第二十話 誕生日
「ルナ。会いに来てくれたんだ。ルナから会いにきれくれるなんて、嬉しい。俺が送ったドレス着てくれたんだ。綺麗だ。とても似合っているよ。」
私は一度部屋に戻り、アーマーが用意してくれたドレスを着て、プレゼントを持ってアーマーの部屋に行った。
「今日はアーマーの誕生日だから。特別にね。」
素っ気ない態度をする。プレゼントを渡して帰るだけ。そう自分に言い聞かせて。
「これ、プレゼント。お誕生日おめでとう。」
私はプレゼントをアーマーに手渡す。プレゼントしたのは私が刺繍したハンカチだ。不器用だから上手くは出来なかったけれど、三日月の形をした刺繍を入れた。
「これ……ルナが刺繍したの?」
「うん…。下手くそだけど…。」
アーマーは私がプレゼントしたハンカチを愛おしそうにキスをした。
ひええええええええ!!なんでそんな恥ずかしいこと……!こっちが恥ずかしくて顔が赤くなっちゃうよ。キザすぎない!?
「ルナの香りがする……どうして月の刺繍にしたの?」
「えっと…よく月を眺めてるイメージがあるから…好きなのかなって…」
「うん。好き。ありがとう。最高のプレゼントだよ。」
「そ、そう…喜んでくれてよかった。じゃあね。」
「待ってよ。今日は俺の誕生日なんだから、少しサービスしてよ。」
「いや。」
「抱きしめるだけだから。お願い。」
「……少しだけだから。」
「うん。ありがとう。後ろから抱きしめてもいい?」
「うん…。」
私の後ろからアーマーが抱きつく。三分間ぐらい、黙ったまま。ハグをされていた。全く離れる気配がないので
「そろそろ離してくれ…」
そう私が言った瞬間に耳元で囁かれる。
「もう少しだけ。お願い。ルナ。」
「ひゃあ!も、もうダメ!終わり!!」
アーマーが私の首元にキスをする。
「ダ、ダメ!嘘つき!ハグだけって言った……」
私はそのままアーマーのベッドに押し倒される。
急展開すぎて、パニックになる。
「や、やだ!やめて!!お願い!!」
「やだな。ルナのえっち。安心して、ルナが嫌がることは絶対しないから。」
そう言って私とアーマーの手を絡ませて、私のことを見つめながら、私の手にキスをする。えっちなのはどっちだよ!アーマーにだけには言われたくない!!
「いいから早く退いてよ!」
「そんなに顔を赤くして、俺のこと好きなんだろ?好きって言ってくれよ。怖がらなくていい。ルナのこと幸せにするから。」
その言葉に私の乙女心が冷めていく。幸せにする?冗談じゃない。私の中のロック魂が燃えている。やっぱり私に恋愛は向いてない。
「別に幸せになんてなりたくないから。私はこれから歌手になって、全然人気でなくて、失敗ばかりでも、最後には大きく羽ばたいて世界中に私の歌声を!私の思いを届けるんだ!」
甘い雰囲気をぶち壊し、私は夢の演説をする。
「……この屋敷はルナが来るまで、毎日退屈でつまらなかった。この五年間、ルナが隣にいて本当に幸せだった。自由ではなかったけれど、愛する人と一緒にいられる幸せを知った。でも……ルナと出会ったあの日、自由を愛して走り回るルナに俺は恋をしたんだ。俺の手を引いてどこにでも連れて行ってくれるような気がした。……ねぇ。ルナ。もう一度俺の手を取ってくれないの?俺に手を差し伸べて俺をここから連れ出してくれよ。」
「……ごめんね。私にはもう出来ない。あの日も言ったでしょう?一日だけ自由にあげるって。私にはアーマーを自由にしてあげることはできないよ。……私達は元々六年間の約束だった。だから私達はあと一年でお別れするの。」
「………。」
「アーマーはさ。私じゃなくて、自由にしてくれる人なら誰でもよかったんだよ。私は特別な存在でもなんでもなかったの。アーマーだって一人で自由に生きればいいじゃない!この国を継がなくてもなんとかなるって!アーマーの人生なんだから、好きなように生きていいんだよ。私が手を引いて自由にさせてあげることは出来ないけど、きっとアーマーの手を引いて自由にしてくれる素敵な女の子が現れるよ。大丈夫。アーマーの人生は全然つまんなくないんだから!」
そう言ってアーマーに激励を送る。私はベッドから起き上がり、それじゃあね!と言って部屋に戻る。我ながらいい励ましが出来たんじゃないか?と気分良く自室へ帰って行った。
初めて会った時以来に見た。初めて会った日、自由を手に入れてはしゃいでいたルナ。今日、夢を語るルナもあの日と同じぐらい輝いていた。この五年間幸せに生きるルナも可愛かったけれど、やっぱり自由を手にしたルナが一番輝いている。眩しくて光輝くルナが一番好きだ。好きだ。好きだ。好きだ。好きだ。好きだ。好きだ。大好きだ。
ルナはいつも俺を救ってくれる。俺の人生だから、俺の自由に生きろって。この国を継ぐ必要もないって言ってくれて嬉しかった。こんな国どうでもいいのに、王様にされる未来が気に入らなかった。俺はお父様とは違う。国の為に働くなんて絶対嫌なのに。
みんなが俺に言う。立派な王様になれと。
「バカだな。ルナは。他の女の子が俺を救ってくれる?俺にこの国を継がなくてもいいなんて言う頭がおかしい女はルナしかいないよ。ルナは最高に狂っていて、俺の特別な運命の相手なんだ。」
俺はルナから貰ったハンカチにもう一度キスをする。俺が月を眺めていたのを知っていたのは、俺のことを見ていたからだ。嬉しい。月が好きなのはルナの名前が月を連想させるから。俺はいつでもルナで頭がいっぱいなんだ。
今日ルナとイチャついていたライトとか言う男。ルナからサイン入りのハンカチを貰っていた。嫉妬で気が狂いそうだ。ハンカチを燃やしてやりたいが、ダメだ。ルナに嫌われては意味がない。ルナは束縛を一番嫌うから。仕方がないからあのハンカチは買収しよう。
嫉妬や束縛をしては絶対にダメ。少しずつルナは俺のことを意識している。あんな男にすぐ惚れるようなことはルナはしない。焦らずに絶対俺に惚れて貰うようにするんだ。でもみんなが俺とルナが一緒になることを邪魔をする。辛い。なんでダメなんだ?
「神様……。自由もいらない。この国を継ぐことになってもいいから、どうかルナだけは…俺にください……。」




