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16 不審人物を捕らえられない無能ども(※シュヴァルツ視点)

 ったく捕まえられねぇだと?! 女ひとりだぞ、女! 下町のヤツにやらせたのが間違いだったか、本当に使えねぇ奴らだぜ。


 あぁっ、イラつく! せっかく順調にきてるのに……くそ。このままじゃあ婚約を早められねぇ。


 後ろ盾はもういい。婚約の話が内々に進められてからは、マリアンヌの話は途端につまらねぇものになったが、女の話なんざそんなものだ。


 もう悲しむ姿を見せるのにも飽きてきたしな。とはいえ、一応父上や兄上や貴族たち……つまり、王宮では神妙にしているがな。


 俺はそれなりに腹芸はこなす方だと思っちゃいるが、息が詰まりそうだ。本当に手がかかりやがる、殺してまで俺を苦しめるとはなぁ、リディア……。


 案外生きていたら、面白かったかもしれねぇな。いや、これは感傷だ。殺しといて感傷に浸る? ありえねぇな、自分で自分が気持ち悪いぜ。


 金の入った袋で頰を叩いて民を動かし、程々に富ませながら税を巻き上げて、貴族の奴らで金を回させて俺が好きに遊ぶ! その為に王になるんだよ、国の治世なんかはな、金で人を雇って動かしゃ済む話だ! 俺はただ! ただ贅沢して好きなことして大往生して死ぬんだよ!


 っはぁ、それでリディアを殺したのに、この喪中ってやつぁ人の気をおかしくさせる何かでもあんのかね? 本当にマリアンヌの話はつまんねぇし、後ろ盾以上の価値を感じねぇ。マリアンヌの親父の宰相と結婚してぇくれぇだわ。


 おぇ、想像したら気持ちわりぃな……ねぇわ、まだそれなら中身空っぽ脳内お花畑のマリアンヌだな。セットで宰相と中立派の貴族がついてくる。


 そのためにゃ我慢だ。我慢して、我慢して……あぁ、そうだとも、リディアと婚約が決まった時から我慢していた。


 下町で遊びはしたが、今はそれもできやしねぇ。だから鬱憤が溜まってんだ。それだけだ。


 しかしまぁ、手柄がたてられねぇならこのまま喪が明けるのを待つしかねぇか……。正規兵を動かした方がよかったか? だが、それじゃあな……、なんの咎もねぇ女だった時のリスクがたけぇ。


 俺には自分だけの力で……金で人を動かせる力があるっつーのも匂わせられねぇ。俺には人が動かせる力が、どう金を使えばいいか分かってるという、どう人を扱えばいいかわかってるという、力があるところが見せられねぇ!


 忌々しいリディア。それでいて、死んでなお俺に貢献するリディア。


 お前が死んでもまだ脳内花畑のまんまなら、お前こそが俺の幸運の神になってくれ。


 何でもいい、どんな手段でもかまわねぇから、俺に後ろ盾を、地位をよこしてくれ。


 お前が口癖のように言っていたノブレスオブリージュ。俺以上に実行できる奴がいると思うか? なぁ、どうせ天国に行っただろうリディアよ。


 お前のその完璧なまでに吐き気のするお貴族様思考で下界を見下ろして、真に国を豊かにする王は誰か。


 それは俺だと! シュヴァルツだと! 裁定をくだせよ!


「……リディア」


 俺はクソ久しぶりにあの女の名前を呼んだ。なんとなく、聞こえるんじゃねぇかと思ったが。


 クソが。これも感傷だ。


 焦るな。計画通り以上の成果は出ている。5年我慢したんだ。


 あと2ヶ月。そしたら、俺の王位継承権第一位までもう少しだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 書かれるのは、リディア、リディア、リディア。 どうしてこんなにリディアに執着して思い浮かべるのか分からないです。リディア、過去の女なのに。
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