こんな朝には
こんな朝には
歯は磨いた
目には目薬
服は家着に着替えた
水を一杯口と喉を潤す
顔は洗っていない
お化粧はもちろんしていない
テーブルに座ると正面と左側に1.5メートル四方の大きな窓が
朝を迎える
数十種類の野鳥とシマリス、茶褐色の小リス、大きな銀白色のリスが
結構仲良くあわやひまわりの種や殻付きピーナッツを食べている
食べ終わると高い杉林の中へ消えていく
やわらかなちょっと物悲しい鳩の鳴き声が朝の森のどこかから聞こえてくる
悲しげなのになぜか癒される
ソメイヨシノは萌葱色の葉桜に変わりつつ
ピンク色の花吹雪の舞いを見せながら最後まで優雅に
真紅の椿が奥深くに隠していた黄金の冠を見せびらかすのは
しなやかで可憐な桜の木の下
真紅の椿の大輪はジャンヌダルクのように堂々と咲いている
コーヒーを数杯ブラックで
トーストも目玉焼きもサラダもない
どうして穴があいているのかドーナッツ
穴があいていても1日は1日でそれなりに味がある・・ということ
それとも穴がなければただの揚げパンになってしまうのが嫌なぐらいに気位が高い?
桜舞う朝の庭
こんな朝があるなんてすっかり忘れていた
時間に流されることなく時間を担う
宇宙を我が物とできる瞬間
生活や仕事からの開放感
ゆっくりと味わえる一杯のコーヒー
のんびりと眺める空間
こんな朝には
透明な大きな羽を開き
真っ直ぐに空を目指して飛び上がる




