浮かび上がる記憶をしみじみと。
時折、脳裏に浮かびあがる、記憶がある。
なぜか、ふいに思い出される…過去の出来事。
経験したことがないのに…思い出す。
……なぜ、わたしは、思い出すのだろう?
確かに未経験の、出来事。
はっきりしない顔の、誰か。
いつも、不思議に思う。
いつも、胸がざわつく。
いつも、困惑する。
全く知らないはずの、謎の記憶。
さも自分自身が経験したような、謎の既視感。
……本当に、わたしはいったい、何を…思い出しているんだろうね?
真相は、おそらく……。
わたしの中の、誰かの…欠片。
何となく、胸が痛いのは。
何となく、逃げ出したくなるのは。
何となく、悲しくなれるのは。
何となく、潰されてしまいそうに思うのは。
何となく、失うことを予感するのは。
わたしの中に消えていった、誰かの…名残りなんだろう。
記憶が浮かぶたびに…時の流れを感じる。
記憶が浮かぶたびに…居た堪れなくなる。
記憶が浮かぶたびに…自身の在り方を考える。
記憶が浮かぶことに…幸せを感じては、いる。
感情って、こういうものなんだ。
人間って、こんなふうにもがくものなんだ。
命って、こんなにもいろんなことを残せるんだ。
この身のうちに消えてはしまったが…きっと、意味があることだったのだろう。
これからも、いっぱい、いっぱい…思い出せることを、期待する。
いっぱい、いっぱい…いろんな記憶を、思い出せるといいな。
わたしは、目の前で震える肉を。
ひ と く ち で 。