第三十話 アース
グリード王国の魔法師達がアーマーに敵わなかったんだ
何の力もない平民になった私が足掻いたところで
アーマーから逃れる術はないだろう
「私の邪魔したらぶっ飛ばすからね。」
「へぇ。マナにぶっ飛ばされてみたいかも。」
こいつ…私が無力だからって好き勝手言いやがって
むかつく
周りを見ると人がぞろぞろとどこかに移動している
「あの。何か始まるんですか?」
「世界中を旅している音楽団アースの演奏が始まるからだよ。」
「え!?本当ですか!?」
私はアーマーの手を取り引っ張って走る
「早く早く!!いい場所なくなっちゃうよ!!」
「…懐かしいね。こうやって手を繋いで走るの。」
「そんなこと言ってる暇ないから!走って!」
「わかってるよ。」
私達は音楽団アースの演奏が開催されるステージにやってきた
こんなにタイミングよく音楽団に会えるなんて
おそろく音楽団の近くに転送されるようにしてくれていたのだろう
いよいよステージに音楽団の人達が上がる
ボーカルのお姉さんは十八歳ぐらいだろうか
めちゃくちゃ美人だ
後ろで演奏している人達は全員男の人達だった
ギターとドラムだけでなく金管楽器を持っている人もいる
トランペットとサックスだったけ?
演奏が始まり美人なお姉さんは歌い出す
圧倒的な歌唱力
演奏もかっこいいけれど
お姉さんの歌声に魅了される
かっこいい!
かっこいい!!
かっこいい!!!
私はすっかりこの音楽団アースの虜になってしまった
観客も大盛りの中、大盛況で演奏は終わった
「行くわよ!アーマー!!」
「どこに?」
「もちろんアース音楽団に会いによ!!」
「厄介なファンとは面会させて貰えないと思うけど。」
「バカ!違うわよ!入れてもらうように交渉するのよ!」
「はぁ?俺と二人だけでいいだろう?」
「そんなもん一人よりも危険よ!」
「…。」
私達は音楽団アースに突撃する
「あの!!貴方達の音楽に感動しました!!私をどうかこの音楽団に入れてください!!」
目を丸くして綺麗なお姉さんは驚いている
こんなときでもめちゃ可愛い
お姉さんは私の頭をぽんぽんと叩いてくれた
「可愛い〜♡」
「あ…あの…!!私本気です!!音楽で生きていくって決めて旅に出たんです!お願いします!」
「歳は?」
「十二歳です。」
「あらら。孤児院を追い出されちゃう年齢だ。」
「そんなんです!行くとこなくて!!お願いします!!」
「だって〜どうする?ジャッカル。」
「はぁ…ガキの夢物語に付き合うほど、うちは余裕ないの。帰りな。」
「私本気です!!お願いします!!」
「はぁ〜じゃあ一曲聴いてやるからやってみろよ。」
「ありがとうございます!!」
私はギターを肩に掛けて用意する
私の為に作ってくれたライトの曲があれば
私は最強だ
私はギターを鳴らし歌う
「…。」
私が演奏している間、ジャッカルと呼ばれた男性は私のことをじっと見つめていた
私は演奏を終えて言う
「ど…どうです?天下取れるでしょうか。」
「アホか。下手くそ。出直せ。」
「えぇえええええええ!!」
「ええ!!じゃあねぇよ!!このど下手くそ!!ギター初めて間もないだろう?お前。」
「失礼な!!これでも一年やりましたよ!!」
「一年やっただけで音楽で食っていけるわけないだろが!!帰れ!!」
「いやいや!一年でここまで弾けるようになったんですよ?私まだまだ子供ですし未来へと投資だと思って入れてくださいよ!!」
「そんな余裕ない!帰れ!!」
「ケチ!!」
「ケチじゃねぇ!!世の中厳しいんだよ!!早く孤児院戻って仕事紹介されてこい!!」
「マナ…帰ろう…。」
アーマーに帰るように促される
「いやよ!入れてくれるって言われるまで粘着してやるんだから!」
「やめろ!!」
ふとジャッカルはアーマーを見る
「お前は入りたくないのか?ヴァイオリン持ってるが。」
「俺は…マナと一緒に旅がしたかったからヴァイオリンを持ってきただけ。」
「ふーん。弾いてみろよ。」
「…わかりました。」
アーマーはヴァイオリンを弾く
いつ聴いても完璧な音色だ
「お前いいじゃねぇか。お前入れてやるよ。」
「はあああああああああ!?アーマーはよくて何で私はダメなんですか!?」
「こいつめちゃくちゃ上手いもん。」
「いや。そうだけど!!」
「俺はマナと旅がしたいので…」
「えぇ…?じゃあ仕方ないからマナも入れるよ。」
「ええ!?本当ですか!?やったーーー!!!アーマーすごーーーい!!」
「いやだよ。俺はマナと二人で旅したいのに。断るよ。」
「入ると言え!!」
「いやだ!!やっと二人きりになったのに!!」
「入ると言ったら何でも言うこと一個きいてあげる!!」
「な…!?本当か!?」
「うん!!」
「これからお世話になります。よろしくお願いします。」
「よろしくお願いします!!」
「お前ら騒がしそうだな…。」
「じゃあキスして。」
「そういうのは無理。」
「詐欺だ!!なんでも言うこと聞くって言っただろう!?」
「そう言うことをこんなときにつけ込むのよくないと思う。気持ちが入っていないキスなんて意味ないよ。」
「それでもいいから!」
「やだ。」
アーマーが無理矢理キスしようとしてくるので
私は全力で抵抗する
「大人しくしろ!!」
「女の子を襲うなんてサイテー!!」
「約束破ったことの方が最低だろうが!!」
「お前らうるさいわ!!これでも食べとけ!!」
そう言って投げられたものは硬いパンだった
「なんだよこれ…。」
「俺達は余裕ないの!文句あるなら出て行きな!!」
「フフフッ。アハハハハ!!!」
私は硬いパンを手にして思わず笑ってしまった
「…ルナ?」
「ごめんごめん。懐かしくてさ。」
孤児院時代みんなで文句いいながら食べていた硬いパン
「私。硬いパン大好きなの。」




