第100話 ライトの師匠
私達はヤーレン街でのファーストライブを終えてファンミーティングを行っていた
「ルナ。とても素晴らしいロックだったよ。」
と声を掛けてくれたのはドミノさんだった
「来てくれてありがとうございます!!ライトから教わったロック魂を届けることが出来てよかったです〜。」
「もうすっかりルナのファンになっちゃったよ。次のライブも必ず来るね。」
「嬉しい〜!ありがとうございます!次のライブの前に今度は私から会いに行ってもいいですか?ライトの昔話とか聞きたいです!」
「いいね。私も思い出話に花を咲かせたいよ。」
「明日一緒にご飯行きましょう!」
「仕事の昼休憩の間だけになるけどいいかな?」
「はい!」
「じゃあ花の広場で明日の12時に待ち合わせでいいかな?」
「はい!楽しみにしています!!」
次の日になり私はドミノさんとの待ち合わせに行こうとすると
「おい。なに1人で出掛けようとしてんだよ。」
とカイに声を掛けられた
「1人じゃないもん。知人と待ち合わせしてお昼ご飯を食べるのよ。」
「どこで?」
「知らないけど。」
「待ち合わせの場所は?」
「花の広場だよ。」
「花の広場まで1人で行くつもりか?」
「そうだよ。」
「ダメだ。」
「えぇ〜…いいじゃん別に。ここから歩いて5分ぐらいだよ?」
「お前は…トイレに行っただけで襲われたことを忘れたのか?5分もあれば誘拐されて殺されるぞ。」
「過保護すぎるよ。」
「お前が危機感なさすぎる。」
「じゃあついてきてよ。」
「なんで俺が…」
「じゃあ1人で行ってくるから。」
「チッ…わかったよ。」
とても不本意そうにカイは花の広場へとついて来てくれることになった
5分はあっという間で早めに私達は待ち合わせ場所に着いた
「だいたい1人で出歩くことはジャッカルから禁止されているはずだ。」
「だから1人じゃないって…」
「花の広場までは1人なんだろう?お前みたいな小さい女のなんて抱えられてすぐに誘拐されるぞ。」
「私はもう13歳だよ?そんな簡単に…」
私が言い終わる前にカイは私のことをひょいと持ち上げてしまった
「ほら。すぐに持ち上がる。」
「…。」
「まだまだお子様なんだから保護者同伴してもらえ。」
「もう子供じゃないもん!」
「そのセリフが子供なんだよ。バーカ。」
「もう!降ろしてよ!バカカイ!!」
「ルナさぁ…あんなにケーキ食べてるくせに軽すぎん?」
「普段の食事はたくさん食べないもの。少食だよ。」
「ケーキばっか食べないで栄養あるもの食べろよ。大きくなれないぞ?」
「うるさいなぁ!子供なんだから好きなものたくさん食べて何が悪いのよ!」
「さっきは子供じゃないとか言ってたくせに。」
「大人でもなくて子供でもないお年頃なんですー!」
カイは私を赤ちゃんを高い高いするかのように持ち上げたまま話す
「あの…楽しそうなところ申し訳ないです…。」
そう言ってドミノさんが声を掛けてくれた
「ドミノさん!すみません!この人過保護でついて行くって聞かなくて…」
「ふざけんな!俺だってこんな子守役2度とごめんだね!」
「えっと…恋人?仲良いね。」
「「違います!!」」
私達は声を揃えて答える
「ルナが前の街で襲われたので1人で出歩かないように監視しないといけないんです。」
「そうだったんですね…では3人でお昼を食べに行きますか。」
「はあ?何で俺が。店までルナを送ったら俺は店には入らないよ。2人でどうぞ楽しできてくれ。」
「そんな!遠慮しないで一緒に行きましょうよ!」
「遠慮なんてしていない。ライトとかいう男は俺は全然知らねぇし。そんな話聞いて面白いと思うわけないし。興味ねぇから。」
「そうでしたか…では俺達2人で食事に行きますね。」
「何時に終わる?」
「え?」
「何時に終わるか聞いてるんだけど。」
「えっと…お昼休憩時間だけなので13時には終わります。」
「わかった。その時間になったら迎えに行く。」
「えぇ!?大丈夫ですよ!俺がルナを宿まで送り届けますから!」
「信用ならない。ルナに何かあったら困るだけだから。13時に迎えに来る。わかったな。」
「はい…。」
そう言ってレストランまでカイついてきたが、帰ってしまった
「カイ君ってツンデレだね。」
「え?あんなのただの偏屈野郎ですよ。」
「ルナはカイ君に大事にされているんだね。」
「雑にしか扱われたことないですけど…」
私達は席についてビーフシチューを注文して料理が届く
2人で食べながらライトの話をした
「ライトとはどういう関係なんですか?」
「底辺貴族仲間だよ。パーティでたまたま知り合って俺が音楽をやっていることをどこから聞いたのかわからないけれど“俺にギターを教えて欲しい!”と声を掛けられたんだ。」
「へぇ〜!!ライトって何歳からギターやってたんですか?」
「4歳だったかな?」
「えぇ!?はやっ!!」
「ルナが持っている赤のギターはライトが4歳の頃使っていたギターだよ。」
「えええ!!本当ですか!?」
「うん。懐かしいなぁ。」
「ドミノさんがライトにギターを教えていたんですよね?ドミノさんも凄くお上手なんですか?」
「昔の話だよ。没落して平民になってからはもうギターは弾いていないからね。下手くそだよ。」
「え?なんで辞めちゃったんですか?」
「仕事が忙しくて…」
「転職したらどうです?」
「今の仕事気に入ってるから…」
「ギター出来ないのに?」
「…俺がギターばっかりやってたから没落したんだ。だから…」
「それで平民になって自由になったんでしょう?じゃあもう誰も文句言う人いないじゃないですか。」
「俺のせいでたくさんの人間が路頭に迷った。」
「だからなんですか?関係ないでしょ。ギターもやらせてくれない貴族なんて没落して当然だと思いますけど。音楽させてくれない人間を全員地獄に堕とせてよかったですね。そんなくだらない人間を擁護する必要ないですよ。ハッピーエンドです。」
「失業させたのに?」
「失業したぐらいで人生終わるわけないじゃないですか。みんな新しい人生を意外と楽しんでますよ。」
「そうじゃない人だっているかも…」
「それはその人が無能だっただけでドミノさんは関係ありません。」
「俺のせいで…」
「ドミノのせいじゃない。音楽やっててダメな理由なんてこの世に存在しない。」
「無茶苦茶言うね…。」
「そう?当たり前だと思うけど。とにかくそんなことでギター辞めたらライトも泣いちゃいますよ?」
「俺がギターやっていいんだろうか。」
「もちろんですよ。明日は私にギター教えてくださいね。あとベースも弾けますか?ベースも教えて欲しいんですけど。」
「凄いぐいぐいくるね…」
「私、未だにギターが下手って言われるんです。だからあいつらに見返したくて…」
「俺で良ければ教えるよ。ギターもベースも。」
「本当ですか!?わーい!!ありがとうございます!!」