シャーリィ村へ花通信
「アスク・レイエンダー殿、この度は誠に助かった。貴殿の協力のお陰であの娘を救う事が出来た。」
王様はアスクに礼を言った。左手の魔王の事については触れない様に王妃に言われたのだろう、何も言われなかった。
「それと、褒美に関しては後日改めて相談しよう。それまで城内でゆっくり過ごすと良い。」
そう言い残し、後を王妃に託し、部屋を出て行った。先程までオロオロしていた王の姿はどこへやら、落ち着きを取り戻した様子だった。
「取り敢えず、部屋を用意しましたのでそちらでお休み下さい。夜には簡単にですが宴の席を用意いたします。」
王妃も安堵したのか優しい表情でそう告げた。
「ウェリアスもこの1月間ずっと張り詰めていたのですから、少しお休みなさい。」
と言われたウェリアスは王妃の言葉に頷くと、
「アスク、じゃあ少し休ませて貰うよ。また夜に会おう。」
そう言いながら部屋を後にした。
落ち着いた雰囲気の中で一先ず解散という雰囲気だったので、その前にシャーリィ村に連絡を入れる事にした。
「あの、シャーリィ村に連絡を入れたいのですが、花通信をお借りする事は出来ますか?」
と王妃様に願い出ると、
「ええ、どうぞ。後で部屋まで案内の者を向かわせますので、ご自由にお使い下さい。」
と返事が返ってきた。
ヘルザさんは用事があると言い残すと、再び居なくなった。
部屋を出た俺達が案内されたのは結構な広い部屋だった。すぐに従者の人達がお茶とお菓子を用意してくれたので、それらを楽しみながら寛いでいるとドアがノックされた。
「どうぞ。」
と返事をすると、部屋に入って来たのは従者の格好をした鳥人族の女性であった。
「アスク・レイエンダー様、花通信の部屋までご案内いたします。」
全員で花通信の部屋へ移動した。
小さな部屋のテーブルの上に花が活けてある花瓶があり、花の頭をちょんと指で触れると、
「花ある場所ならどこにでも~。花通信サービスですよ~!」
といいながら、元気な花の精霊が現れた。どこから掛けても同じセリフの様だ。
そして花の精霊に向かって
「シャーリィ村の屋敷にある花までお願いします。」
と言いながら、花の精霊にテーブルの上に置いてあるお菓子を渡す。精霊はいそいそと首から下げている『がま口財布』にお菓子を収納し、
「もしも~し?誰か出て~?アスクさんからの連絡だよ」
と花に話しかけると、少し間があった後で花から声が聞こえて来た。
「お待たせ~。シャーリィさんが今から出ますよ~。」
花の向こうから慌てた足音が聞こえた。この時間だと、畑に居たのかな? 花通信は見える範囲なら呼びに行ってくれる様だ。
「は~い、シャーリィですよ~!アスクさんですか?」
「ああ、アスクだけど、そっちで何か変わった事は無いかな?」
「変わった事?・・・う~ん・・・ああ! リャーオさん達が持って来てくれた野菜の苗とか、お酒用の苗木がどんどん大きくなってるですよ。リャーオさんも『あの森の腐葉土は何かおかしい』って言ってたですけどね。」
「うん・・・? まあ、順調に育ってるのなら安心だ。皆も元気にしてるみたいだな。 リーズは・・・まあ相変わらずだろうけどな。」
「あ、ご主人様はレイオールの女王様?から花通信があって、しばらく出掛けるって、ヘルザさんが乗ってきた馬車に乗って行っちゃったですよ。それからまだ帰って来てないですよ。」
リスティア陛下からリーズに花通信? 何かの用事でレイオールに呼ばれたのかな。・・・まあ、相手が陛下なら問題は無いだろ。
「じゃあ、皆に代わるよ。」
と言ってシルフィール達に花通信を譲った。皆しばらくの間、ワイワイと楽しそうに会話を続けた。
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