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悲劇の幕開け

 ドンドンドン!! 激しくドアがノックされる。


「アスクさーん?朝だよぉっ!」


 昨日と同じく、朝っぱらからドアの向こうでクラウレの元気な声が響いた。シルフィール・・・早起きすぎるだろ・・・。


「あれぇ?起きないなぁ。そうだシルフィールさぁ、この鍵で中に入って彼の布団に潜り込んで、あんたのこの立派な胸で叩き起こしてあげなよ?」


「何てこと言うのよ!クラウレのバカぁ!」


 昨日と同じ流れになってきたので、さっさと飛び起きた。




 朝食を済ませ、昨日と同じくシルフィールと出かける。


 シルフィールはニコニコと機嫌良さそうで、俺の横を昨日よりも更に近い距離で歩きながら、楽しそうに話しかけて来る。


「昨日は本当に有り難う御座いました。今朝も孤児院に寄ってきたんですけど、子供達も本当に楽しかったみたいで、アスクさんにまた来て欲しいってみんな言ってましたよ。」


「レイシムには随分からかわれたけどね。」


「あっ・・あの子はいつもああやって私をからかうんです。」


「シルフィールは子供達にとても好かれてるんだね。」


「いえ、すごいのはシスターですよ。先日も石をぶつけられて出血したり、色々非道いことをされているのに絶対に涙を見せないで、いつも笑っているんです。」


「どうして他人のために、そこまで出来るんだろう。」


「シスターも孤児院出身なんだそうですよ。だからあの子達を絶対に守りたいっていつも言ってます。」


「じゃあまた近いうちにレイシムにからかわれに行くとするか。」


「ふふふっ、そうですね。あの子も喜ぶと思います。」


 そうやって会話をしながら問屋街のある通りを歩いていると、いつのまにか空が曇り空になって来ていた。先程まで晴天だったのに、雨が降るんじゃないだろうかと心配になってきた。


 更に先へ進むと、男達が大声で誰かを罵っている所に遭遇した。町征く人々は関わり合いにならないように、避けるように歩いて行く。


 男達の視線の先を見ると、シスターが地面に這いつくばっている。


 辺りにはジャガイモが散乱していて、シスターが子供達のために食料の買い出しに来たのだろう。


 男達はシスターを取り囲みながら、下卑た笑いを浮かべている。


「どうだこの水は美味しいだろぉ~? ザバネゴ鼠のエキスがこないだの10倍入ってるからな!」


「余り飲み過ぎると、お前ん所のガキ達みたいにザバネゴ病になっちまうぜ?ハハハ」


「!!!ごほっ、、、ごほごほっ!」


 急に咳き込み出して倒れ込むシスター・・・。


 苦しむシスターに気付いたシルフィールと俺は慌ててシスターの前に飛び出していった。


「あなた達っ、シスターに何をしたのっ?!!!!」


 シルフィールが男達に向かって怒りの口調で問いかける。


「心配すんな。これ以上は何もしねぇよ。ワッハッハッ」


 シスターの顔にザバネゴ病の症状である赤い筋模様が浮き出てきた。それを見届けるようにして男達は去っていった。


 見る見るうちにシスターの呼吸が荒くなり始める。


「子供達よりもかなり酷い症状だわ。どうしよう、セブリ草はもう使い切っちゃったのに。」


 目に涙を溜めてうろたえるシルフィール。見た事のない症状だが一応解毒魔法を試そうかと思った時に、俺もセブリ草を持っている事を思い出し、急いでアイテムボックスからセブリ草を取り出す。


「シルフィール、これで足りる?」


 シルフィールにセブリ草を渡すと、驚いた表情をしながらも


「アスクさん。ありがとうございますっ!」


 といいながら、いつも腰にぶら下げているミニバッグから調合セットを取り出した。


 そしてバッグから布袋を出し、その中から取り出した3つの薬を調合台に乗せ、


「ディア・スヴァルス」と唱えた。


 調合が完了したのか一瞬光を放ち、調合台の中に薬が完成した。それを小瓶の中に流し込んでシスターに飲ませると、たちまち顔の模様が消えて、呼吸も落ち着いていった。


「うう・・・。」


 シスターは小さく声を発し、うっすらと目を開いた。


「シスター!!!・・・・良かったぁ・・・・・。」


 安心したシルフィールは涙を流しながらシスターを抱きしめた。

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