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シルフィールと朝からデート

 ドンドンドン!「アスクさーん?朝だよぉっ!」


 朝っぱらからドアの向こうで元気な声が響いた。この声は金の蛙亭の娘のクラウレのようだ。


「あれぇ?起きないなぁ。そうだシルフィールさぁ、この鍵で中に入って彼の布団に潜り込んで起こしてあげなよ?」


「いやいやいや!そういうのじゃないからっ!恋人とかじゃなくて昨日のお礼をしに来たんだからね?」


 二人のやりとりが他の部屋にも丸聞こえに違いない。鍵の意味も少しは考えようね?クラウレさん・・・。


 まだ眠かったがこの騒ぎを終結させるため、慌てて返事をしながら飛び起きた。




「じゃあ、ごゆっくりね~。」


 クラウレはそう言い残し、ニヤニヤしながら仕事に戻って行った。


「もう、クラウレったら。あっ、お早うございますアスクさん。」


「ああ、おはようシルフィール。」


「昨日採取したセブリ草のお陰で、子供達は無事に回復しました。本当に有り難うございました。」


「そのザバネゴ病というのはよく発生してるの?」


「この辺りでは見かけないザバネゴ鼠からの中毒らしいのですが、なぜこの町で発生したのかは分かりません。でもセブリ草で作った薬が効いて良かったです。」


 だからこの町の薬屋にザバネゴ病の薬が置いて無くて、山まで採りに行ったのか。


「今日は私が町を案内しますので、朝食を食べ終わったら出かけませんか?」


 シルフィールの提案を了承し、着替えてから朝食に向かった。夕べの事もあるし量が心配だったが、朝食はクラウレが担当だったようで、美味しい朝ご飯を適量いただいた。


 食べ終わった俺はクラウレとおしゃべりをしながら待っていたシルフィールに声を掛け、一緒に出かける事になった。



 町の中心の通りを歩くと町は益々賑やかで、人々は活気に満ちあふれている。花やパンの甘い香りがふんわりと漂っていて、子ども達も自由に走り回っている。ここには暗い影は感じられないので、きっと平和な町なんだろう。


 この町の名物であるカエルレースやカエル持ち上げ大会などを見たりした。シルフィールも楽しそうに笑っていて、二人で楽しく過ごした。


 ジュース屋の店主からは、カエルの粘液入りジュースと数種の果物を搾ったジュースを勧められ、迷わず数種の果物を搾ったジュースの方を購入してベンチに座り、飲みながらシルフィールと話し始めた。


「町の外は魔獣がいて危険だったけど、この町の中はすごく平和な雰囲気だよね。」


 その言葉に少し顔を曇らせたシルフィールは口を開いた。


「最近、この辺り一帯の地下から大量の魔石が見つかって、冒険者さん達も魔獣退治の依頼を受けずに魔石を掘りに行ってるみたいです。だからなのか郊外に魔獣が増えたようです。」


 夕べの冒険者達も魔石を掘りに行ってたんだな。それでお金が手に入って上機嫌なのか。


 前世でも持続的に魔力発生する魔石は魔道具には欠かせない素材で、地面に埋まっていたり魔獣を倒して抜き取ったりして入手している。前世でも高濃度の魔石は驚くほど高値で取引されていたから、この世界でも多分同じだろうと思う・・・。


「アスクさんはこの町に観光に来たんですよね?」


「うん・・・そうだよ。旅をしてるからね。」


「観光だけなら問題は無いんですが、もし商売をするつもりでしたら、この町では「ジャゴール商会」の人達に話を通さないといけない事が色々とありますので、十分に気をつけて下さいね。」


 聞けば、シルフィールもこの町で薬屋に薬草を納品する仕事をしているらしい。


「この町にもそういうのが居るんだな。シルフィールもそいつらに何かされたの?」


「いえ、私は大丈夫なんですが、孤児院の周辺からも魔石が沢山出ていて、魔石を掘るために孤児院を壊せとジャゴール商会の人が言って来て、それを断ったシスターに色々と嫌がらせをしているんです。だから私、少しでもシスターのお手伝いが出来ればと思って、出来るだけ顔を出してるんですが、嫌がらせは収まらなくて・・・。」


「病気の件も、もしかしたらジャゴール商会の仕業という事もあり得るんじゃないかな。」


「その可能性はあるかも知れませんが、証拠が無いので町長も取り合ってくれません。」


「町長がそんな感じだったら、ジャゴール商会もやりたい放題になるだろうな。」


「でもシスターは何があっても、いつもニコニコ笑顔を絶やさないで、子ども達を安心させているんだと思います。」


「あっ、ごめんなさい。暗い話ばっかりしちゃって。」


「いや、大丈夫だよ。」


「そういえば明るい話題もあるんですよ。前に門番のトムさんから聞いたんですが、魔王復活の日が近づく中、スレイグラード王国で魔王に対抗するために異世界から3人の勇者様を召喚するのに成功したらしいんです。」


 !!!勇者だと?。この世界にもいるのか・・・っていうか魔王までいるのかよ。


「それで私、もしかしたらいつか勇者様がこの国にも来てくださって、このあたりの魔獣も退治してくれるんじゃないかって期待しているんです。」



「そうだな。俺もきっと来てくれると思うよ。この世界の勇者様が・・・。」

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