第123話 運命の日
月日は流れて1年後
私達アース音楽団は喧嘩もしながら着実に力をつけてこの1年間でファンの人数は2倍になっていた
旅についてきてくれる熱狂的なファンも増えてきて
順調と言っていいだろう
幸せな旅がずっと続けばいいけれど
運命の日は近づいてきている
戦争が始まるまであと1か月
「けほっけほっ」
私は珍しく高熱を出して寝込んでいる
「ルナ…苦しそう…」
心配そうな顔でアーマーが私の看病をしてくれている
ここはサーキュラー街
今回はここでアース音楽団のライブを行う予定だけど
私が高熱で倒れてしまった為
今回のライブは参加出来なくなってしまった
「うぅ…今まで風邪なんて引いたことなかったのに…」
元気が取り柄だったのに
ライブが出来なくなるまで体調を崩すのは初めてだ
頭痛いし喉も痛いしフラフラするし最悪だ
「うぅぅ…辛い…しんどいよぉ…」
高熱なんて出たことない
1度目の人生でもこんなに風邪を引いて苦しくなったことないのに
こんなに苦しいのに本当によくなるのかな…
初めての高熱でメンタルが激弱になってしまっている
熱があるとわかった瞬間にアーマーが病院につれて行ってくれて風邪だと診断されし、薬も貰ったから大丈夫だとは思うけど…
「水をたくさん飲んでたくさん眠ったらよくなるって医者が言っていたよ。目を閉じて寝よう?」
「苦しくて眠れない…助けて…アーマー…」
アーマーは私の手を握ってくれる
「ずっとここにいるよ。安心して。」
私は安心して目を閉じる
体は苦しいけど
暖かい手の温もりを感じて
眠りにつくことが出来た
どれぐらい寝たのだろうか
目が覚めるとアーマーの姿はなく、私の手を握っているのはグレイだった
朝から寝ていたけれど、夕方になってしまっていた
グレイは私の手を握りながら椅子に座ってベッドに上半身よりかかって寝ていた
「フフッ。まだまだ寝顔はあどけないし可愛いのになぁ。」
背丈はもう私を越してしまってグレイは大きく成長した
3歳歳の差があるのに…成長期はおそろしい
私は優しくグレイの頭を撫でていると
バアアアアアアアアアアアアアアンンンン
光が閃光したかと思った瞬間激しい爆発音が鳴り
窓は割れ、辺りは爆発音と共に燃えていく
天井から瓦礫が落ちてきて
私はグレイを守るやうに咄嗟に覆い被さった
瓦礫が落ちてきた衝撃で私はそのまま意識を失った
死んだかと思っていたけれど、私は再び目を覚ました
「グレイ!!グレイ!!!」
私は手を握った先にいるグレイの安否を確認する
「ルナお母様…?」
「よ…よかった…!!グレイ!生きていたのね!」
「あ…」
グレイは絶望した顔で私の後ろを見ている
私が振り返ると
血塗れの姿で私とグレイを守っているアーマーがいた
「アーマー…?」
「愛してるルナ。愛している。」
か細くなった声を絞りだしてアーマーは私に言う
「逃げてくれ…生きて…ルナ…」
訳がわからない
なんでこんなことになったの
全身が震える
目の前のアーマーは数秒後に死んでしまいそうだった
「嫌に決まってる…アーマーを残して助かる命なんて嫌だよ…一緒にここで死のう。」
「グレイ!!ルナを連れて逃げろ!!早く!!瓦礫が崩れる前に!!」
グレイは私を抱えてこの場から逃げる
「いや!!アーマー!!アーマー!!!」
私は大粒の涙を溢して必死にアーマーを呼んだけれど
アーマーは満足したように微笑んで
瓦礫の山に呑まれていった
涙が止まらない
どうして…
どうして…アーマーが死んじゃった
グレイは私を安全な広場まで走って連れてきた
安全だとは言っても周りは火の海だし地獄そのものだ
「どうして…なんで…こんなことに…」
グレイが泣きながらそう呟く
「もう一度…やり直したい…。」
グレイは私の目を見てもう一度強く言った
「もう一度!!!やり直したい!!!」
時空が歪む
空間が歪む
世界が巻き戻っていく
気がつけば私はベッドの上にいて
アーマーが私の看病をしてくれている
「ルナ?気分はどう?」
優しく話しかけてくれるアーマーの姿に
私は動悸が止まらなくなる
どういうこと…?
今までのことは悪い夢だった…??
きっとそう…
私はアーマーを抱きしめる
先程の冷たくなっていくアーマーの姿ではなく温かみのあるアーマーに安堵する
よかった…夢だったんだ
熱が出てうなされていただけだったんだ…
バァン!!
と扉が開く
そこにはグレイの姿があった
「…逃げましょう。」
「え。」
「逃げますよ!!ここはもうすぐ戦争が始まり、爆撃に遭う!!アーマーの移動魔法でアース音楽団は早く逃げ出さないと!!」
どういうこと?
グレイは私と同じ夢を見ていたの…?
「何言って…」
「先程の出来事は夢ではありません!またアーマーお父様を死なせるつもりですか!?早く!!逃げますよ!!」
「だって…アーマーは生きてる…死んでない…」
「さっき1回死んだでしょう!?ルナお母様のタイムリープで生き返らせたんですよ!!早く逃げないと今度は全員死ぬかもしれません!とにかく話は後です!!逃げないと!!」
頭が混乱する
タイムリープ?
私が?
本当に?
さっきの出来事は夢じゃない…?
ふとアーマーの顔を見る
「やり直したい。」
とアーマーが言う
「え。」
「あれ?うーん…魔法の発動条件を満たしていないようだ。そうだな…」
アーマーはグレイの様子を観察してふむふむと頷き
アーマーの目に涙を溜めて
私の目を見てもう一度言った
「やり直したい。」
空間が歪む
時間が歪む
世界が巻き戻っていく
気がつけば私達は以前いたウォッカ街の宿にいた
「やっぱりルナがタイムリープしたんだね。発動条件もわかったし、1か月前までタイムリープさせたから説明する時間の余裕も確保したよ。」
「私が…タイムリープを…?」
「そう。さて。何があったか詳しく教えてね。」
色んなことが起こりすぎて頭が混乱する
とりあえずわかったことは
1度目のタイムリープも私の力で
今回の爆撃でアーマーは1度死んで
タイムリープさせて生き返らせたってことだ