第136話 約束
ライトのバンドにゲスト出演したステージも大成功で終えて
とてもとても気分がハイになっていた
今ここで死んでもいいぐらいに
「バンパカパーーーーン!!!伝説のバンドマン!ルナ様のお通りよーーーーー!!」
私はアーマーの牢屋の扉を気分よく開けて入る
「とても楽しそうで羨ましいよ。ルナ。俺はこんなにも苦しんでいるのに。」
「ふふーん。監禁されて世界一可哀想なアーマー君に私から本日披露した新曲をここで歌ってあげましょう!!ルナ様のワンマンライブなんてとても価値のあるものなのよ?」
「いつからルナはそんなに偉くなったんだ。アース音楽団の永遠の下っ端のくせに。」
「今日だよ。」
私はギターを掻き鳴らし、歌う
気分がハイになりすぎていて
全力を出しすぎた
歌い終えた後は酸欠になって膝から崩れて落ちた
「ルナ!!!」
アーマーが心配して駆け寄ってきた
膝をついた状態で息切れをしながら答える
「た…大丈夫。水だけ貰ってもいい?」
「おい!水を持ってこい!!」
ガリバーが急いで水を持ってきてくれて私は水を飲み落ち着いた
「ふぅ…アーマーに私の全盛期の輝きをみせつけてやろうと張り切りすぎちゃったわ…」
「すごかったよ。いつもルナはすごいけど…今日は格別にすごかった。」
「ふふーん!当然よ!私はこの世界で天下を取る伝説のバンドマンだからね!」
「ライトとのバンドステージも終えた。もうここから出てもいいよな?」
「あと2週間ぐらい待って。」
「おい!ふざけるな!!なんで…!!」
「あと2週間でアース音楽団のみんなとお別れしてくる。最後に…新曲を演奏して。」
「…本当に2週間後だな。」
「うん。2週間ここには来れないけれどごめんね。」
「いいよ。2週間経てば正真正銘、俺とルナの2人だけの旅が始まる。そうだろう?それなら待ってやるよ。2週間。」
「ありがとう。アーマー。」
「今日歌った新曲をアース音楽団でもやるんだね。」
「いや。違うよ。」
「え?まさかもう1曲作ったのか?」
私はニヤリと笑って答える
「うん。もう1曲は…私が初めて歌う愛の歌だよ。」
理不尽だらけのこの世界を
それでも愛していると
次の日になり、私はサテライト様にお願いをして移動魔法を使ってアース音楽団まで移動して貰えることになった
クラウドお兄ちゃんはサテライト様を連れて行くことに反対していたが、サテライト様がついていきたいと言ってくれたのでなんとか納得してくれた
私とサテライト様とガリバーとグレイでアース音楽団の元へと魔法で移動させてもらった
「ルナ!!!!」
どうやらジャッカルの目の前にワープしたようで
ワープした瞬間にジャッカルが抱きしめてきた
「ただいま。ジャッカル。」
「遅いぞ!もう2週間も経った…。」
「ごめんね。」
「もういい。よかった…もう帰ってこないかと…」
「みんなを集めてくれる?話があるの。」
「…話?」
「そう。話。」
「帰ってきたんだろう?」
「それを話すの。」
「お前…まさか…」
察しているジャッカルに私は少し微笑んで誤魔化すことしかできなかった
アース音楽団の全員がジャッカルの部屋に集まる
「ルナ!グレイ!よかったぁ!」
「おせぇよ!」
「とにかく無事に帰ってきてよかった。」
「ルナ…」
リリー、カイ、ナイル、ホリーが集まった
「久しぶり。みんな。遅くなってごめんね。実は話があるの…私の…刑罰の話を。」
私はみんなに私の刑罰が決まったことを話した
グレイにも…私の刑罰について初めて話す
「…ふざけるな。今すぐにやめろ。そんなこと。」
ジャッカルが怒って言う
「決まったことなの。」
「ふざけるな!!お前が勝手に決めたことだろうが!!なんでルナが…」
「私は罪人だから。」
「罪人?英雄の間違いだろう?この国の国民を救ったんだろう?何故ルナがそんな目にあわなければいけない!!」
「危険分子だから。」
「ルナは犯罪なんてしない!」
「いいえ。王城で監禁されて生きていくなら私は必ず反逆軍の一員となりクーデターを起こします。私はそんなことしたくないんです。」
「じゃあ監禁されずにまた俺達と旅をすればいいじゃないか!何も問題ない!」
「私の魔法は…発動条件が判明すれば魔力のない一般人でも簡単に発動する。悪用されて時間が巻き戻る可能性は極めて高い。そんな危険分子を王家が野放しにするわけない。」
「じゃあ反逆すればいい!ルナがいなくなるなんて絶対に嫌だ!!俺達天下取るって約束したじゃないか!!そうだろう?アーマーなら…1人で何千人も倒したアーマーなら王家を籠絡出来る!そうだろう!?」
「ごめんね。王家に育ててもらったの。そんなことは出来ない。これが最善なの。それに…約束は果たすつもりだよ?」
私はギターを抱える
「おい…」
「2週間。私に残された時間です。この2週間で私は天下を取ります。」
「ふざけるな!そんな短い期間で…」
「聞いてください。世の中の理不尽さばかり歌ってきた私が…初めて愛の歌を書きました。この曲に私の全てを込めました。」
天下を取る
勝負の曲
最後は恨みではなく
憎しみではなく
愛を伝えたい
理不尽な世の中だった
生き辛い世の中だった
努力は必ず実らず
血筋で判断されて断罪される
それでも…
この腐った世の中を
どうしようもなく愛しているんだ
私はみんなの前で歌う
愛を込めて
私の最後の曲を
歌い終えた私はいつものセリフを言う
「どうですか?天下取れますかね?」
その言葉にジャッカルは泣きじゃくりながら答える
「2週間後のライブでルナに天下を取らせる。約束だ。」