ゼアンヒードへの帰還
俺達はそのまま馬車に乗り、急いで町に戻る事にした。獣人達が仲間の所に合流して追っ手がかかると、面倒な事になるからだ。
追っ手の気配が無いまま、馬車はドラゴンの森を離れていく。しかしティアは、目の前で母親を撃墜されたショックで、塞ぎ込んだままだ。
「うわ~~ん・・・・お母さ~ん。」
「・・・ティア、さっきの獣人は「ドラゴンを捕まえてる」って言ってたよ。だからお母さんは絶対に死んでいないはずだ。」
「お母さん、生きてる?」
泣きはらして、目を真っ赤にしたティアが俺の言葉に反応して顔を上げる。
「うん、大丈夫だよ。ティアが元気にしてれば、また必ずお母さんと会えるさ。」
何の確証もないが、ティアを安心させる為にそう断言した。
「うん。ティア、お母さんに会いたいから元気にしてる。」
そう言うと、ティアはシルフィールの膝にしがみついたまま眠りに付いた。
「・・・やっぱりティアのお母さんは、ザナスティ獣王国に連れて行かれたのかな?」
シルフィールはティアを見つめながら、ポツリと口を開いた。
「母ドラゴンが消えた直後に『ティアを連れて逃げてくれ』って念話が届いたから、多分捕獲系の何かを使って人型に戻された後、生きたまま連れて行かれたんだと思うよ。」
「目の前でお母さんが墜落させられる所を見るなんて、ティアが可哀想だよ・・・。」
「子供を庇うために攻撃を受けたっていうのもあるけど、それでもドラゴンを一撃で墜とせる程の恐ろしい能力を持った奴が近くに居るみたいだから、先ずはここから逃げないとな。」
それから夕方頃、ゼアンヒードに無事到着。ティアを起こして、取り敢えず三ツ首猫の宿に戻る事にした。
「ティア、部屋に入るまではこれで頭を隠しておいて。」
念のためティアには頭からフードを被せた。この国は獣人や妖精族も多く居るのでツノが生えている人は珍しくはないが、例の変態貴族や商人などがティアを奪いに来る可能性もあるからだ。
3人部屋を希望したが、空いていなかったので2人部屋に宿泊する事にした。帰りの馬車では追っ手を警戒して眠れなかったので、俺もシルフィールも寝不足のままだった。
「じゃあ、取り敢えず晩ご飯にしようか?」
フードを被せたまま食堂へ行くと目立ちそうなので、部屋で食事をする事にした。宿の人におまかせで注文して、部屋まで持ってきて貰うと、それは「シワシワ鳥の唐揚げ」だった。
「ティア、唐揚げ美味しいかい?」
「うんっ、すっごく美味しいよ。」
ティアがすごく気に入ってモリモリ食べたので追加で沢山注文した。
「アスクさん、明日からはどうするの?」
ティアに負けない程食べたシルフィールが追加の唐揚げを食べながら聞いてきた。
「もうこの町ではのんびり観光という訳にもいかなそうだから、南にあるフラッカという町を経由して首都レイオールを目指そうと思うんだ。」
俺は「フォーリス全国グルメガイド」の地図ページを見ながら答えた。
「もう・・・アスクさんったら、早速フラッカの名物料理を調べてるの?」
「シルフィール、次のフラッカという町は温泉で有名な所らしいぞ。ついに温泉に入れるなあ。」
「ふふっ、そうね。次の町では少しのんびりしたいな。」
「美味しい名物料理も楽しみだよ。」
ティアが静かだと思ったら、食べながらウトウトし始めている。
「じゃあ、私たちも寝不足だから寝ましょうか。ティア、歯を磨いてから寝るのよ。」
半分寝かけのティアに歯磨きをさせてから、シルフィールはティアと一緒にベッドに入った。そして二人とも数分で眠りについた。
俺は一人でベッドに入り、そして隣のベッドで仲良く眠る二人をちらりと見る。
「もうすっかり親子みたいな感じだな・・・・・・いや、俺はまだ結婚もしてないけどね?」
と、一人で自問自答していたが、寝不足のせいですぐに深い眠りについた。
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