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第十三話 逃避行

「やだ。私ったらすぐに二人でお話したくてつい瞬間移動しちゃったけど、大丈夫かしら…」

 「私もたくさんお話したいです!」

 「お父様に叱られてしまいそうね。」

 「あっ!私、怒られないようにするいい考えがありますよ!」

 サテライト様と二人で話をしていたら、急にアーマーが目の前に現れる。

 「ルナ!早くこっちへこい!」

 アーマーに手を引かれてサテライト様と引き離されてしまう。

 「どうして…。」

 王族は攻撃魔法しか使えないはず。魔法は血筋で使える魔法が決まっている。なのに何故アーマーは今瞬間移動が出来たの?それだけじゃない。追跡魔法も使えないとすぐに場所はわからないはず。

 「瞬間移動魔法と追跡魔法まで使えるなんてさすがグリード家の天才的な才能のアーマー様ですね。」

 サテライト様が言う。

 「何故ルナを攫った?王族を攫うなんてここで首を落とされてもおかしくはないぞ。」

 「私はルナ様が二人きりでお話がしたいとご要望されていたので応えようとしただけですわ。」

 「俺は許可しなかったはずだ。」

 「女の子二人の秘密話もしてはいけないんですか?そんなことでルナ様を取られると?器の小さい王子様ですね。」

 サテライト様がそう言うとアーマーはサテライト様の首を締め出した。

 「死ね。」

 私は慌てて二人を引き離す。

 「ちょっと!アーマー何してるの!?サテライト様大丈夫ですか!?」

 「ルナはどうしてその女を庇うの?その女のことを何故知っている?」

 「上手く説明は出来ないけれど、サテライト様は私の大事な人なの!サテライト様を傷つける人はたとえアーマーだって許さないんだから!」

 サテライト様の体はカタカタと震えていた。当たり前だ。殺されかけたんだから。しかも一回目の人生もアーマーに浮気されて処刑されている。サテライト様にとって一番嫌いな人がアーマーかもしれない。さっきは気丈に振舞っていたけれど、本当はとても怖かったに違いない。私が必ず守らないと。私はサテライト様を抱きしめて、アーマーを睨み怒った口調で言う。

 「二人で話がしたいだけなの。何も悪いことしようとしてないからいいじゃない。アーマーこそなんでそんなに怒ってるの?」

 「俺の目の前でルナを攫ったからだよ。」

 「攫ったんじゃなくて屋敷に移動しただけじゃない!」

 「俺からルナを奪って逃げた。殺してもいいんだその女は。」

 ダメだ。キレてて話が全く通じない。また落ち着いた時に改めて会う方がいいのか?

 …たぶん無理だ。アーマーは今後、私とサテライト様を会わせようとはしないだろう。話が出来るチャンスは今しかない。

 「二人で話がしたいだけの簡単なお願いなんだけど、どうしてもダメなの?」

 「ダメだ。早く帰ってこい。ルナ。」

 「じゃあ、しょうがないなぁ。」

 お母様が私の為に作ってくれた魔法スクロールを取り出す。何かあった時に、逃げられるように作ってくれたものだ。私の体にかかっている追跡魔法を解除して、どこかに瞬間移動させてくれる魔法だ。

 ビリッとスクロールを破り、魔法を発動させ、私とサテライト様は瞬間移動した。

 

 

 移動した場所は懐かしい場所。孤児院だった。

 「ルナ…?」

 「シスター…会いたかったです…。」

 私は涙を流して、シスターを抱きしめる。

 「私も会いたかった。どうしたの?何かあったの?」

 「少しだけ一部屋お借りしてもいいですか?サテライト様と話がしたいので。」

 「もちろんいいわよ。」

 シスターに案内されて空き部屋を一つ貸して貰った。もう少しシスターとも話がしたかったけれど…アーマーが探しているはず。時間はあまりない。サテライト様とお話出来るのは今日しかないから。

 「サテライト様大丈夫ですか?ここにはもうアーマーはいません。私には魔力がなく、力になれることが少なくて申し訳ございません。」

 「ううん。ここまで逃してくれてありがとう。本当に助かった。」

 やっと話が出来る。私はサテライト様に話す。

 「あのっ。時間を戻してくれてありがとうございました!私本当に感謝していて……あのままの死ぬまで生きていくなんて本当に地獄だったから…。」

 「ルナが時間を戻したんじゃないの?」

 「えぇ!?私にはそんな力ないですよ!」

 「私にもそんな力はないわよ。」

 「処刑される瞬間にもう一度やり直したいってサテライト様が言ってたから…。サテライト様が時間を戻したんだと思ってました。」

 「私も力があるのかと思って何度か試してみたけれど時間回帰したのはあの時だけだったわ。」

 「私も一応試しましたけど、何も起こらなかったです。」

 「……どうして私達だけが記憶があるのかしら?他にも記憶がある人と会ったことはある?」

 「いいえ。私が会った人の中では記憶がありそうな人は誰もいませんでした。」

 「ルナはどうして私に記憶があると思っていたの?」

 「私はサテライト様が時間を戻したと思っていましたから…。時間を戻した本人なら覚えているんじゃないかと思っていました。」

 「私は神様が私を哀れに思って奇跡を起こしてくれたんだと思っていたわ。」

 「じゃあきっとそうなんじゃないですか?私達のこと神様は見てくれていたんですよ。」

 「他にも記憶がある人はいるのかしら?」

 「本当に神様の奇跡なら他にも記憶があるかもしれないですね。きっと神様は可愛い女の子が好きなんですよ。私達可愛いし。ラッキーですね!」

 「他にも可愛い女の子は記憶があるかもしれないってこと?」

 「そうです!」

 「なにそれ笑。この世界の神様やばすぎでしょ笑。」

 「きっと女好きの神様なんですよーこの世界の神様!その中でもお気に入りがサテライト様だったから死なせたくなくて戻したんじゃないですか?私はおまけみたいなもんだったんですよ!」

 「あの処刑の日、ルナはマリーン噴水広場にいたの?」

 「あの…悪い男に連れて行かれたんです…気を悪くしたなら申し訳ないです……。」

 「いいのよ……少し思い出したわ。処刑される時、誰も味方がいないと思っていた。アーマー様に裏切られ、お父様とお母様も私のことなんて信じてくれなかった。私はカリン様を毒殺なんてしてなかったのに。怖くて泣き叫んで…。世界中が敵に見えた。でもルナ。貴方と最後に目が合ったの。ルナは泣いていた。私の為に。誰も味方がいないと思ってたのに少しだけ救われた気がしたの。私の為に泣いてくれてありがとう。」

 私はその言葉にボロボロと涙が落ちる。

 「私っ。ずっとサテライト様にお礼が言いたかった!本当に辛い日々で…やり直しが出来たのはサテライト様のお陰だったから…。」

 「本当は私の力じゃないけどね。」

 「そんなことない!あの時、サテライト様がもう一度やり直したいって願わなければきっとこの世界は戻っていなかった。だから私にとってサテライト様は私を救ってくれたヒーローだし、神様なんです!」

 「じゃあ私にとってもヒーローと神様もルナよ。あの時、ルナが私の為に泣いてくれなかったら時間は戻らなかったって思うから。」

 そう言って、サテライト様もポロポロと涙を流す。

 私達の為に神様は時間を戻してくれたのなら、私達にしか出来ない使命がこの世界にはあるのかも知れない。

 「サテライト様は…婚約破棄を望んでいますよね?」

 「当たり前よ。アーマーなんて大嫌い。二度と顔も見たくないわ。婚約が嫌だってお父様にもお母様にもお願いしたのに聞いてくれなかった。私の両親は私よりもスチュード家の権力を上げる方が大事なのよ。大嫌い。」

 「このままスチュード家に戻らずに逃げますか?」

 「………え?」

 「サテライト様が望むならこのまま逃げて二人で暮らしてもいいですよ。私はサテライト様の味方です。守る力はないかもしれませんが…ずっと側にいてあげることぐらいはできます。平民暮らしになって、仕事見つけて働くことも出来ますよ!」

 サテライト様は驚いている。無理もない。このまま二人で駆け落ちすることを持ち掛けてるんだから。

 

 「サテライト様を苦しめる人達の元に帰らせたくないです。私を選んでくれませんか?絶対、後悔させません。」

 

 なんだかプロポーズみたいだなと思った。

 

 

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