表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/321

地獄と化す町

 孤児院から激しく立ち上る炎を、近くにいた魔石掘りの冒険者や近所の住人達が呆然と見つめていた。そして、少し離れた場所から火事を見ている二人の男達がいた。この火事を起こさせた張本人、ジャゴール商会の会長ジャゴールである。


「あの能無しの手下共にも困ったものだねぇ、こんな小さな孤児院一つに手間取りおってからに。この様にさっさと建物を無くしちまえばあっという間に終わるのに、鼠を使って病気にして殺すだなんて悠長な事言いやがってねぇ。クックックッ。」


 ジャゴールがニヤニヤしながら執事のような身なりの男に話しかけると、


「さすがジャゴール様・・・これでこの地に埋まっている大量の魔石もスムーズに掘れますね。町長が金で言う事を聞くマヌケな奴で本当に良かったですよ・・・。」


 と執事のような男も気持ちの悪い笑顔でそう返した。



 すると少し上空から、不気味な声が発せられた。


「ギギギギィ・・・。最近この町から魔石の反応が頻繁にあるので様子を見に来て見たが、こういう事か。ならばこの町を全部壊せば大量の魔石があるという事だな・・・。」


 青黒い顔をしていて、口にはキバ、額からは2本のツノが伸びている。体はジャゴールの数倍はあろうかという巨体で、背には黒い翼・・・それは誰しもが聞き及んでいる魔族の姿であった。


「ひぇっ!・・・ま・・・魔族っ?」


 腰を抜かす程に驚くジャゴールと執事。


「ぎゃーーっ!!魔族だ・・・魔族が出たぞ!!!逃げろー!!!!!。」


 近くにいた野次馬の人々は蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う。


 固まって動けないジャゴールと執事はエルガイズの口から恐ろしい者の名を聞くことになる。


「我は魔王軍幹部バルズエンド様の忠実な部下、エルガイズである。我らが大いなる大魔王エリュゾナール様の復活のために貴様ら人間の穢れた魂を捧げる事を許そう!!」


 エルガイズは更に上空へと浮かんで行き、アイテムボックスのような異空間の窓から「巨大で高濃度の魔力を放つ不気味な石像」を取り出した。そして、そのおぞましい姿をした石像を町の中心部辺りに向かって打ち込んだ。


「ズズズズズーーーン。」激しい衝撃音と共に爆風が生じて周囲の物を吹き飛ばした。


 この衝撃で燃えていた孤児院も完全に崩れ去り、難を逃れたシルフィールも走ってシスターとアスクの元へと戻ってきた。


「一体何が起こったの?」


 シルフィールは訳が分からずにアスクに答えを要求しながらも、視界の上空に存在する異形の存在に気付き、目を奪われていた。


 やがて町全体が激しく揺れ、建物が崩れ落ちる音や人々の絶叫が聞こえ始める。


 地面に打ち込まれた石像から高濃度の魔力が発生し始めた。これは恐らく前世にもあった魔獣石という物で、魔族が魔獣を増やす時に使用する石だと思う。


 そしてその魔力を浴びた、地中に埋まっている大量の魔石が、巨大な魔獣に姿を変えて地上に湧き出て来る。1000体はいるであろう魔獣の大群はそのまま、逃げ惑う人々を虐殺し始めた。


「誰か助けてくれ!! 魔獣がぁ!! ぎゃあああ。」


「嫌だぁ。なぜこんなに魔獣がいるんだーーー? うわああああ」


 オークに引きちぎられる人や、巨大な狼のような魔獣に食いちぎられる人々の絶叫と飛び散る大量の血が、かつて人々が楽しく歩いた道を赤く染め上げていく。


 ジャゴールは背後から一瞬聞こえた悲鳴のような音に反応して振り向いた。するとジャゴールの執事が魔獣に首から下を飲み込まれていた。そしてそのまま飲み込まれてボリボリと噛み砕かれる。


「ひぃーぃぃぃ。はぎゃああああ。」


 ジャゴールの怯えた悲鳴が響き渡る。


 平和だったダリストンの町が一瞬にして地獄と化した・・・。

面白かったと思って頂いた方は、ブックマークと評価をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ