表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/45

第23話 課せられた義務

 体をきれいにした俺は村長様に呼び出された。


「フォレストウルフをやったそうだな」

「はい。採集に出ていたところを六匹のフォレストウルフに襲われました。なんとか倒すことはできましたが、一歩間違えばやられていました」

「そうか……。貴様は村人にしてはずいぶんと器用だな。貴様の職業はどうなっている? 本当に村人なのか?」

「はい。村人で間違いありません」

「……チッ。まあいい。フォレストウルフに襲われたのはどのあたりだ?」


 村長様は地図をテーブルにばさりと広げた。


「ええと、このあたりの地図、ですか?」

「他の何に見える?」

「いえ。それで、村は……」

「ここだ」

「はい。ええと、読み方は……」

「北が上だ。それとこの村の門は南にある」

「なるほど。ありがとうございます」


 地図によるとどうやらこの村は国境沿いにあるらしく、西にはクオリア王国という別の国があるようだ。


 この国の王都はここからかなり南にあり、件のフロンツ帝国とやらはこの地図には載っていないほど遠くにあるらしい。


「だとすると、南東のこの辺りになります」

「ほう。なるほど。ということは勇者様に追われた魔物のせいだろう」

「勇者様が?」

「ああ。王都には四人組の勇者様がいらっしゃるそうでな。魔物や盗賊を駆逐してくださっているのだそうだ」


 なるほど。あの四人の高校生たちはちゃんと今でも無事に勇者をしているらしい。赤の他人ではあるが、一緒に連れてこられたという間柄ではある。


 無茶なことをしていなければいいとは思うが、やはり高校生くらいだと大人たちにうまいこと丸め込まれてしまっているんだろうな。


「つまり勇者様の倒し損ねた魔物が別の場所に移動して、それが引き金になってフォレストウルフがこっちに移動してきたということですか?」

「そういうことだ。フォレストウルフはもともとこのあたりにはほとんどいなかったからな」


 そう言って村長様は舌打ちをした。


 いや、舌打ちをされるようなことを言った覚えはないぞ?


「まあいい。貴様もフォレストウルフを狩れるのなら森狩りをしてこい」

「え?」

「村でできる者がいるならば、その者がやる。当然であろう?」

「それはわかりますが、さすがに一人では……」

「だが、警備隊長のトーマスが出るわけにもいかんだろう? 貴様は盗賊に対して何もできなかったではないか」

「そ、それは……今度こそきちんと戦います!」

「どうだか……」


 村長様はそう言って冷たい目で俺をじっと見てきた。


「もう、大丈夫です。俺も村の一員ですから、村を守るためには戦います」

「……まあいい。それともう一つ、伝え忘れていたことがある」

「なんでしょうか?」

「税の話だ。貴様以外は全員農奴なので収穫したものの一部を徴収しているわけだが……」

「はい」

「貴様の場合はそれなりに稼げそうなのでな。今年は十万デールに決めた」

「えっ!? 十万!?」

「どうした? 農奴解放よりは遥かに安いぞ? それに貴様なら薬を売れば簡単に稼げるだろう?」

「で、ですがそんな……」

「払えなければ払えないでも構わん」

「え? いいんですか?」

「ああ。その代わり貴様は平民から農奴になるがな」

「そんな無茶苦茶な!」

「ここは儂の開拓村だ。儂がそうと決めたらそれがルールだ」


 いやいや。ブラックなんてもんじゃないじゃないか!


 ブラック企業だって法律は最低限守っていたぞ。それなのにこんな大事なことを独断で決めてしまうなんて!


 あ、いや。守ってなかったか。休みがなかったり残業代が出なかったりは日常茶飯事だしな。


 ああ、あと行きたくもない強制的に飲み会に連れるのも勘弁してほしかった。


 って、違う。そんなことよりも、こいつのほうがよほどヤバいじゃないか!


「それと、税を払わずにここから逃げた場合は脱税で奴隷落ちになるからな」


 いやいやいや。冗談じゃない。もしかしたら昔の大名やら名主やらがいた時代はこうだったのかもしれないけれど、やられたこっちとしてはたまったものではない。


 とはいえ、反論の材料が思い浮かばない。ええと、そうだ。そういえば!


「あの。フォレストウルフの素材はどうなるんですか?」

「ん? ああ。それは今度タークリーが来るからな。買い取ってもらう。三割は税として村に、残りは貴様とジェシカで自由に分けろ」

「えっ!? でもあいつは安く……」

「言っておくが、税を納めるまでは村から出ていくことは許さんぞ。四か月もの間住んでおきながら税を払わないなどということは許されんぞ?」

「……」


 なるほど。そういうことか。


 こいつ。俺が逃げられなくなるまで何も言わずに待っていたのか。


 農奴になればここから出ていけなくなり、そうすれば俺という労働力はこの村に縛り付けられることとなるということだろう。


 うわぁ。これはやられた。


「わかったな? 納税の期限は今年中だからな。あと四か月でしっかりと用意しておくように」

「く……」


 俺は何も言い返せずに村長様の家を後にしたのだった。

【大切なお願い】

いつもお読みいただき、応援していただき本当にありがとうございます。

そんな大切な読者の皆様にお願いがございます。


まだの方は是非、


・ブックマークへの登録

・下の【☆☆☆☆☆】からポイント評価


をして応援して頂き、ランキングの上位に押し上げて頂けませんでしょうか?


特にこの下にある【☆☆☆☆☆】からの評価は☆1つにつき2pt、1人10ptまで応援することができます。

10ptは……本当に、本当に大きいのです!


ランキングは本作の今後に大きく影響しますので、「この作品を応援したい!」と思ってくださった方は、何卒よろしくお願いいたします!


また、本作は執筆しながらの更新となります。今のところ毎日更新する予定ですが、正確な時間をお約束することはできません。


まだの方はぜひ「しおり機能」をご利用ください。更新があった際に、通知を受け取れるにようになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作「陽だまりキッチン、ときどき無双」はこちらから
FWjR_f8UAAAIhlW?format=jpg&name=large
画像をクリックすると出版社様の特集ページへジャンプします。
― 新着の感想 ―
[一言] あれ?農奴なら町を護るために盗賊と戦う必要はあるが、平民だと税を納める故に山賊や モンスターから護られる立場では? どちらかというと、農奴達に薬や木工家具を提供した分だけ長がお金支払わなきゃ…
[良い点] ブラック企業で社畜な知り合いが居ないので想像しか出来ないのですが、上手く立ち回れとは言わないが其処らの常識人的な動きもやっぱ出来ないからそんな環境に居たんだろうなぁ…。 作業を任せたらすん…
[一言] ちなみに、死体はインベントリに入れられるんだっけ? 何の死体とは言わないが。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ