私達を置いてジャッカルを追いかけて行ってしまった
仕方がないのでアーマーと一緒に街へ遊びに来ているのだが…
「鬱陶しい…離れて…」
アーマーは私の後ろから常にバックハグの状態でくっついて歩いている
めちゃくちゃ歩きにくいし
顎が肩に刺さって痛いし
寄りかかってくるから重たい
「俺達やっと二人で旅に出れたのにさ。全然イチャイチャしてなかったなって。」
「する必要ないから。離れて。」
「本当はこうやって毎日デートするみたいに旅をする予定だったのにさ。邪魔者だらけで半年も時間を無駄にしちゃったよ。」
「そんな予定ないわよ!!重たい!!肩にのらないでよ!!」
「困ったな…じゃあ」
「ひゃあ!!」
ひょいと私の体を持ち上げてお姫様抱っこをされた
「これでいいよね。」
「いいわけないでしょう!?早く降ろしてよ!!」
私はジタバタと暴れる
「暴れたら危ないよ?」
「アーマーの存在の方が危ないよ!!」
アーマーは私を降ろしてくれた
「じゃあ手を繋いで歩こうよ。」
「やだ。」
アーマーはまた私を後ろから抱きしめてきた
「ねぇ!!だからやめてって言ってるじゃん!!」
「手を繋ぐのがダメならこうするしかないからね。」
「もうわかったわよ!!じゃあ手を繋ぐからやめて!!」
アーマーは抱きつくのをやめて私と手を繋いで歩き出した
「恋人に見えるかなぁ?」
「仲良い兄弟に見えると思いますけど。」
私達は手を繋いで街を歩く
こうしていると初めてアーマーに会った時のことを思い出す
あの時はこんなことになるなんて予想もしなかったな
まさか二人とも本当に自由になってこうしてまた街を歩けるようになるなんてね
人生なにがあるかわからないものね
アーマーの笑顔はあの日と変わらず輝いている
グリード家で過ごす日々よりも
やはり自由に生きる方がアーマーも好きなんだろう
私は正真正銘の平民でこの先何も心配なく自由に過ごせるが
アーマーは違う
アーマーはグリード家唯一の正統継承者の王子だ
こんな場所で歩き回っていいわけない
いつかは捕まって
あの屋敷に戻されるだろう
それに…二年後には戦争が始まる
戦争はアーマーの活躍で勝利した
それなのに…今回はアーマーがこんなところで遊び回っている
アーマーが戦争に参加しないなら
グリード王国は勝てるだろうか…?
アーマーがグリード王国を去ったことは
おそらくこれからの未来を大きく変えることになってしまっている
しかし、平民の魔力なんて持ってない私が何か出来るわけもなく
アーマーが早くグリード家に見つかって捕まればいいのにと願うばかりだ
…いや
本当はそんなこと思ってない
私はアーマーに自由になってほしいって思ってる
鬱陶しいし
めんどくさいけど
屋敷に閉じ込められる不自由さを嫌っているアーマーを
このまま捕まらずにいられたらいいのにと思ってしまっている
アーマーがグリード王国に戻って
二年後には戦争に参加させられて
過酷な人生を歩むことになるだろうし
そんなことさせたくない
自由を愛して
自由に生きることを望んでいるアーマーは
私と似ているから
このまま捕まらずに一緒に過ごしたいと
そう願ってしまう
「ねぇ。なんでもう作曲しないの?」
「ルナに勝てる気がしないから。辞めた。」
「作曲なんて勝ち負けじゃないでしょう?やりたいならやればいいのに。」
「俺はルナに負ける要素が一つあるだけで嫌だったから作曲していただけだよ。でも頑張っても無駄みたいだから辞めた。よくよく考えたら一つ負けても、三億ぐらい俺は勝っている要素があるからね。一つぐらいならまぁいいかなって。」
「三億負けても作曲は勝ててよかったなぁ〜。作曲ができてよかったぁ〜。一生アーマーは敵わない才能があってよかったぁ〜。」
「は?別に本気出したら俺が勝つから。」
「昨日のライブで心折れてるようじゃ私には一生勝てないよ。」
「ふん。別にどうでもいいよ。勝ち負けなんて。俺はルナとラブラブになる為に旅に出たんだから。本当は音楽のことなんてどうでもいいんだ。」
「十二歳の子供になにするつもり?」
「今はまだキスだけにしようね。」
「むり。」
「あれ?アース音楽団のルナ?」
街の男の人が話しかけてきた
三人組で二十代ぐらいだ
「はい。ルナです。」
「わぁ!!昨日のライブ凄かったよ!!俺めっちゃファンになっちゃった!!よかったら握手してください!!」
「いいですよ…痛っ」
私が握手をしようと手を出すとアーマーに手を叩かれる
「すみません。今はプライベートなので握手は禁止されてるんです。」
アーマーが握手を拒否している
握手禁止なんて聞いたことないけど
「そ…そんなんですね…残念です。あの!!次のライブも絶対見に行きます!!」
「ありがとうございます〜。次も頑張りますね。」
「は…はい!!応援してます!!」
「おい!ダニエル!この娘知り合いなのか?」
私のファンと言う男はダニエルというらしい
ダイエルの連れの男が私のことを尋ねる
「アース音楽団で歌ってる子だよ。昨日のライブ凄かったんだから!!」
「へぇ。こんなちっちゃい子供がね…。よく見ると顔めっちゃ可愛いね。君。」
「ありがとうございます…。」
「何色のパンツ履いてるの?」
「え…」
私がセクハラ発言に一瞬戸惑った瞬間
アーマーが目の前のセクハラ男の首を締め出した
「グハッ」
目の前のセクハラ男は首を絞められて体も宙ぶらりん状態になっている
「ちょっ…ちょっと!!やめて!!!アーマー!!」
私は慌ててアーマーを止める
「何故?こんなやつ生きてる価値ないよ。」
「ジョークだから!!離してあげて!!」
「冗談でも言っていいことと悪いことがあるよ。」
「離してくれないと嫌いになるから!!」
私がそう叫ぶとパッとアーマーは手を離して首を絞めるのをやめて
セクハラ男は床に転がり落ちていく
「すみませんでした!!!」
私はアーマーの手を握りダッシュで逃げた
一分ほど全力で走って足を止める
息が上がってしんどい
アーマーは全く息も乱れずに普通にしていた
「そんなすぐに人を殺そうとしたらダメだよ…」
「大丈夫だよ。バレないように海に沈めるからさ。」
「全然大丈夫じゃない…。」
やっぱり早くグリード王国に返した方がいいかもこのバカ王子




