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第二十九話 旅立ち

旅立ちの日の前日、私はどうしても最後に会いたい人に会いに行った

「お久しぶりです。サテライト様。」

「ようこそ。ルナ。会いたかったわ。」

「えへへ。光栄です。」

「明日いよいよ旅立ちなのでしょう?」

「はい。この国に戻ってくることは難しいのでお別れの挨拶をしにきました。」

「アーマーの執着がなければいつでも会えたのにね。」

「…どうでしょうか。実はもう半年間会っていないんです。」

「え?そうなの?」

「はい…。アーマーなりにケジメをつけたのではないでしょうか。私に会わないようにすれば未練もなくなると思ったのでしょう。」

「ルナは…?それでいいの?」

「寂しくないと言えば嘘になります。アーマーは私にとって大事な兄ですから。でも…アーマーの決意をぶれさせてはいけないと思って。私からも会いに行きませんでした。」

「じゃあいつでも帰ってきてもいいんじゃないの?」

「いえ。懸念なことは無くしたいので。」

「そう…寂しくなるわね。」

「サテライト様も一緒に旅立ちしますか?」

「…フフフッ。初めて会った時を思い出すわねそれ。」

「今も昔も本気ですよ?私は。」

「私は根っからの貴族なの。庶民の暮らしなんて耐えられないわ。」

「かっこいいですね。」

「ルナも夢に向かって頑張る姿かっこいいわよ。」

「ありがとうございます。サテライト様にそう言われることが一番嬉しいです。」

「私も素敵な恋をする。絶対に幸せになる。」

「必ず出来ますよ。応援してます。」

「じゃあ…またねと言ってもいいのかしら。」

「勿論です。また会いましょう。サテライト様のおかげでタイムリープしてからの人生本当に幸せです。私に人生をやり直させてくれてありがとうございます。」

「私も。ルナのおかげで処刑されることなく穏やかに過ごせてる。感謝してるわ。必ずまた会いに来てね。」

「数年はかかると思いますが、必ずまた会いに来ます。」


私はグリード家に帰った

「あ。クラウド兄ちゃん!」

「ルナ。会えてよかった。」

「今まで本当にお世話になりました。クラウドお兄ちゃんが私の教育係と言っても差し支えないでしょう。優しいところも厳しいところも大好きでしたよ。」

「…うん。手のかかる妹だったけれど、仕事ばかりの毎日がルナのおかげで楽しかった。」

「サテライト様のことよろしくお願いしますね。」

「…俺には雲の上の存在だから。」

「そんなことない。サテライト様を一番幸せにできるのはクラウドお兄ちゃんだよ。どこぞの貴族より誰よりも大事にしてくれるでしょう?」

「勿論だ。」

「じゃあクラウドお兄ちゃんが一番結婚相手に相応しいよ。反対も多いだろうけど、愛の力で頑張ってね。血筋だけで諦めるのは絶対ダメだよ。」

「ありがとう。ルナ。」



私は自室に帰り明日の出発の身支度をする

「本当に出て行かれるのですね…。」

「うん。ガリバー今まで本当にありがとう。問題行動ばかりで迷惑かけちゃってごめんね。」

「俺は一生ルナ様に振り回されてもよかったのに。」

「寿命が縮むよ?」

「俺は頑丈なのが取り柄だから大丈夫ですよ。」

「ありがとう。いつも引き留めてくれて。孤児院出身の卑しい身の上なのに大事に守ってくれてありがとう。私は最高の護衛騎士に恵まれたなぁ。」

「今からでもやめていいんですよ?」

「やめませーん。」

「外は恐ろしい所ですよ?ルナ様は可愛いからすぐに襲われてしまいますよ!!」

「それでも構わないっていつも言ってるでしょう?それに平民は危険なの。私は元々平民なんだから。元に戻るだけ。」

「今は王族です!」

「自分を王族と思ったことなんて一度もないよ。」

「そんな…そんなこと言わないでください!!」

「ごめんね。ありがとう。世界一幸せだった。」

「じゃあずっとここにいればいいじゃないですか!!」

「いつも言ってるでしょう?幸せになる為に生きてない。やりたいことやって生きるんだって。私のステージ見たでしょう?最高に輝いていたと思わない?」

「…。」

「ありがとう。さようなら。ガリバー。」


次の日になり、いよいよ私の旅立ちだ

両親とグリード家の使用人達が全員揃って見送ってくれた

アーマーの姿はなかったけれど

「お父様。お母様。本当にお世話になりました。」

「ルナの音楽は世界中で認めてもらえるよ。頑張って。」

「ありがとうございます。たくさんの教養とたくさんのお金があるから安心して旅立つことが出来ます。感謝してもしきれません。」

お父様とお母様が私を抱きしめる

「ここを離れてもルナは私達の子供だよ。」

「…ありがとうございます。たくさん愛してくれてありがとう。グリード家で過ごした日々は私の宝物です。お世話になりました。」


私は魔法陣の中に入る

これは私が絶対にアーマーに追跡されないように書かれた王国魔法使いの最高傑作だ

全ての魔法を使えるアーマーでも追跡を不可能にする魔法陣

私がこの魔法陣の上で移動スクロールを破けばお別れだ


「あ。忘れてた。」

私は一通の手紙を出す

何度手紙を出しても返事はなかったけれど

最後の別れは綴りたかった

「これ。アーマーに渡してください。」

「あぁ…。必ず渡すよ。」

「ありがとうございます。」


私は魔法陣の上に立ち移動スクロールの紙を破く

瞬く間に光り輝き私はどこかに転送される

「みんな!私!!自由になります!!本当にありがとうございました!!!」


私はそう言い残して去った


転送先は知らない街

これから私は音楽活動で生きていくんだ

期待に胸を弾ませて顔を上げると


「遅かったね。ルナ。待ちくたびれたよ。」


目の前には半年間姿を表さなかったアーマーがいた

「…久しぶりアーマー。元気そうね。」

「やっと念願の愛の逃避行が出来たからね。つい顔が緩んでしまうよ。」

アーマーが私に手を差し出す

それは出会ったあの時と同じ


「ルナを世界で一番自由にしてあげる。」


私は思った

執着してあげるの間違いじゃないのかと



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