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このざまだ

「シスター、逃げますよ。俺につかまって下さい!!」 


 俺は取り敢えず二人を安全な所に逃がそうとした。するとシスターは涙で濡れた顔を俺に向けると首を横に振りながら返事をする。


「私はこのまま子供達と一緒にいます・・・シルフィールだけを連れて逃げて下さい。」


 絶望の中にあるシスターの瞳は、すでに生きる希望を無くしていた。


 そうしている間にとうとう俺の周りにも魔獣が発生し、その内の一匹が襲いかかってきた。俺は咄嗟にシルフィールとシスターの体を抱き寄せる!


「ガキィィィィン!!」


 噛みついてきた魔獣は女神の加護により、弾き返された。更に複数の魔獣が一斉に襲いかかってくるが、加護の力で全て弾き返した。


 しかし加護の範囲は3人程度のようで、加護の外にいる町の人々が無惨に倒れていくのを見たシスターが、声を振り絞り俺に懇願する。


「私はどうなってもいいですから、どうか町の人をお救い下さい。お願いします。」


 この状況で回復魔法を使ったとしても、その後の状況は分かりきっているのだが、目の前で苦しむ人々をそのままにも出来ない。俺は急いで広範囲上級回復魔法「エクスフィアル」を唱えた。


 さすがに上級魔法だけあって見える範囲の人々の怪我は全回復したが、すでに死亡した人々は助けられない。しかもすぐに次の魔獣が襲って来る。


「誰か助けてーっ。」


 幼い声が耳に飛び込んできた瞬間、シルフィールが加護外へ飛び出す!


「あうっ・・・。」


 シルフィールは襲われそうになっている幼い少女を庇い、背中に攻撃を受けた。


「シルフィール!」


 俺はアイテムボックスから唯一持っている武器である鉄の小刀を取り出し、魔獣に斬りかかる。


 しかし、長年の修行の記憶は残っているものの、レベルの低下により体の方がその通りに動かず、腕力も足りないので魔獣に傷一つ付けられない。


「くそっ!くそっ!!!何で倒せないんだよっ。」


 何度小刀を振り下ろしても魔獣の硬い皮膚に傷一つ付けられない。


「ボキッ!!」


 ついに鉄の小刀が折れ、そのまま地面に這いつくばった。・・・もう俺には為す術がない。


 自分自身は加護の効果で攻撃を受けないが、周りの人々はどんどん傷ついていく・・・。


 俺はその後も広範囲上級回復魔法を唱え続けるも、次々と襲いかかる魔獣を倒さないとキリがない。


「俺はこの人達を助けたいのにっ・・・助けられない。」


 深手を負ったシルフィールも回復したが、そこで俺の魔力もほとんど尽きてしまう。シルフィールは加護外に居るため、もう一度攻撃を受けたら死んでしまうかも知れない。


 俺は、次の人生では・・・平和な場所で家族と幸せに生きたいと思って、勇者の力も封印した。戦う力のある者は結局戦場へ駆り出されるから。・・・だがそれは間違いだったのか。


 かつてあの最強の魔王を倒した勇者も今じゃこのざまだ・・・この情けない姿を見たら魔王も笑うだろうな・・・・。



 ・・・魔王・・・そういえば、アイテムボックスにあった「魔王様の像」って何だったのだろうか? 像なら棍棒としてでも使えるかも知れないな。


 そう考えた俺はアイテムボックスから「魔王様の像」を取り出してみる事にした。


 アイテムボックスにあった「魔王様の像」を取り出すと不気味な姿の像が出て来た。それを手に持つとウィンドウが表示され


「魔王様の像」を装備しますか? はい/いいえ


 と表示したので「はい」を押すと、続いて


「装備中は女神の加護が停止されます」という文字が一瞬表示されたと思った次の瞬間、俺の左手には「魔王」が装備されたのであった。

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