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第三十三話 天才

「アーマー!!!」

私はアーマーに勢い余ってぶつかって抱きつく

激しく押したはずだけどびくともしなかった

さすがは王国で鍛えられただけはある

「ルナ?どうしたの?」

「ジャッカルが私も演奏していいって!!」

「凄いじゃないか。おめでとう。ルナ。」

「私がもう一曲作曲したらって条件つきだけど…今すぐ書き上げてやるんだから!!」

私はギターと紙とペンを持ちいざ作曲をやろうと意気込む

「ルナ?どうしたの?作曲しないの?」

「したいよ?今すぐサラサラと書いちゃいたいけど…」

「何でやらないの?」

「何もわからないからだよ!!!」

忘れていた

あの一曲を作るのに私は半年もかかったことを

二曲目だからってそんなすぐに出来るわけなかった

あの時は二度と会えなくなるかもしれないライトの為に

下手くそでもいいから残したいという一心でなんとか作ったが

今回はステージにあがるというモチベーションこそはあるものの

自分の為だけに作る曲は初めてだし

何から始めていいのかさえわからない

私は机と一時間睨めっこをして挫折した

「私って何も出来ない…」

私にはそう呟くことしかできなかった


その後、キース街で一ヶ月滞在をしてアース音楽団は何回か演奏をした

私は毎回雑用係をさせられていた

次の街に移動をしてまた演奏をしてを繰り返し

三ヶ月が過ぎた

アーマーは楽団員のみんなと演奏をするので

自然と会話も増えて仲良くなっていたのに対して

私は一人で作曲作業をばかりをしていたので

完全に孤立していた

リリーとアーマーはよく話しかけてくれたけれど

心労が溜まっているので

「ああ…うん。」

「そうなんだ…。」

ぐらいの相槌しかできず

上手く会話することができなかった

それでもステージに立ちたいというモチベーションだけを頼りに苦しみながらも三ヶ月で曲を完成させた

私はアーマーと一緒にジャッカルの部屋へ尋ねる

コンコンとノックをしてジャッカルの部屋に入る

「出来ました。」

私は三ヶ月

上手く出来ない自分のもどかしさに

机も台パンしたし

急にああああああああーーーって奇声をあげるし

うろうろしてぶつぶつ呟くし

他にも上げたらキリがない程奇行ばかりだった

しかしそんな日々ともおさらば

三ヶ月で作り上げた私の魂の作曲だ

適当な曲を作ったらダメだと言われたから

私なりに真剣に取り組んで作った

これでジャッカルにこれのどこが本気なんだ?と言われたら

ここで大暴れする自信がある

それほど本気で作った


「やっと出来たか。時間かけすぎだろ。」

「作るからには本気でやりましたから。」

「それはそれは。楽しみだ。」

不敵な笑みでジャッカルは笑う

その微笑みに私は笑顔で返す

すぅと息を吸って

はあああああああと大きく息を吐く

ギターをセットして

私は演奏する

「では。聴いてください。」

イントロはギターが下手だと言われないように必死に練習してきた

そして歌い出す

歌詞は私の今の気持ちを込めて書いた

本当にこれでいいのか

アーマーと一緒に旅をしていて

一国の王子を連れ回して

一度グリード王国に戻った方がよかったんじゃないのか

…あと二年後には戦争が始まるのに

戦争はアーマーの大活躍があってこそ勝利したのに

もしもアーマーがいないまま戦争が,始まるとどうなるのだろうか…

歴史を大きく変えてしまっているのではないか

私のことはほっといて

どうかアーマーの幸せの為に生きて欲しい

そう願いを込めて言葉を揶揄して歌詞を作った


演奏が終わりジャッカルを見つめる

「うん。次のステージルナがこの曲をやれ。」

「…え?嘘でしょう?」

「いい曲だから。自信持ってやれ。」

「じょっ…冗談ですよね?」

「ルナは天才だよ。」

「いやいやいや!!私の曲よりもライトが作った曲の方が…」

「ライトの曲は完成されている。本当にいい曲だ。」

「それならなんで私の曲を…」

「天下取りたいんだろ?」

「それは…」

「明日一人で前座をこの曲でやれ。」

「一人で!?なんでなんですか!?」

「今から合わせられないだろう?」

「みんなプロだから大丈夫ですよ!!」

「ダメだ。変に合わせたら曲の良さを損なう可能性がある。ギターと歌だけで完成度が高いから大丈夫だ。」

「アーマーだって一人でステージやったことないのに…。私一人でなんて…。」

「アーマーどころか団員全員一人でステージに立たせたことなんてないよ。」

「何で私だけ!!」

私はジャッカルに肩を掴まれる

「ステージに立ちたかったんだろう?ぶちかましてこいよ。」

掴まれた肩はすぐにアーマーが払ってくれた


次の日になり、私は前座で一人でステージに立つ

目の前には大勢の観客が沸いている

正気じゃいられない

緊張でこのまま倒れるかと思った

手も足も何もかもが震える

私の曲…ジャッカルへは褒めてくれたけれど

やっぱり不安しかない

何もかも忘れてしまいたい

ふと目に入ったのは水分補給の為に用意されている水が入ったコップだった

私はそのコップを手に取り

頭からコップの水を被る

私の奇行に観客は鎮まりかえる

騒がしくもなくなったし

頭も冷えたからスッキリした

せっかく手にしたステージなんだから

私一人しかいないんだから

好き勝手やってやろう

だって私は


誰よりも自由なんだから



私は演奏をして歌う







「アーマー。」

「ジャッカルどうしたの?」

「この音楽業界で一番強くて偉いやつって誰だと思う?」

「お金を出す金持ちだろう?」

「違いねぇけどさ。演者の方でだよ。」

「演者で?やっぱりボーカルじゃないの?花形だし。」

「違うんだよ。歌が上手いやつ。上手く弾けるやつ。そんなやつは微々たる差でしかない。そんなやつは世の中にゴロゴロ変えがいる。」

「じゃあ誰が一番強くて偉いの?」

「いい曲を作るやつさ。」

「…なるほどね。」

「ルナはギターは下手くそだし、歌も少し上手い程度だ。しいていうならあの顔面の可愛さが武器だろうと思っていた。顔がよけりゃ客は集まるからな。」

「何がいいたい?」

「アーマーなんかよりルナの方がよっぽど価値があるって話さ。歌もギターも下手くそだけれどルナの作曲家としての才能は天才だ。いやぁいい拾い物をしたなぁ俺。曲を作り続ける限りルナは音楽で生きていくことができるだろうね。」

「…。」

「ヴァイオリンが上手いだけのアーマー君とは違ってね。」









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