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第42話 襲撃のあと

 翌朝、俺は村長の家へと向かった。


 すると中から何やら言い争うような声が聞こえてくる。


「タークリー、物資を出してもらうからな! 盗賊の襲撃から守ったのだ。行商人には供出の義務がある」

「ひ、ひぃぃぃぃ」


 よくわからないが、どうやら村長がタークリーから物資を巻き上げようとしているということのようだ。


 だが村長とタークリーはずぶずぶの関係のはずなので、少なくとも違法な搾取ではないだろう。


 まあ、タークリーがどうなろうと俺には関係ない。


 俺は扉をノックし、家の中に入る。


「村長、おはようございます」

「ああ⁉ ノックもせずに入ってくるとはこの無礼な!」

「げっ、ユート?」


 ノックをしたのに村長から罵声が飛んできた。それとなぜかタークリーが狼狽(うろた)えている。


「今は大事な話をしている! 用件は後で聞くから外で待っていろ」

「いやいや、村長が呼んだんじゃないですか。アジトを確認しに行くんですよね?」

「……そうだったな。チッ」


 なぜそんな態度を取られるのだろうか?


 いや、まあ、どうせろくでもないことを企んでいるような気もするが……。


「タークリー、逃げるなよ? 逃げればどうなるか分かっているだろうな?」

「ひっ」


 タークリーは蛇に(にら)まれたカエルのように固まっている。


 まあ、俺には関係ない話だ。


 もうこいつにぼったくられることもない。


「出発はいつ頃で?」

「ああ。今からでいい。行くぞ」

「はい」


 こうして俺たちは盗賊のアジトへと向かうのだった。


◆◇◆


 盗賊のアジトでボスの遺体を回収した俺たちは村へと戻り、残る盗賊たちの遺体も回収した。


 そして首を落とすと塩漬けにし始めた。


 前回はやっていなかったことなので質問してみると、どうやらこいつらには賞金が掛かっている可能性があるので念のため町へ送って確認をするのだそうだ。


 盗賊たちに賞金が懸けられていた場合、平民である俺には取り分があるらしい。


 だがそれが判明するのは大分先になるとのことだ。


 といっても、こいつらは大したお金も持っていなかったので、賞金首になるほど有名な盗賊ではないかもしれないとも言っていた。


 村長の言葉がどこまで信用できるかは分からないが、多少の知恵は回るだけで、そこまでヤバい奴らだとは思えなかった。


 だからきっと村長の言うとおり、大した連中ではなかったのではないだろうか。


 そうして一連の説明を受けて村長の家を出ると、目の前の広場ではタークリーが露店を開いている。


 きっと村長に物資を巻き上げられたので、少しでも利益を回収しようということなのだろう。


 値段も少しは下げているようだが、村のみんなは品物を見てはいるだけで買うような素振りはない。


 俺も冷やかしがてらウィンドウショッピングを楽しんでやることにする。


「いらっしゃい」


 タークリーは揉み手をしながら愛想笑いを浮かべ、俺を出迎える。


 木の皿を手に取ってみるが、どう見ても俺が作ったものよりも品質が悪い。


 表面はザラザラしているし、仕上げの加工もイマイチだ。


 ちなみに一皿四十五デールと、以前よりも一割引きになっている。


 それでもこいつは四点セットを五デールで買い叩いたのだから、十分にぼったくりと言えるだろう。


 そう考え、かつての自分の馬鹿さ加減に思わず笑ってしまった。


 それから俺はそっと皿を元の位置に戻す。するとタークリーは先ほどのと併せて侮辱と受け取ったのか、眉をピクリと動かした。


 そんなつもりはなかったのだが、まあ、俺としてもタークリーにはムカついていたのだ。


 このくらいはプチ復讐ということで許してほしい。


 それからもどんな商品があるのかしっかり確認し、何も買わずに露店を後にしてやった。


 いつもムカつく笑みを浮かべてぼったくっていたあのタークリーが、今回は少し焦ったような表情でずっと接客をしていた。


 その様子を見てちょっとスカッとした気分になったのはここだけの秘密だ。


 さて、これからどうしようか?


 もうお昼過ぎになっているので、いまから狩りに出るのはどうにも気が乗らない。


 よし、今日はこのまま家に帰ってのんびりしよう。


 そう考えた俺はゆっくりと自宅に向かって歩き始めたのだった。

次回更新は 2022/07/20(水) 12:00 を予定しております。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新ありがとうございます。 [一言] 塩漬け! いきなり戦国時代になった風味!
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