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第144話 ラストライブ

ナイルの説教が効いたのか次の日からはジャッカルは大人しく練習に参加していた

1週間の練習も無事に終えて、いよいよ明日は私のラストライブだ

最後の練習が終わった後に私は声をかける

「ねぇ。ジャッカル。ラストライブの前に2人で話そうよ。」

「…わかった。」

少し迷った後にジャッカルはそう答えてくれた

他のメンバーが練習を終えて退出していく中

私だけジャッカルの部屋に残り、2人きりになった

「明日…すっごく楽しみな気持ちとこれで終わっちゃうんだなっていう寂しさの気持ちが交錯してるよ。」

「寂しいならずっとここにいればいい。」

「世の中そんなに甘くないみたいでさ。」

「…。」

「ありがとう。ジャッカル。私はこの2年間人生で1番幸せだった。何の取り柄もないただの小娘に作曲の才能を見出してくれてありがとう。ジャッカルが私の曲を好きでいてくれるから、私は自信を持って観客の前で歌うことが出来た。本当にありがとう。」

「別に…団長としての仕事をしただけだ。ルナの曲は稼ぎになると思っただけだ。」

「我儘な私は扱いずらかったでしょう?迷惑かけてばかりでごめんね。」

「最後の最後までな。」

ジャッカルはギターを抱える

「…お前俺の曲が聴きたいって言ってたよな。」

「うん。」

「1回しか歌わねぇからな。」

ジャッカルはギターを弾き、歌う

ジャッカルが作曲した歌を

驚くことにジャッカルの曲は

とても綺麗な王道のラブソングだった

こんなに純粋に人を愛することが出来る人だったのか

今では女遊びばかりしてるくせに

ジャッカルにも純粋に恋をして

純粋に歌を作る頃があったのだろう

ジャッカルが歌い終わり私はパチパチと拍手をする

「びっくりしちゃった。まさかこんな綺麗なラブソングを作っていたなんてね。」

「…俺にも青臭い時期があったんだよ。だから聴かせたくなかったんだ。」

「とても綺麗なラブソングなのに。もったいない。毎日歌えばいいのに。」

「やめろ。恥ずかしくて死ぬわ。」

「フフッ…あっ…あれ…なんか感動して涙が…」

気づけばポロポロと涙が溢れていた

本当はずっと一緒に旅がしたかった

死ぬまで一緒にいたかった

こんなに幸せな日々が死ぬまで続くと信じて疑わなかった

カリン様とアーマーと一緒に王家反逆して

自由を手に入れるか

本気で悩んだ

でも…大事な人を殺して手に入れた自由では

私は今までと同じように幸せな旅が出来ないと思った

報復される危険性だってある

そうなれば…アース音楽団だって平和に活動なんて出来ない

アース音楽団は今まで通り自由に生きて旅をしてほしい

だから…去る選択しかできなかった

ごめんね

泣いている私にジャッカルはハンカチを渡してくれた

私はハンカチがぐちゃぐちゃになるまで泣いた

「時間勝手に巻き戻そうとして悪かった。ごめん。どうしてもルナと一緒にいたかった。」

「いいの…私も…嘘ついたから…もう…帰ってこれないって…わかってたのに…ごめんなさい。」

「俺も…人生でルナと過ごした2年間が1番幸せだった。ありがとう。ルナ。」

私は泣き崩れた

明日ラストライブなのに声が枯れてしまうほど泣いた

涙は止まらずそのまま泣き疲れて眠ってしまった


翌朝、私はジャッカルのベッドで目覚める

「おはよう。ルナ。」

ジャッカルが声をかける

「おはよう。ジャッカル。」

「目は泣き腫らしているから冷やしてやったよ。声はどうだ?ラストライブなのに歌えないとか言うなよ。」

「喉が太くなって丁度いいわ。最高のコンディションよ。」

朝風呂に入り、朝食を食べてライブの準備をする


観客は満員御礼

準備が整った

アース音楽団の団員全員で円を組み、ジャッカルが挨拶して士気をあげる

「今日はルナのラストライブだ。俺達の全力をぶつけろ。ルナに天下を取らせる。最高のライブにするぞ!!」

うおおおおおおおお!!とみんなで声をあげる

みんなの笑顔に背中を押される

私は先陣を切ってステージへと上がり挨拶をする

「みんなーーー!!私のラストライブに来てくれてありがとうーーーー!!」

「私はアース音楽団で過ごした2年間を思い返してみたけれど」

「幸せで」

「幸せで」

「幸せで」

「本当に幸せな日々だった」

「不幸な日なんて1日もなかった」

「それはアース音楽団のみんなが私のこと大事に優しくしてくれたこともあるけれど」

「ここにいる観客のみんなに支えてもらえて」

「私の曲を楽しんで貰えて」

「本当に幸せでした」

「私の曲を愛してくれてありがとう」

「ここのステージに立って歌っている時が」

「人生で1番幸せでした」

「だから…今日、私のことを世界で1番幸せ者にしてください」

「世界で1番輝くから」

「世界で1番愛してください」

「忘れないで」

「私がここにいたことを」

「覚えていて」

「私が残す私の曲を」

「理不尽ばかりの世の中だけど」

「それでもこの世界を愛してる」

「だから…最後は愛の歌を」

「愛を込めて」

私は歌う

愛を込めて

みんなに届くように

この歌がこの世界中に届きますように


あっという間にライブは終わり観客は波のように唸って大盛り上がりしていた

私は振り返りアース音楽団のみんなに言う

「どう!?これが天下を取ったステージよ!!この景色を一生目に焼き付けて覚えておいてよね!!」

ああ…本当にやり切った

思い残すものなんて何もない

このステージに全てを賭けれた私は

世界で1番幸せ者だ



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