第三十五話 凡人の努力
「ルナルナはいいよね。アーマーに愛されちゃっててさ。二人で愛の逃避行なんかしちゃってさ。」
「リリー誰にそんな嘘情報聞いたんですか。私は一人で旅立つはずだったのにアーマーが勝手についてきただけです。あとその変な呼び方やめてください。」
「ルナルナルナルナが羨ましいよ…。」
「何でルナが増えていくんですか!!あだ名は省略して呼びやすいようにするものでしょう!?」
「否定される度に長くなります。」
「最悪なシステムですね。」
「そんなことはどうでもいいのよ!!私はジャッカルに連続振られ記録遂に1000回を突破したのよ!!」
「それは残念でしたね。リリーを1000回振るなんて碌な男じゃないですよ。この記念すべき日にきっぱり諦めることをオススメします。」
「やだ!!絶対ジャッカルじゃないとやだ!!!」
「奴隷として売り飛ばされそうになった所を拾ってくれて惚れたんでしたっけ?」
「そうよ!!私の王子様なの…」
「確かにその状況で助けられたなら惚れる気持ちはわからなくもないですが…」
「いつまでも子供扱いするんだもの!私だってもう18歳よ?」
「ジャッカルって何歳なの?」
「24歳だよ。」
「意外と若い。」
「何歳だと思ってたのよ。」
「タバコも吸うし、髭も生やしてるから老けて見えるのよ。意図的に老けて見せてるのかなあれ。」
「かっこいいわよね…」
「意地悪ばかり言うので私は嫌いです。」
「ルナルナのことジャッカル気に入ってるからちょっとジェラシー感じちゃう。」
「金になりそうだから態度変わっただけですよ。あの人。」
「私のことも金の道具だと思われてるんだ…」
「いや…あの…そこまで酷いことは思ってないんじゃないですかね?」
「私がいつも何で振られてるか知ってる?」
「知らないですけど…」
「“商品に手を出すことは出来ないから”だってさ。」
「恋人してではなく仲間として大事にされてるじゃないですか。よかったですね。」
「そんなもの求めてないんだよ!!!私は!!!手を出して欲しいんだよ!!!」
「意外とジャッカルが誠実で驚きだわ。宿に女呼びまくって遊んでばかりだからさ。リリー大事にされてると思うけどなぁ。」
「大事になんてされたくない!!私だってジャッカルに手出されたい!!!」
「まぁでも碌でもない男だよ。女遊びしまくってるやつに善人はいない。諦めてもっといい人彼氏にした方がいいと思いますけどね。」
「ジャッカルは優しくてかっこよくていい人だもん!!」
「私の知ってるジャッカルとは別人ですね。」
「ふんだ!!ルナルナはアーマーに溺愛されちゃってるから余裕があるんだ!!いいよね!!ラブラブカップルはさ!!!」
「私とアーマーはそんな関係ではないです。」
「私はアーマーの気持ちすごくわかるよ…。こんなに好きなのに相手にされなくて…アーマーが可哀想だから今すぐ付き合え!!」
「絶対嫌だよあんな執着男。」
私の作曲活動も一段落してリリーとたわいもない雑談をする機会が増えた
この街でやった私のアース音楽団初ステージは思いの外好評で私はこの街では前座を全て担当することになった
二回目からは後ろでバンドも合わせてくれるようになった
自分の曲を演奏してくれるというのは
初めて体験したけれど
とても感慨深く嬉しい気持ちになるものなんだな
それでも自分の曲は恥ずかしいから出来れば次の街に移動したらライトの曲を歌わせて欲しい
ステージが変わった後にジャッカルには作曲を続けるならステージに上がらせてやると言われたので
三曲目も作ることになったのだが
もうステージには立てているし
モチベーションも高くないので
超絶ゆっくり作曲活動も続けている
あの後アーマーはドラムのサイにギターを教わっている
素直に私に頼めばいいのに
アーマーのギターは恐ろしいほど早く上達していった
サイに「もうルナよりアーマーの方が上手いね笑」と言われたときは流石に私もムカついた
一年間死ぬほど練習したのに
一週間程であっけなく抜かされてしまった
これが主人公属性なのか
チートすぎるだろう
アーマーはギターがある程度弾けるようになってから作曲もやるようになった
私とは違い1日、2日でアーマーは曲を完成させる
作曲した曲はジャッカルに毎回聴かせているようだが
イエスと言われたことはないようだ
今度はアーマーが以前の私のように孤立して作曲に没頭するようになっていた
一度だけアーマーがジャッカルに作曲を聞かせているところを同席したことがあった
あまりにもアーマーが可哀想で見てられなかった
「没。」
「…。」
「なんだこの流行りのフレーズを入れたらいいだろう?みたいなくそみたいな曲は。時代に媚びるような曲書くな。」
「それで金になるならいいだろう?」
「ならねぇよ。こんなお粗末な曲。没だ。没。」
「それはジャッカルの主観だろう?この曲の方が観客にはウケるんじゃないのか?」
「そう思うならお前一人でこの曲をステージでやれよ。」
「…。」
「ほら。そんな度胸ないだろう?お前にだってわかってるんだ。この曲が陳腐だってね。」
「陳腐な曲の方が客を騙せるだろう?」
「せいぜい騙せるのは一回だけだよ。もう一回聴きたいと思える魅力がない。」
「…。」
「悔しそうな顔で震えて可哀想に。もう諦めたら?お前はルナにもライトにも敵わないよ。演奏が上手いだけの凡人はあいつらの天性の才能にはどう足掻いても届かない。せいぜい盛り上がるための駒でしかないのさ。俺達はね。」
「この世に俺が出来ないことなんてないんだよ。」
「素晴らしい自信家だね。じゃあ苦しみながら一生もがいていくがいいよ。凡人の努力だけでどこまでやれるのか楽しみだ。」




