王都 ファーイレンに到着
今回の旅は急な話だったので食事などはアイテムボックスの食材を多用した。毎日の入浴の際は、万が一ヘルザさんの入浴を覗いたりしたら命の危険があると思い、細心の注意をした。
就寝時も同じく万が一があってはならないので、いつもの並びでフィーラの向こう側に寝て貰った。フィーラはこういう所、全く動じないので助かる。
* * *
村を出発してから8日目でついにフェルティシアとの国境に到着した。もう少し道が良ければフィルツならもっと早く走れると思うのだが、これ以上は揺れが酷くて乗っていられなくなるのだ。
「身分を証明出来る物を掲示して下さい。」
そう言って近づいて来た巨大な国境警備兵は上半身が人間、下半身は馬の『人馬』という種族であった。背中に巨大な槍を背負っている。妖精国に来たのだと実感が一気に湧いてきた。
「こちらはフォーリス王家所属の馬車です。リエナ王妃からの依頼を受け、ファーイレン城へ向かう所です。」
ヘルザさんが馬車から顔を出し、フォーリス王家の紋章が入った書状を見せながらそう告げると、
「この度は、緊急の要請にお応え頂き、誠に有り難う御座います。では、お通り下さい。」
警備兵はヘルザさんの顔を知っていたのだろう。あっさりと通過の許可が下りたので先を急いだ。
「そういえば、この妖精国はエルフの里がいくつもあるって聞いたけど、シルフィールの里もこの国にあるんじゃない?」
「うん。私の両親は事情があってダリストンの近くの山に住んでたんだけど、私が12歳になる迄は、この国の『フレイミア』っていう一族のエルフの里に住んでたの。だから私の正式な名前は『シルフィール・リオ・フレイミア』なのよ。」
「貴女が12歳と言うと、それは何年前の話?」
この8日間、俺達の会話に無関心だったヘルザさんが急に話に入って来た。
「え? ・・・私は今16歳だから、4年前の話ですね。」
シルフィールのステータスは今まで確認していなかったけど、16歳だったんだな。良かった、250歳とかじゃなくて・・・。
「貴女は4年前にフレイミアで何が起こったのか知ってるの?」
「いえ、あの日私は慌てて家に帰ってきた両親から急いで旅に出る準備をするようにと言われて理由も分からずに家を出たんです。」
「ご両親は現在どちらにいらっしゃるの?」
「いえ、父と母は2年前に亡くなりました。」
「そう・・・。だったら城に行った後にフレイミアを訪ねてみるといいわ。そして4年前にフレイミア周辺で何が起こったのかを知っておく方が良いかも知れないわね。」
ヘルザさんは何故か悲しそうな顔でシルフィールにそう伝えた・・・。
「ティアはドラゴンだから特定の国が故郷って事は無いんだよな?」
「そう。竜は3つ居る。神龍様とティアたち竜人族。それにワイバーン。」
「ドラゴンは強いから世界中で気ままに暮らしてるって事なんだろうな。」
国境を通ってから4日目の大分薄暗くなった頃に『王都ファーイレン』に到着した。そこでも衛兵に対してヘルザさんが書状を掲示すると、あっさりと通過出来た。
「さて、国外だからいつものガイドブックが使えないんだが、どこに泊まろうか?」
今までガイドブックに頼り切った旅をしていたので、宿の情報収集が疎かになってしまったようだ。
「このあたりで宿泊するんだったら、この先の『ダルヒャムの宿』という宿がオススメよ。」
とヘルザさんに教えて貰ったので早速宿に行ってみた。すると運良く大部屋が空いてたので宿泊する事になった。
しかしヘルザさんは、
「私は知り合いに会わないといけないので、また明日の朝ここで会いましょう。」
と言い残して去って行った。
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