柴犬殿下と私の距離?
初顔合わせで会ったのは
枯草色の短い髪
警戒心が見え見えの
幼い王子様だった
用心してるその距離が
ずっと飼ってみたかった
柴犬っぽく見えちゃって
私はにっこり微笑んだ
前世の記憶がある私
ここは異世界 貴族社会
柴犬とかはいないから
婚約者様が私の癒し
時々茶会で会うたびに
ガルルル少年 可愛くて
心地良い場所保つよに
気をつけていたら少しずつ
解れて来たの あなたの態度
「僕は小柄すぎるから
兄と比べて 頼りないだろ」
「そんなことはありません
俊敏果敢なシルヴァン様
常に努力を重ねてらして
私はいつも尊敬してるわ」
「つまらない 僕の瞳は濃茶褐色
王族なのに 地味すぎる」
「とても綺麗で 私は大好き
優しく深い色合いで
ずっと見つめていたいもの」
ぽつり呟く不安はいつも
私がみれば 素敵な美点
褒めると彼は 不機嫌に
そっぽを向いて目を逸らす
高いプライド自立心 素直と真逆の佇まい
何もかもが愛しくて
許される距離 寄り添った
春には花を
夏には小川
秋には夕空
冬には暖炉
季節それぞれ 楽しんで
同じ景色を語って過ごす
このまま一緒に末永く
年を重ねていくのだと
信じてたのに 驚きの
手紙が届いた私のもとに
"婚約解消 願い出る"
「どうして私が嫌になった?」
私は即座に押しかけて
距離も忘れて詰め寄った
「違うよ、アリス
僕、今度
兄に代わって戦争に
赴くことになったんだ
何年かかるか分からない
それまできみを 縛れない」
苦しく吐露する本音を聞いて
迷うことなく答えたわ
「それなら待つわ いつまでも
あなたの無事を祈りつつ
お手紙書くわ 戻るまで」
婚約続行そのままで
私は彼を待ち続ける
シバちゃんシバちゃん
私のシルヴァン
心の中の秘密の呼び名
物資差し入れ 手紙を添える
"生きてるだけで あなたの勝ちよ
きっと元気で帰って来てね"
そうして月日が経ったのち
戦勝ラッパと凱旋パレード
婚約者様が帰還した
シバちゃんシバちゃん
私のシルヴァン
私の愛した柴犬殿下
一体どちらに?見当たらない
探して回る 私の目には
すっくと立った凛々しい騎士様
「帰って来たよ 大事なアリス」
悍威に富んで落ち着いた
優しい声と熱いまなざし
ぐっと育った小さな仔犬
今は立派な大人の男性
シバちゃんシバちゃんいつの間に
艶めく青年 変身したの?
私の知ってる彼じゃない
驚き固まり止まっていたら
シルヴァン殿下が微笑んだ
「懐かしいな そんなきみ
初めて出会ったその日に思った
子リスみたいに固まる娘だと」
これは心外 新事実
まさかの殿下は私のことを
リスみたいだと思ってた?
確かに名前もリスだわ"アリス"
これで不問ね 不敬の罪は
私の中でシルヴァン様は
距離感個性な柴犬だった
小型のはずの柴ワンコ
今ではすっかり大型犬?
いいえ私が子リスなら
この体格差は正常かしら
高い体温 腕の中
たくましい彼に抱かれて
子リスのチューは 口チューよ
まん丸見開くワンコの目
お返し来るとは思わずに
再び私は固まった
春には風を
夏には陽光
秋には大地
冬には星を
しっかりじっくり味わって
歩いていくわ 私たち
ずっと傍で
寄り添いあいながら
お読みいただき有難うございました!
スマホがやたらと「柴犬記事」を私に推してくるのです(笑)
「なぜ」と思いつつ毎回見ていたら、毎日のように"柴犬便り"が届くようになりまして(;´∀`)
飼ったことないのでわからないのですけど、とっても個性的な犬種なのですね♪
"柴キョリ"というのが、すごい独特で思わず話に書きました。
本当は短編で書きたかったのですが、ワンコの習性に詳しくないので物語詩です。
感想欄等で、柴犬ってこんなだよ、とか教えてくださったら、いつか短編になるかもしれません(笑) が、今回は気軽にお楽しみいただけましたら幸いですヾ(*´∀`*)ノ
取り急ぎの絵、あとで変える…かも?
-✧-✧-✧-✧-✧-✧-✧-2025/02/17追記
「殿下、そろそろお戻りになりませんと。会議の時間が来てしまいます」
「ん……、もう少しアリスを感じてから」
(困った。これが有名な"拒否柴"というやつかしら)
シルヴァン殿下とお散歩を楽しんだ後、ほどよい木陰でのお昼寝にお誘いしたら、日々の公務でお疲れだったのか、私の隣であっさりとお休みに……。
……なられただけでなく、すっごくくっつかれているのですが?
遠征から戻られた後、殿下は婚約者に対して、距離を遠慮されなくなった。
はっきり言えば、めっちゃ詰めて来られるようになった。
今まで長く離れていた分、それはそれで嬉しく愛おしいけど、公務に遅刻させてしまうようでは婚約者失格だ。
(いつもはもっと、ご自身を律してらっしゃる方なのに)
甘えてきてくださるのは、夢うつつだから?
なんにせよ。
(重……!)
ダメだわ、びくともしない。
上半身でも無理やり持ち上げたら、目覚めてくださるかと思っているのに。
(これはもしや、"不動柴"!)
ガンとして動かない、そんな"柴"形態があるらしい。
(いえ、違うわね。意志の硬さで断固拒否する拒否柴や不動柴と違って、殿下はただ寝ぼけてらっしゃるだけだもの)
でもそういう時って、確か柴犬を抱っこして持ち上げて移動させてたような……。
「ふむっ、ふむむっ」
私が必死で力を出してた時だった。
「くっ……」
こらえきれないように殿下が肩を揺らし、そのまま。
「くはははは」
思い切り笑い出した。
「っつ、殿下ぁぁぁ! とっくに起きてらっしゃいましたね? 私をからかってたのでしょう!」
「ごめん。ごめんよ、アリス。キミがあまりにも可愛いことばかりしてるから、ついこの先どうなるかなと気になっただけなんだ」
「そういうのを、からかうというのです! もうっ、知りません、殿下。明日は独りでお散歩なさいませ」
「一人でなら、わざわざ散歩の時間なんて取らな……」
「え?」
「いや。謝るから、機嫌を直しておくれ。ほら、そんなに頬袋を膨らませてないで」
「ひっどい! 謝る気あります? 私、頬袋なんてありません」
殿下はやっぱり、成長されても茶目っ気だらけの柴犬だと思うわ。
ついつい許してしまうのも、そのせいよね。わんっ!
※健気なアリスの方が柴犬っぽいというお言葉いただいてます(笑)あれ?