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第十二話 運命の人

私が王家に養子に来て五年が経った。アーマーは週二回休みになったので、私とアーマーは色々な場所へ遊びに行った。春には約束した舟遊びをしたし、舞台を見に行ったり、森へ冒険に行ったりした。月に一回はお父様とお母様も一緒に出掛けた。四人で出掛ける時は買い物をした。

 五年間私も教育を受けた。剣術は楽しいけれど、全然センスがなかった。走り込みや筋トレもしたけれど全然体がついていかなかった。相手の隙を見て技を出すカウンターの技しか出来なかった。それでも剣をブンブン振り回すだけでも面白かった。

 学問も面白かった。一回目の人生では文字を読むことは出来たから、本を読むことはできたけれど、本格的な学問を学ぶ機会はなかったから初めて知る知識がたくさんあり、とても楽しかった。剣術よりは学問の方が優秀だった。

 そして一番力を入れて頑張ったのが音楽だった。バイオリンは今も一応触っているけれど全然ダメ。音が綺麗にいまだに弾くことが出来ない。

 ピアノはずっとやりたいと思ってたけど、出来なかったから、教えて貰えて本当に嬉しかった。弾ける曲がどんどん増えて楽しい。一番よく練習した。

 歌の授業が一番褒められた。聴きやすくて通る声らしい。音程もリズム感もよく、すぐに人前で歌えるレベルだと褒められた。元々歌うことは大好きだったから歌の授業も楽しかった。

 すっかりお嬢様育ちに慣れてしまった。一年後、王家を出て過ごすことは出来るのだろうか。お父様には私が望むならこのままずっとグリード家として暮らしてもいいんだよと言われている。正直、王家で過ごすことが嫌なイメージしかなかったらそういう約束をしたけれど、ここでの暮らしは本当に充実していて幸せだった。孤児院育ちの私を偏見もなく、お父様もお母様もアーマーも使用人のみんなも暖かく迎えてくれた。

 一回目の人生で閉じ込められて過ごした日々とは全く違った。このままグリード家として生きていけば幸せな人生を送ることができるだろう。

 でもやっぱり私は自由が好き。不安もたくさんあるけれど、この家を出て音楽家として生きていくことが今の私の夢。今はその夢を叶える為に頑張っている。

 

 

 「今日アーマーの婚約者が来るの?」

 「うん。婚約者といっても形だけだよ。必要ないと言ったのにお母様が王族の義務だと言って聞いてくれなかったんだ。最悪だよ。」

 「婚約者って誰なの?」

 「スチュード・サテライトだよ。」

 やっぱり!サテライト様だ!今日会えるのかな?話せるかな?サテライト様は覚えているだろうか。十年間時間が戻ったことを。会いたい。早く会いたい!

 「……ルナ?どうしたの?サテライトを知ってるの?」

 「え!?いや全然知らないよ?」

 今の私が知ってたらおかしいもんね。

 「アーマーはなんで婚約者に会いたくないの?めちゃくちゃ可愛い女の子かもしれないじゃん。」

 実際にめちゃくちゃ可愛い女の子で、しかも美人に成長する。顔の好みなら正直聖女のカリン様よりサテライト様派だ。

 「関係ないよ。結婚なんかしないから。」

 かなりイラついた様子のアーマー。最近は感情が表に出ることがよく出てきた。かなり不機嫌だから怖気付いてしまう。

 「そうなんだ…。」

 あまり触れられたくないのだろう。触らぬ神に祟りなし。

 グイッと顎クイをされてアーマーが顔を近づけてきた。

 「俺は婚約者に会うの。」

 「うん。」

 「なんとも思わないの?」

 「私も会いたいなと思ってるよ?」

 チッとアーマーが舌打ちをして去って行く。なんだ?今日は特別機嫌が悪そう。時々よくわからないタイミングでもの凄く怒るんだよね。

 そんなことよりサテライト様がこの屋敷に来る!私の恩人で運命の人だ!感謝してもしきれない恩がサテライト様にはある。覚えてくれてるかな。早く会って確かめたい。

 約束の時間になり、サテライト様は馬車に乗って屋敷に来てくれた。お父様、お母様、アーマー、私で出迎える。サテライト様はサテライトのお父様と一緒に来た。二回目の人生で初めて会うサテライト様は本当に可愛くて見惚れてしまった。でも元気がないような顔をしていた。みんなが自己紹介をするので私もサテライト様に自己紹介をする。夢見たい。サテライト様に会ってお話しできるだなんて思ってもいなかった。私とお母様は挨拶だけすませて、自室に帰るように言われたので帰った。お父様とアーマー、サテライト様とサテライト様のお父様でティータイムをして親睦を深めるらしい。

 私は自室ではなく、庭園で行われているティータイムが覗けてバレない二階の場所から覗こうとしていた。

 「ガリバー!双眼鏡持って来て!」

 「ルナお嬢様〜。人のお見合いを覗き見するなんて趣味悪いですよ。やめましょうよ〜。」

 「バレなければ罪じゃないから!」

 「バレなかったことなんかないじゃないですか…。」

 「いいから双眼鏡は!?どこ!?」

 「これです…。」

 「ありがとう!」

 私は双眼鏡を覗いてサテライト様を観察する。ハァ〜。本当に可愛い〜。でもずっと俯いて悲しい顔をしてる。これは十五年前の出来事を覚えていて、アーマーと婚約すればまた、アーマーに浮気されてしかも処刑されてしまうという運命を知っているからじゃない!?やっぱりサテライト様は覚えている気がする!

 なんとか恩返しがしたい。今の生活が出来ているのはサテライト様のお陰なんだから。やっぱり婚約破棄を狙ってるのかな?アーマーも望んでなさそうだったし、意外と成功しそうだけどなぁ。

 「ルナお嬢様なんでそんなにサテライト様が気になるんですか?」

 「運命の人だから!」

 「さっき初めて会ったのに?」

 「そうよ!ビビッときたんだから!」

 「ルナお嬢様は恋愛対象が女性なんですか?」

 「うるさいわね。恋をするのに男も女も関係でしょう!?」

 「つまりどっちもいけると…。」

 「あっ!終わったみたい!!あれ?アーマーとサテライト様だけ移動するようだわ。庭園を散歩するみたい!チャンスよ!!庭園へ行くわよ!」

 「二人の仲を深める為に二人で散歩するようですが…。」

 「あの二人どっちも結婚する気がないからいいのよー」

 「なんでそんな決めつけを…」

 そう言いながらも私と一緒に庭園に移動するガリバー。庭園へ行くと散歩している二人を見つけた。私は二人に声を掛ける。

 「アーマー。サテライト様。ご機嫌よう。散歩日和ですね。」

 「ルナ?会いにきてくれたの?本当に退屈で帰りたかったんだ。もう帰るよ。」

 「いや、あの、、実は私サテライト様と二人で話したいことがあって…。」

 「なんで?二人だけなんてダメに決まってるじゃん。」

 「アーマーお願い!どうしても話がしたいの!」

 「ダメだ。」

 サテライト様は私達のやりとりを黙って俯いたまま聞いていた。

 私はずっと聞きたかったことをサテライト様に聞く。

 「あのっ。サテライト様は覚えていますか?十五年前のマリーン噴水広場のことを!」

 十五年前、サテライト様が処刑された場所がマリーン噴水広場だ。覚えていたら何かしら反応をしてくれるはず。

 「貴方…覚えているの…?」

 やっぱりそうだ!サテライト様は覚えている!

 「はい!あの…二人で話ませんか?」

 「アーマー様、私ルナ様とお話がしたいです。少しでも構いません。二人きりにして頂けませんか?」

 「ダメだ。何故さっき会ったばかりなのに話すことがあるんだ?十五年前のマリーン噴水広場はなんのことだ?ちゃんと説明してくれないと…」

 アーマーが話をしている途中で私はサテライト様に手を握られた。その瞬間私とサテライト様は屋敷の部屋へ移動していた。

 「え!?」

 「フフフッ。私ね。瞬間移動の魔法が得意なの。」

 まだ十四歳のはずなのに凄い高度な魔法が使えるんだ……。やっぱりサテライト様は凄い!!

 「じゃあゆっくり話しましょうよ。十五年前の昔話をね。」

 

 

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