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絶望の炎

 やがてシスターが意識を取り戻したので、急いで回復魔法をかけた。


「フィア」


 シスターの怪我が瞬く間に治癒した。


「何度も・・助けていただいて、有り難うござい・・・ます。」


 シルフィールも俺もほっと胸を撫で下ろした・・・・。


 しかしその直後に、背後から大きな叫び声が上がった。


「おい!孤児院の辺りから煙が上がってるぞ!!!火事だ!!!!」


 それを聞いた瞬間、シスターの顔が青ざめ、絶望へと変わる。


「いやっ!」


 シスターは叫ぶと同時に体を起こして孤児院に向かって走り始める。


「嫌だよ・・・嫌だ・・・嫌だ!!!!!」


 いつもの冷静なシスターとは違い、取り乱した姿で、少しでも早く孤児院へ行こうとして必死で走り続ける。俺とシルフィールも後ろを付いて走っている。


「これ以上は何もしないって言ってたのは・・・こういう事か。」


 やがて孤児院が見えるとすでに濛々と煙が立ち上り、激しい炎で孤児院は燃え上がっていた。


 シスターは、子供達の姿を探しながら孤児院へと近づいて行く・・・。


 「みんな~! どこなの?!・・・どこにいるの?!・・・・。」


 シスターの叫び声も、建物が崩れ落ちる音でかき消された・・・。


 シルフィールは泣き叫びながらも、建物の裏側から助けられないかと思ったのだろう、裏庭へと走っていった。


 燃え盛る建物は炎による熱気と煙で近づけない程で、数人の子供達であろう黒い塊がドアから少し離れた所で息絶えていた。


 よろよろと近づいて行き、そのまま力なく足元から崩れ落ちるシスター・・・。


「嫌だ・・・嫌だよ・・・非道いよ・・・うえええええん」


 シスターはすでに枯れかけた声を振り絞る様にして泣き始めた・・・。


 あの優しい眼差しで微笑むシスターの姿はそこにはなく、黒こげになった愛しい家族達の亡骸を前に、溢れ出る涙と鼻水を隠す事もなく、ただ子供のように泣き叫ぶ、一人の若い女性が絶望の前に崩れ落ちていた。


 一体の亡骸の首にはペンダントだけが燃えずに残っていた・・・。



 その無惨な姿を見つめながら、俺は勇者の能力を封印した事を後悔していた。


 勇者の能力があれば今すぐにこの炎を消し去り、子供達もまだ救えたかも知れないのに、今の俺は本当に無力だ・・・この小さな子供達十数人の命すら守れないのだ。

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