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三寒四温と桜
芝生に霜が降りる日に、日中の気温が20度に上がるまさしく三寒四温の初春。毎日少しずつ膨らんでいる桜の蕾にぞくぞくと喜びを感じる。私はこうして待っている時が好きだ。1分咲き、2分咲き、恥じらうかのようにゆっくりと美しさがほどけていく。少しずつふっくらと蕾が膨らみ、一枚一枚ていねいに花弁が開いていく。命とは、美しさとは、こうして時間をかけて生きていくことなのだ。集中し、全ての労力と時間を費やし、神々しい香りを小さな膨らみの中で熟させ、そして暖まった空気の中へはきだす。
クローンされた同じ花のように見えても、人の目には去年の花と何の変わりもないように見えても、同じ花ではない。世界にたった一つだけ、一回だけ咲く、この季節のために。
薄靄の中にふわりと浮き上がる桃色
真っ青な空に薄いピンク色の花が雲のように
灰白色の雨の中、花びらの先に光る雫
灯篭や提灯に照らされて妖艶に花の世界に招く
どの時間にも最大限の美しさを保ち続ける桜。
待ちに待った春に一段と喜びが増す。




