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温泉の町フラッカでのんびり過ごす7

 残るロッポロは10匹程になっているので、後はシルフィール達に任せて俺はベデロッポロに集中する。


「バシュッ!!」


 ベデロッポロの隙を突いて、スネの辺りに小刀を突き刺した・・・が剛毛に遮られ刃先が通らない。


「ウゴォォォォッ。」


 ベデロッポロは最早猿とは思えない声を出した。こいつは同じ猿と言っても体つきから全く違う。全身をかなり長めの剛毛が覆っており、鋼のような筋肉が派手に隆起している。そして7メートルもある体長の割には動きが速い。


「ブオーーン!!」


 ムキムキの太い腕から繰り出される攻撃は、かなりの威力だという事が伺える音を立てている。


「ガキィン!! ガキィィィィン!! ウゴッ?」


 怒りを顕にしたベデロッポロだったが、その攻撃は女神の加護により全て防いた。俺はダメージは受けないが、素早いベデロッポロにもこちらの攻撃が当たらないという時間が続く。


「シルフィール、後ろから何か来てるよ!」


 空中に避難しているティアが急に大声で叫んだ。するとシルフィール達の後ろからベデロッポロがもう1体現れて突然襲い掛かって来た。


「きゃあっ!!」


 シルフィール達は、ふいに現れたベデロッポロに驚くも、リスティさんが落ち着いて防御魔法を展開する。


「ブレイアギス!」


 防御魔法が展開し、光の半円が浮かび上がる。


「ガキィィン!!!!」


 ベデロッポロの重い一撃を受け、防御魔法はかなりの衝撃を受ける。女神の加護と違い、そんなに長時間は持ちそうにない。


「アスク~、シルフィールがやられちゃうよ!」


上空ではティアが心配そうに叫びながら、グルグルと飛び回っている。


 もう一刻の猶予もないので、俺は魔王を装備する事にした。その間は加護が無くなるので、一撃でも奴の攻撃を受けたら命に関わるだろうが仕方が無い。アイテムボックスにある魔王様の像を装備する。


「目覚めろ! 魔王!!!」


 俺の左手に魔王が装備された。


「アスク~! お前この間は変な物見せやがって~。お陰で寝付きが悪かったぞ。」


 目が覚めると同時に魔王は温泉での出来事を攻め始めた。


「いや魔王、今はそれどころじゃ無いぞ。」


 異形の姿をした魔王に驚いて少しの間止まっていたベデロッポロだったが、思い出したように攻撃をして来た。


「グォォォォォッ ゴアッ!!」


 レベルが一気に上昇した俺はベデロッポロの攻撃を素早く躱しながら小刀を突き刺す。やっと怪我を負わせる事に成功したが、特に攻撃技も無い現状では致命傷を与えられない。


「ま・・・まあ俺様くらいにもなると、そんな物飽きるほど見てるから今更お前の貧相な物を見ても何とも思わんがな・・・ハハハハハハ。」


 魔王は振り回されながらも、まだその話を続けている。


「ここは温泉街だから、武器屋にも碌な剣が売ってなかったんだ。魔王!何か武器を出してくれっ!」


 俺はそう叫びながらアイテムボックスを開く。


「ああ? アスクお前さっきから何を言って・・・」


 魔王はやっと下半身の呪縛から解き放たれて、ベデロッポロの方を見る。


「猿だと? お前この間からこんな弱そうな奴ばっかり相手にしやがって。少しは手応えのある奴と戦ったらどうなんだ?」


「いや、出来れば戦闘はしたくないね。それよりも武器は?!!」


「ちっ、まあいい。血を吸いたがっている魔剣はいくらでもあるからな。魔王城復活の時の為に、少しは魔剣を目覚めさせておくか。」


「血の魔剣シリーズは分かりやすい場所にまとめて置いてあるから出しやすいぜ!」


「ゼオヌスの部屋の入って右側!ガズラーの背骨に突き刺してあるぞ!」


 魔剣の場所を正確にイメージしないと魔王城から取り出せないのだが、今回は自信があるようで、やたらとドヤ顔をしている。


「血を求めし魔剣「デステルガ」よ。我が声の元に顕現せよ!」


 魔王の言葉に反応して魔剣の柄がアイテムボックスから出て来たので、俺は魔王の左手でそれを掴み、引き抜いた。


 それは見るからに痛々しい、刀身を無数の大きなトゲが覆い尽くしている。


「さあ、アスクよ。猿共目掛けて剣を振るうが良い!」


 そう言われて、それぞれ1体ずつに向かって剣を振った。すると刀身にある無数のトゲが川のように発射され、ベデロッポロの周りを飛び回ると、狙いを定めて次々と全身へ突き刺さっていく。


「ブスッ!ブスブスブスブスッ!!!!!!」


「グゴオオオオオッ!!!」


 2体のベデロッポロは必死で逃げようとするが、追尾する無数のトゲからは逃げられない。


「ハッハッハッハァ!!「デステルガ」よ。敵の血を啜り己が力とせよ。」


「ガアアアアアアアウッ!!!」


「ブシューーーーーッ!!!」


 ベデロッポロの苦悶の叫びが響き渡る中、全身に突き刺さった無数の大きなトゲからベデロッポロの血が勢いよく噴出した。そしてその大量の血液は空中で血だまりとなって、すべて魔剣に吸い込まれて行く。


 やがて、2体のベデロッポロは痙攣しながら全身の血を失い、力なく前に倒れた。


「ドスーーーーン!!!」


 俺は倒れたベデロッポロ2体に近づいて、完全に死んでいるのを確認した。気が付くと残りのロッポロ達も皆居なくなっていた。


 魔剣をアイテムボックスに戻すと、ベデロッポロに刺さっていた無数のトゲも一瞬で消えた。魔王は魔剣を取り出す際に大量の魔力を消費したのか、再び眠りについた。装備を外しながらシルフィール達と顔を見合わせると、俺達は安堵して地面に座り込んだ。


 そして皆で勝利の雄叫びをあげた。


「メークリ卵のオムレツ! プディーン!! やった~~~!!!」


 後始末はピッケさんに託し、全員で宿に戻った。まだ清掃前の時間だったので、それぞれ男女別に温泉に入って体を綺麗にしてから、各自ベッドで爆睡した。

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