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いざ異世界へ

 まばゆい光の柱が消えると、山の中腹の少し開けた場所に立っていた。足元は崖になっているが目の前には美しい景色が広がっている。


 異世界とはいえ、このような風景はあまり変わらないようだ。見渡すと少し先に町が見える。


「服がローブっぽいのに変わっているのは女神様のサービスなのかな。・・・おっ、両手にあった勇者の紋章が消えてる。」


「さてと、まずはステータスを確認しないとな・・・。えーっと、ステータスの表示はどうやるんだ?」


 思い当たる操作をいくつか試すとステータスウィンドウが表示される。


「おおっ、出たぞ。この世界でもステータスウィンドウは使えるんだな。」


「えっと・・・名前はそのまま、アスク・ディルブレン。年齢も16歳のまま。前世では16歳で成人だったけど、こっちでもそうなのかな?」


「スキル1はロック中・・・これは封印した前世の勇者スキルなんだろうな。スキル2は女神の加護、アイテムボックス、鑑定、索敵・・・か。この女神の加護って言うのは何だろう?」


「剣術スキルが消えてるのは寂しいけど、その代わりに回復系の魔法があるから、治癒師としてなら十分生きていけるな。」


「後はアイテムボックスの中も確認しとこうかな。所持金28,526,545,006セリン?桁数が異常に増えてるけど、これが女神様の言っていた魔王を倒した時のボーナスなのかな? 他は、貴金属類68、鉄の小刀(銘無し)1、食料品1181、酒96、ポーション36、未分類アイテム149、魔王城1、魔王様の像1・・・と。」


「んんっ?『魔王城』と『魔王様の像』だと?・・・もしかしてこれがドロップアイテムなのか。・・・まあ、これは嫌な予感しかしないので、無視しておこう。」


 取り敢えず、アイテムボックスに入っている食料でお腹を満たしてから出発する事にした。


「ん~~っと、食料食料・・・あれっ? 大量の酒も入ってるな・・・。ああ、あいつの酒を預かってたんだっけ。いつか再会した時に渡してやろうかな。」


「お~っ、あの店のスープも買ってたんだっけ。これにしようっと。」


 アイテムボックスから鍋に入った熱々のスープを取り出して、皿に注いだ後、パンと一緒に食べ始めた。


 アイテムボックスは別の名を異次元空間収納と言い、大容量の荷物を自由に出し入れ出来、更に物を入れた時の状態を維持するので、食料も腐らず、スープもいつでも熱々の状態で飲む事が出来る大変有り難いスキルである。


「勇者時代の物がそのまま新しいアイテムボックスに移してあるみたいだから、まだ暫くは前世の食べ物を食べられるな。」




 まったりと美味しい料理を味わっていると、突然背後から『ドドドドド!!!』と地響きがして、振り返ると弓を持った若い女の子が巨大なイノシシに追いかけられていた。


「そっ・・・そこどいてくださーーーい!!」


 彼女は俺の方に向かって必死で叫びながら走ってくる。だが、俺の背後が崖になっている事には気付いていないようだ。


「そっちは危ないっ!」


 崖に向かって走る彼女を見た俺は、とっさに横から彼女を止める為に抱きついた。


 イノシシが俺達に向かって激突しそうになった瞬間、


「ズガーーーーン!!!」


 俺の体を囲むように見えない壁の様な物が発生し、そこへ衝突したイノシシはその衝撃で目を回しながら進んで行き、そのまま崖から落下して行った。


「今のが女神の加護とやらの効果なんだろうか? 何にせよ助かった。」

 

 それとお約束だが、彼女の胸に顔を埋めている事に気が付き、慌てて顔を胸から放し、


「ご・・・ごめんっ!」


 と謝ったが、彼女はぐったりしていて反応が無い。


「ちょっと君! 大丈夫?」と声を掛けると、


「ふぁい・・・大丈夫で・・・す。」


 と反応があった。ケガとかはしてなさそうなので安心すると、


「ぐ~~~~~~っ。」


 不意に彼女のお腹が鳴った。


「ご・・・ごめんなさい。」


 彼女は顔を真っ赤にしながらそう言った。




 俺は、何とか起き上がった彼女に食事を提供する事にした。別に彼女の胸に顔を埋めた罪悪感からでは無く、死にそうな顔をした彼女が気の毒だったからだ・・・。」


「食料は沢山あるので、良かったらどうぞ。」


「良いんですか? 有り難う御座います。」


 残ったスープだけじゃ少ないので、アイテムボックスから追加で食料を沢山出した。するとアイテムボックスを見た彼女は目を丸くする。


「それは、何かの魔法でしょうか?」


「これは、アイテムボックス(異次元空間収納)というスキルですね。」


「スキルなんですか。私はアイテムバッグと言う、そのバッグの数倍の物が入るいう物なら見たことはありますが、そんなスキルがあるのは初めて知りました。」


「珍しいスキルなんですかね? ああ、それより温かい内に食事をどうぞ。」


「すみません。頂きます。」


 すると彼女はその細い体からは想像出来ない位に沢山食べた。アイテムボックスの中には大量に食料が保存されているので、足りなくなる事はないと思うが・・・しかし、本当に美味しそうに食べるなあ。


 お腹が満たされて落ち着いたのか、少し顔色も良くなったようだ。


「私の名前はシルフィールといいます。種族はエルフです。」


「俺は旅人のアスクといいます・・・シルフィールさんは、この山に住んでるんですか?」


「いえ、この先にあるダリストンという町から来ました。」


 ここから見えるあの町はダリストンというらしい。食事をして落ち着いたのか、笑顔が出始めた彼女がそう答えた。。


 前世の知り合いの中にはエルフもいたのだが、全体的に細くて肉は食べなかったと記憶している。だが、目の前にいる彼女は、美人で金髪で耳が尖っていて色白なのは同じだが、食べた肉の栄養が主に目の前にそびえ立つ二つの山に多く注がれているのではないだろうか・・・などと想像してしまう程のお宝を装備している。


「命を助けて貰った上に食料まで御馳走して頂き、本当に有り難うございました。このお礼は後日必ず致します。」


 うつむく彼女の胸は深い谷間を刻んでいた。俺はそれを2秒だけ凝視してから、


「気にしないでいいですよ。困ったときはお互い様ですから。」


 と紳士的な言葉を彼女に返した。


「でも、町からこんな山まで何しに来たの?」


「私がお世話になっているシスターが経営している孤児院の子供達が、ザバネゴ病という病気になってしまいまして、その治療薬に使う「セブリ草」が町のどこにも置いていないので、私がここまで取りに来たんです。」


「子供達が一度に病気になるなんて、大変な事態ですね。それで、セブリ草は見つかったんですか?」


「それがですね、山に着いてすぐに食料と矢をを落とした上に、道に迷ってしまって。その後やっとセブリ草を見つけたと思ったら、今度は崖から足を滑らせて落ちてしまい、運悪く真下にいたオオキバイノシシの上に落ちたのがさっきです。」


 ・・・エルフなのに山で遭難したのか。色々と俺のエルフのイメージが崩れるな・・・。


 それからセブリ草を見つけたという場所まで二人で移動する事になった。


「アスクさんはどちらまで行かれるんですか?」


「俺は旅人なので、ダリストンを観光するつもりです。」


「じゃあ町に着いたら、今日のお礼に町を案内しますね。」


 という事でシルフィールに観光案内をして貰う事になった。


 それから2人でセブリ草を発見した場所を探しに行った。


「あっ、ここです。アスクさん、見つけましたよっ。」


 シルフィールが言った通り、人数分は十分にありそうな量のセブリ草を見つけた。


「早速採ってきますので、少し待っていて下さいね。」


 そう言って採取し始めたので、静かに見守っていた。よく見ると俺の近くにもセブリ草が生えているのを発見したので、一応アイテムボックスに入れておいた。


 落としていた矢も見つけ、目的の物を手に入れたので、早速ダリストンへ向けて出発する事となった。本来は一人旅の予定だったが、ダリストンまで楽しく行けそうである。

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