第127話 帰還
アーマーが敵軍の全てを燃やし尽くして
この戦いは終わった
「終わったよ。ルナ。ほら全然平気だろ?俺は強いんだから。」
そう言いながらアーマーは私の目の前に降りてきた
私はアーマーをギュッと抱きしめて
「無事で良かった。」
と言った
「ルナが心配していた戦争も終わったし、これからもアース音楽団で俺達旅を…」
「旅は終わりだよ。残念だけどね。」
そう言って現れたのはクラウドお兄ちゃんだった
サテライト様の瞬間移動魔法で2人で目の前に現れる
「…俺を連れ戻しに来たのか?俺は帰る気はない。燃やされたくなければ今すぐ城に帰れ。」
「アーマー様。戦争が始まってしまった今、自由に旅をさせるわけにはいきません。今回の襲撃もアーマー様を狙って行われた犯行。2年間も見逃して旅をさせてあげたのです。そろそろ本来の役割を果たして頂かないと…」
「俺は帰らない。お前が俺の影武者になってこの国の王になればいい。」
「ご冗談はよしてください。魔法の使えない王子などすぐにバレてしまいますよ。帰りましょう。」
「これ以上は議論しない。不愉快だ。次に帰れと言えば燃やす。」
「私は帰ります。」
と私はクラウドお兄ちゃんに言う
「ルナ!?本気か!?あんなに不自由な暮らしを嫌がっていたのに?アース音楽団はどうするんだよ!!」
「1度報告しに帰るだけ。」
「…報告したらここには戻れないぞ?」
「…。」
私は黙ってしまう
報告するということは
私の時間回帰の能力を話すということ
時間回帰の能力者の血筋は王家反逆の指名手配犯だ
私は囚われる可能性が高い
アース音楽団に戻ることも出来ない可能性が高い
それでも私は…この罪を隠して生きていけない
何度もやり直した代償を
清算したい
「…ごめんね。ルナ。ルナは自由になりたくて旅に出たのに。連れ戻しに来ることになるなんてね…」
とクラウドお兄ちゃんが言う
「いいんです。もう十分楽しみました。だから…帰ります。」
「…ルナは帰るそうだよ。どうしますか?アーマー様。貴方1人でここに残りますか?」
「…。」
「帰りましょう。王家に。」
私達は宿へと帰り、王家へ帰ることをジャッカル達に伝える
「1度、報告する為に王家に帰ることにしました。」
「…は?」
「次のライブには出られないです。ごめんなさい。」
「いつ帰ってくるんだ?」
「…。」
「おい!!いつ帰ってくるんだよ!!」
「わからない。」
「じゃあ帰るな!ルナは俺と一緒に音楽で天下を取るんだろう?報告なんて今そいつに言えば終わるじゃねぇか!帰る必要なんてないだろうが!!」
「すぐに戻るから…」
「さっきはわからないって言ったくせに!そんな所に帰らせられねぇよ!」
「でも帰らなくちゃいけないの。今までありがとうございました。本当に…」
「なんで別れの挨拶してんだよ!俺は認めねぇぞ!勝手に抜けようとするな!」
「突然帰らせることになり申し訳ございません。戦争という大事件があったので…強制送還は免れないのです。報告後、ルナはすぐにここに帰ってくると約束しましょう。」
とクラウドお兄ちゃんが言う
「ほ…本当か?ルナは帰って来れるんだな!?」
「アーマー様は無理ですが…ルナは平民なので…」
「よかった…。おい!ルナ!報告とやらが終わったらすぐに戻ってこいよ!」
「うん…。」
そう言ってジャッカル達、アース音楽団のみんなは部屋に戻って行った
「…嘘つき。」
「嘘は言っていません。最後の別れの挨拶ぐらいなら帰って来れるように手配出来ますから。」
「私がいない間にすっかり王家の犬になっちゃったね。クラウドお兄ちゃん。」
「俺はサテライト様と一緒になれるなら何でもする男だよ。」
私は急に手誰かにを引かれる
「わっ!」
引っ張ったのはグレイだった
「…ルナお母様が帰るなら僕も帰ります。僕達は家族ですから。いいですよね?」
「勿論だよ。灰色の瞳の少年。心を読む能力者。」
「!!」
「知っているさ。君も監視対象だからね。ついてきてくれるなら嬉しい誤算だよ。」
「どうして知っている?」
「灰色の瞳は人の心を読む能力者の証。俺に教えてくれた人がいるだけだよ。」
「…。」
「そんなに警戒しなくても大丈夫さ。強い能力者は優遇されるからね。悪いようにはしないよ。」
次の日になり、私とアーマーとグレイが王家に行く日だ
アース音楽団のみんなに別れの挨拶をする
「アーマーはもう帰って来れないんだね…。」
とリリーが言う
「王家の人間だから。」
「ルナとグレイは帰ってくるんでしょう?」
「…うん。」
「待ってるから。すぐに帰ってきてね。」
と言ってリリーは私を抱きしめる
カイ、ホリー、ナイル、ジャッカルともハグして別れの挨拶をした
「またね。みんな。さようなら。」
私達はサテライト様の瞬間移動魔法で王家へと帰った
到着してすぐにアーマーは騎士団に捕まえられていた
魔力封じの手錠をされて連行されていく
「おかえり。ルナ。」
「…お久しぶりです。お父様。」
この国王様は穏やかに私達を迎えてくれた
アーマーは手荒く牢屋に連れて行かれたけど
「疲れただろう?ルナの部屋はそのまま残っているんだゆっくり休んでくれ。」
「いいえ。全く疲れていません。今すぐ話し合いをしましょう。」
「…いいのか?」
「はい。覚悟して帰ってきましたから。」
私は王室に案内されて話し合いの場を設けてもらう
「旅は楽しかったか?」
「ええ。それはもう。夢のような時間でした。」
「そうか…」
「ずっと旅して生きていきたいですね。」
「…。」
「黙ると言うことは知ってるんですね。私が何をしたか。」
「…サテライトから10年時を戻した話は聞いている。おそらく…ルナの力であると…」
「そうです。私がやりました。今回の戦争も…1度はサーキュラー街は火の海になり、アーマーは死んだんです。でも時間回帰してやり直しました。やり直した結果、敵軍は壊滅。サーキュラー街の死者はゼロ。アーマーも生きています。」
「…我が民を守ってくれてありがとう。感謝する。」
「私何も悪いことしてないですよね?国の為になりましたよね?」
「…。」
「また自由に旅をしてもいいですよね?」
「ここでの暮らしは不自由なく過ごせることを保証する。」
「私、アーマーのこと好きになっちゃったんですよね。死んじゃってから自覚して本当にバカなんですけど。」
「!?」
「アーマーと恋人になって結婚したいんです。」
「反逆の血筋と王家では結婚することはできない…。」
「そうですか。では私はアーマーが他の人と結婚して幸せになる姿をここで眺めていろってことですか?」
「…アーマー以外なら誰でも結婚してもいいから…」
「アーマーと結婚出来ないならここから出て行ってアース音楽団と一緒に旅をしたいんですが。」
「…危険な能力者を野放しには出来ない。私利私欲で使用する可能性がある。」
「嫌ですよ。ここから出してください。絶対に私利私欲で力を使いませんから。」
「…ルナは強制的にここで暮らす。これは決定事項だ。幸せな暮らしを保証するだから…」
「幸せになんてなりたくない。そう言って私が旅に出たこと忘れたのですか?」
「…。」
「私が求めているのは自由だけ。自由に生きたいだけ。こんな場所に閉じ込められて1度目の人生と変わらないじゃないですか。監禁されて監視されて…そんな生活絶対嫌。」
「幸せになれるように全力でサポートする!音楽だってやってもいいんだ!だから…」
「殺してください。」
「…は?」
「また生き地獄のような時間を過ごすのは嫌です。こんな所で閉じ込められていたら、いつかは反逆してお父様達を殺してしまうかもしれません。私はそんなことはしたくない。大事な人をお世話になった人を恨んだら憎んだりしたくないです。」
「何を言って…」
「私の人生本当に100点満点で幸せでした。思い残すことは何もありません。お父様やお母様を恨んで生きていくなら…今ここで反逆の血筋の末裔として殺してください。」
「ここで幸せに暮らしていくようにすると言っている!!」
「幸せになんてなりたくないと言っているんです。自由になれないなら死刑にしてください。」