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芝居

「魔王、俺は魔力がほとんど尽きたんだが、負傷した町の人達を助けられないか?」


 魔王の返事は予想が付くのだが、一応聞いてみた。


「魔王である俺様が人間を助ける? んな事する訳ねーだろ??」


 やはり予想通りの反応だったが、町のみんなを助けるために一芝居打つ事にした。


「いや~それがな、魔王が復活する時には魔界の扉を開くらしいんだ。」


「ん?・・・そうだな。前世ではそうだった。」


「この世界の魔王は、扉を開く時に10万人の人間の魂をその扉に一度に与えないと開けないらしいんだ」


「なんだと? いや普通に押せば簡単に開くやつだぞ、あれは。」


「この世界の魔王は虚弱体質らしくてな。」


「そうなのか?・・・そんなひ弱な奴の体を貰って大丈夫なのか、俺・・・。」


 少し考え込む魔王・・・だが気を取り直して、


「まあいいだろう。この世界の魔王とやらが復活する時に、その場所で人間10万人用意出来ないと俺様が困るからな。人間はしばらく殺さないようにしよう。」


 といいながら俺に向かって、町の中心の地面に突き刺さっている石像の所まで行くように指示をした。


「俺は広範囲の回復魔法を持ってない。だからこの石像から瘴気を吸ってお前の魔力を回復させる。」


 石像に左手で触れると魔王は瘴気を吸い始めた。一気に瘴気を吸い取られた巨大な石像は粉々に砕け散った。やがて魔力譲渡魔法を唱えた。


「ディスフレイン」


 すると目の前に魔力が渦巻いた黒い球体が現れた。


「それに手を当てたまま、回復魔法を使え。」


 球体に手を当ててからステータスを確認すると俺の魔力が全回復している。それと同時に俺の魔力量では唱えられないはずの広範囲最上位回復魔法が使用可能状態となっている。


「広範囲最上位回復魔法 ディアエクスフィアル!!!」




 辺りは眩しい光に包まれ人々の怪我は回復していった。


「こ・・・これでどうだっ・・・?」


 魔力を使いすぎた魔王は疲れて眠りについたのか、反応が無くなったので装備を解除すると左手は元の姿に戻った。


 結局すでに死亡していた数十人を除いて全員が助かった。結構重傷の人もいたが、上位回復魔法のお陰で千切れた腕まで生えてきたらしい。さすがは魔王だ。


 孤児院の子供達の遺体は丁寧に埋葬し、シスターと共に祈りを捧げた。


 シスターはその場でポーションを飲ませていたので体の傷は回復していたが、心の傷が深いので取り敢えず町の治療院に入院した。後日遠くの都市にあるシスターの姉が経営する治療院へ、転院することになった。


 ジャゴールからお金を受け取っていた町長を副町長が逮捕し、大量に発生した魔石を早速お金に換えて、町の復興に使われる事になった。


 シルフィールの店を見に行くと店は完全に倒壊し、寝る場所がないので彼女も金の蛙亭に泊まる事になった。


 金の蛙亭は見た目以上に頑丈なのか、魔獣も運良く来なかった事で被害はほとんど出なかったらしい。


「シルフィール、大変だったね?・・・でもあんたが無事で良かったよ・・・本当に。」


 クラウレがシルフィールを強く抱きしめる。しばらくしてクラウレが思い出したように口を開く。


「そういえば宿泊なんだけど、今はどこの宿も自宅が倒壊した沢山の人達が泊まりに来てて、ウチも満室になったの。シルフィールを私の部屋に泊めてあげたかったんだけど、親戚の子供達も避難して来てるから、私の部屋もギュウギュウになっちゃったのよ。」


 予想はしていたが、やっぱりそうなるか・・・。


「でね、アスクさんは元々明日まで払って貰ってるから勿論部屋は大丈夫なんだけど。」


「・・・シルフィールと同室で泊まってくれないかな?」


 親友を想うクラウレの優しい言葉だが、その笑顔が心なしか楽しそうにも見えた・・・。

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