第110話 ボランティア
「ねぇ。私天才的にすごいこと思いついたかも。」
と私はホリーに言う
「うーん。ルナの思いつきなんて嫌な予感しかしないねぇ。」
「ドミノさんのワンマンライブ凄いよかったじゃない?」
「そうだね。人のライブを見るのは新鮮だし面白かったよ。観客になって野次を飛ばすことはこんなにも楽しいだなんてね。」
「あの人材をこのまま腐らせるのはあまりにも惜しいと思わない?」
「まさかアース音楽団にスカウトするつもり?無理だと思うけど。いくらルナの頼みでもジャッカルはアース音楽団には入れないと思うけど。」
「違うわよ!いくら私でもそんな無謀なことしないわよ!」
「グレイを拾ってきて強引に仲間にした人間のくせに常識人のフリはもう無理があるよ。」
「さっきから言葉に棘がありすぎるよ!!やめてよね!この町でドミノさんに人前で歌わせる方法を思いついたの!!」
「ほうほう。」
「協力してくれるよね?」
「え?なんで俺が?」
「ドミノさんの為に!!」
「俺は自分にメリットがないと動けない人間だ。」
「ちゃっかりしてるなぁ…何が望みなの?」
「お守りが欲しい。」
「いいけど…自分で買えばいいんじゃないの?」
「ルナ知らないの?お守りって自分で買うものじゃないんだよ。人から貰うから効力があるんだよ。」
「そうなの?知らなかった。」
「約束だよ?」
純粋な眼差しをするホリーが可愛くて思わずよしよしと頭を撫でる
もっと大金をふっかけられると思っていたのに
なんて可愛いお願いなんだ
ホリーは仕返しのように私の頭をわしゃわしゃと犬のように撫で回した
その後、私達は2人でドミノさんの家に尋ねる
「たのもーー!!」
と私はドミノさんの家をノックする
「どうしたんですか…?今日はギター練習はない日のはずですが…」
「ちょっとしたボランティアを手伝って欲しくて。」
「ボランティアですか?何をするんですか?」
「行けばわかります!」
私は強引にドミノさんの手を引いて連れ出した
バスにのり、暫く歩くと目的地に着いた
「孤児院?」
「はい!ここで子供相手にボランティアでライブをして貰おうと思って!」
「俺ギター持ってきてないけど…」
「大丈夫です!私のギターがありますから!」
私達は“すみませーん”と声をかけて孤児院に入る
突然の訪問者に子供達は戸惑っていた
小さな女の子に案内をして貰って私達はシスターの元へと行く
「こんにちは!突然すみません!子供達相手に演奏したいのですが…いいですか?」
「はぁ…別に勝手にすれば?」
とシスターがぶっきらぼうに答える
私達は教会でライブを行うことになった
「愛想ないね。ここのシスター。」
と小声でホリーが言う
「ここの孤児院清掃が行き届いてないし、子供達もみんな華奢で健康的じゃないし、待遇悪そうだよね。」
「その割にシスターは羽振りよさそうだったよね。ブランドのバック使ってたよ。」
「そうなの?じゃあ孤児院のお金横領してるかもね。」
「ひどいね。」
「これだから権力者は嫌いなのよ。」
私とホリーは小声でシスターの悪口を言いながら移動する
教会に着き、私達はライブの準備をする
教会にはピアノがあり
ホリーはトランペットを持ってきていた
私達は演奏出来るように準備をしていると
「…え?俺だけじゃないの?ルナとドミノもやるの?」
「うん。ちょうどよいピアノがあるからね。」
「俺は元々孤児院の聖歌隊のトランペットをやっていたからね。久しぶりにやりたくなって。」
「合わせたりしてないけど…」
「昨日弾いた曲なら即興で合わせられるよ。ね?ホリー。」
「うん。」
「…凄いですね。」
「これでもプロですから!」
「ジャッカルにバレたら怒られるかもしれないから内緒にしてくださいね。」
即興セッションの準備が出来たので孤児院の子供達を呼んで集合させた
ここの子供達は扱いが悪く、演奏を聴くのも初めてのようで目をキラキラさせて楽しみにしてくれていた
そして…ドミノさんが演奏を始めて私達は合わせて演奏をする
ドミノさんの曲は私と違って万人受けする曲だ
子供達の感触もよく
みんな聴き入っていた
昨日弾いた5曲全てを演奏した
子供達は大喜びで拍手喝采してくれた
その後、遊びで私はピアノの弾き語りをする
クラウドお兄ちゃんがピアノを弾いて私達を喜ばせてくれたことを思い出す
懐かしい
元気にしてるかなクラウドお兄ちゃん
「終わった?じゃあもう帰ってくれる?」
とシスターがこちらに来て言う
「…はい。突然お邪魔して申し訳ございません。ありがとうございました。」
と私が言う
「はぁ…どうせここの子供なんて無能しかいない未来のない子供なんだからこんなことしても無駄なのにね。」
「…。」
「死ぬまで奴隷のような人生しか歩めない子供達に希望なんて見せても残酷だと思うけどね。なんの意味があるのかね。こんなボランティアに。」
…本当に胸糞悪い
これだから権力者は大嫌い
弱い立場の人間を物のように扱う
私の孤児院はシスターがいい人だったからこんなに酷い状況じゃなかったけれど
世の中の孤児院なんてこんな酷い場所たくさんある
未来ある子供達にこんなこと言うなんて
本当に酷い
私は一言文句言おうとすると
ドスッ
と目の前でシスターはドミノさんに腹を殴られていた
「いったい…何をするんですか!?」
「悪魔がいたので悪霊退散しただけです。」
「暴力なんて…神は許しませんよ!!」
「うっせえ!このエセシスター!!子供達を大切にしないやつが孤児院で働くんじゃねぇ!!今すぐに辞めろ!」
「な…!!そんなこと出来るわけないでしょう!?」
「出来ねぇなら今ここで俺がお前を殴り殺す!!」
「ひぇ…や…やめて…わ…たしが辞めたらここの孤児院のシスターは誰もいないですけど…」
「俺が今日からシスターになる!!お前は出ていけ!!この悪魔!!」
「そうだ!出ていけ!悪魔め!」
「出ていけ!!出ていけ!!!」
と子供達が声を上げてシスターに言う
シスターは顔を真っ赤にして出て行ってしまった
「ブッ!!アハハハハ!!!やばすぎ!!シスター追い出しちゃったじゃん!ドミノさん!!」
「無我夢中になっちゃって…俺、死ぬかな?」
「大丈夫大丈夫。これからはドミノさんがここのシスターになってここの子供達守ってあげてね。」
「何故こんなことになったんだ…!!」
「自分でシスター殴ったくせに何言ってんだ。誰よりもロック魂持ってるじゃん。さすがライトの師匠様だね!!」
「いやだって見逃せなくない?これは!!」
「うん。ありがとう。ドミノさん。」
見逃さないでくれて
助けてくれてありがとう
「世界一かっこいいロックなシスターになってね。」