ダルヒャムの宿に宿泊
今夜泊まる事になった『ダルヒャムの宿』は鳥人族のダルヒャムさんが経営する宿の様だ。ここは広い部屋も普通にあるので4人部屋に泊まれた。
この国は妖精国というだけあって客のサイズもバラバラの様で、客の身体的特徴やサイズなどで泊まれる部屋が決定する。確かに、人馬族の人とかだと人族のサイズや形状のベッドでは寝られないよな。そういえば、2階に上がる階段も一段一段が大きく、端の方に普通サイズの人用に小さな階段が設置されていたな。
食事に関しても肉類は同族食いになって揉める場合もある為か、各自が外にある屋台で調達する事になっている。
「じゃあ、取り敢えず屋台で夕食と行きますか。」
「そうだね。妖精国に住んでた子供時代は、エルフの里で芋や木の実ばっかり食べてたから、都の食事に憧れてたんだよ。」
「ティアは肉食べたい。」
「熱々で無ければ良いのですが・・・。」
皆で屋台街を一通り歩いて、それぞれが食べたいものを包んで貰って部屋に持ち帰って食べる事にした。屋台街を歩くと、それこそ多種多様な種族がいるのが分かる。フォーリス王国にも色んな種類の獣人が居たが、ここは体格が皆本当にバラバラなのだ。
「よし、皆それぞれ食べたい物を買ったな? じゃあ宿に戻ろう。」
早速宿に戻り、それぞれが買った物をテーブルに並べた。
シルフィールは細い麺にドロドロのソースが掛かった料理。ティアはラバーダ牛の肋の骨付き肉をじっくりと焼いた物。フィーラは魚を生地で包み焼きにしたもの。そして俺は肉や野菜などをドロドロの液体に入れて焼いた物にした。オマケに肉団子を串に刺した物を買ったので、皆で食べられる様にテーブルの中央に置いた。もちろん食後の甘いお菓子も用意しておいた。
食事を終え、しばらくまったりとした時間を過ごしていると、
「ねえ、そろそろシャワー室の開始時間じゃない?」
シルフィールが思い出したように口を開いた。
「注意書きには『シャワー室は9時以降になると体が大きい方用にレイアウトが変更されますので、普通サイズの方はそれまでに入浴をお済ませ下さい。』って書いてあるよ。」
確かに、シャワーの高さや仕切りの幅なんかも俺達と同じ大きさだったら入れないもんなぁ。という事で、みんなでシャワー室へと向かった。
一応シャワー室は男女に別れていた。全身に羽や鱗や毛がある種族の人は、そもそも服を着ていない場合もあるので男女同じ場所の可能性もあるかも知れないと心配していた・・・そう、万が一を心配していたのだ。
女子シャワー室の方からシルフィール達の楽しそうな声が聞こえる中、俺の隣にはゴリゴリとお互いの甲羅を懸命に洗い合う筋肉ムキムキの亀人族の男達がいた・・・。
「よし兄貴ィ、そろそろ目の細けぇ番手のやすりに交換するぜ!」
甲羅を背負った男はそう言いながら違う布に持ち替えて、クリームの様な物を塗りながら、もう一人の男の甲羅を磨き始めた。
「うおおおっ! 兄貴ィ! イカす甲羅になったぜ! 鏡面加工でピッカピカじゃあ!」
確かに甲羅男の甲羅には周りの物が映り込む程にピカピカになっている。
「フフフ。男の身だしなみに手抜きがあってはならんからなぁ。よし、次はお前の甲羅も完璧に磨き上げてやるぜ!!」
こうして光り輝く甲羅が二つ誕生した。・・・確かに身だしなみは大切だな。俺も念を入れて体を磨き上げた。
しかし、この宿は体のサイズごとに時間分けしてあったり、部屋や階段にまで細かな工夫がされている。ヘルザさんがお薦めしてくれたのには、確かな理由があったようだ。
取り敢えず明日はファーイレン城へ行き、魔王の力で王族の人の呪いを解いてあげないといけない。まあ、あいつはあんなでも一応魔王なのだから、多分大丈夫だろうとは思っているのだが。
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