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第一話 タイムリープ

幸せってなんだろう。

豪華な食事。綺麗なドレス。キラキラとした宝石。

夫に愛される人生。

みんなから羨ましいとされる人生。

私がおかしいのかな?

私は…硬いパンが好き。

 

 

「ルナ!今日は聖女様を殺そうとした悪女サテライトの処刑日だ!」

「そうなんですね。」

「なんだ?興味ないのか?ルナ。」

「そうですね。あまり詳しくないです。」

「サテライトはこの国の王太子アーマー様の婚約者だったんだ。でもアーマー様は戦時中に聖女カリン様と恋仲になって帰ってきた。そのことに嫉妬したサテライトが聖女カリン様を毒殺しようとしたんだよ!」

「わぁ…ドロドロの展開ですね…」

「そうだろう?聖女カリン様はたくさんの命を救った英雄なのに嫉妬で殺そうとするなんてとんでもねぇ悪女だぜ!」

「でも確か結婚は予定通りサテライト様とするってこの前号外で読んだけど。」

「どうせ汚い手を使ってカリン様との仲を切り裂いたんだろう。」

「ふーん。」

「なぁ!今日見に行こうぜ!サテライトの処刑!!」

「え。嫌です。」

「なんでだよー」

「悪女とはいえ人が死ぬ瞬間なんてみたくないですよ。悪趣味です。」

「悪の化身が正義の鉄槌により裁きを受けるんだよ!サテライトは人間じゃねぇから大丈夫だよ!」

「誰からみてもサテライトは人間ですよ。」

「いいから!行くぜ!!」

 そう言って私の手を引っ張って連れ出す。

「わかりましたよ…」

処刑は近くにあるマリーン噴水広場で行われるようだ。広場に着くともう既に千人近くの人々が集まっていた。みんな悪女の処刑を心待ちにしている。戦争を勝利に貢献した聖女カリンのことがみんな好きみたいだ。カリン様とアーマー様が結婚することを望んでいる。戦争から帰った後、恋人のように寄り添って帰還した姿は今も民衆の心に残っている。サテライトは悪の象徴でしかないようだ。それにしても暑い。こんな真夏日に処刑するなんて民衆の誰かは倒れるだろうな。

 誰がというか私が

「スミス様。暑いです…日陰で待っていてもいいですか?」

「ダメだ。そんなこと言ってまた逃走するつもりなんだろう。」

 恐ろしい口調で言われる

「そんな昔の話ですよ…逃げたしたりなんかしません。暑さで倒れそうなんです。」

「ダメだ。絶対に手を離すなよ。」

私はスミス様の愛人が嫌で何回か逃走しようとしたことがある。二年前の話だけど。その後も私に自由はなかった。常に監視をされて監禁されていた。今日だって外に出たのは半年ぶりぐらいだ。でも今日は外に出たくなかったな。人の処刑をこんな暑い中見ないといけないなんて…

…それでも家の中よりはマシか。暑いお日様の熱をどうせだから満喫しよう。どうせほとんど外なんか出れないんだから。

 野次馬がさらに集まり、処刑が始まる時には三千人ぐらいいた。この町の人々だけではなく、わざわざ電車に乗って見に来た物好きもいるみたいだ。

 「これより聖女毒殺の容疑でスチュード・サテライトを処刑する。」

 アーマー様が声高らかに宣言する。その隣には聖女カリン様も一緒だった。

 サテライト様が引きづられる処刑台に連れて来られる。

 「アーマー様!私は王家に誓って毒殺等やっておりません!!」

 サテライトが大声で無実を主張する。

 野次馬が見苦しいぞ!早く死ぬ!悪女め!!と野次を飛ばす。

 「聖女様に嵌められたのです!私は毒殺なんてやってない!アーマー様信じて下さい!!お願い…助けて……」

 ……サテライト様やってないんだろうな。本当に聖女様が嵌めたのかはわからないけどこの人はやってない。冤罪で処刑とか本当に来るんじゃなかった。可哀想すぎる……家柄もよく、美貌もいいサテライト様を味方してくれる人はいなかったのだろうか。どの世界にも理不尽はあるんだな。結局権力がある奴が正義なんだ。まだまだ若いのに…こんなに可愛い女の子なのに…なんでこんな誹謗中傷を浴びせられながら見せ物のように殺されなければならないんだろう。

 サテライト様は絶望した顔で涙をぼろぼろと流している。処刑台に首が置かれた。

 「やり直したい…こんな人生あんまりだわ…もう一度…やり直したい!!」

 サテライト様の目には涙が溢れているが、力強い言葉だった。その言葉に私も泣いてしまう。そして…サテライト様と目が合ったその瞬間。

 急に次元が歪み目の前の景色がぐるぐるとした。暑さと人混みで眩暈がしたのだろうか。目の前がぐるぐるしていて気持ちが悪くなってきたので暫く目を閉じた。一分ぐらいだろうか。眩暈が治ったので目を開けると

 

 雪景色だった。

 

 

 何が起きたのかよく分からず呆然と立っていた。あんなに真夏日だったのに急に雪?ありえない…。

 それにここは処刑台のマリーン噴水広場じゃない。誰かが魔法を使ったのだろうか?幻覚?何のために…?

 

 

 「おーい!!なに突っ立ってんだよ!早くこっち来いよ!!」

 

 誰かが私を読んでいる。振り返ると子供の時によく遊んだパンプキンがいた。

 「パンプキン?」

 「なんだ?」

 「本当にパンプキンなの?」

 「お前いきなりどうした?俺はずっとパンプキンだよ。」

 思わず抱きしめる。涙が止まらない。夢でもいい。もう一度会えるなんて思わなかった。

 「パンプキン…会いたかった…」

 「ちょ!!なんだ!!気持ち悪い!!シスター!!ルナの頭がおかしくなった!!」

 シスター?もしかして…目の前に現れたのは孤児院で母親代わりに育ててくれたクリスシスターがいる。

 「クリスシスター!!」

 泣きながら駆け寄り抱きしめる。

 「会いたかったです…本当に…」

 「ルナ?毎日会ってるでしょ?どうしたの?」

 戸惑いながらも私を抱きしめてくれた。

 暖かい。懐かしい。ここは…十年前、私が育った孤児院だ。奇跡だ。サテライト様が十年前に戻して下さった。


 



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