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11 私、いつの間にか王都まであと少しですわ

 報奨金をいただき、乗り合い馬車で進む事1週間。やはり、自家用の馬車でないと様々な街に泊まる事になるので思うようには進めない。


 しかし、徒歩よりはずっとマシだ。山賊も出ないし、ご飯も食べられる。狭くて硬いけれど清潔なベッドで眠れるし、そろそろ私の方が不潔で申し訳ないくらいになってきた。


 生命神様の加護のおかげなのか、私の体は汚れがつきにくいようだ。正確には身体から出る老廃物という物がつきにくいというのだろうか。


 身体の方は臭くない……と、思うのだけど、さすがに着の身着のままで服はだいぶ臭ってそうな気がする。はやく王都に……実家に帰らなければ。


 シュヴァルツ殿下にお会いする前には一度ドレスを干して、風にあてて少しは臭いを飛ばした方がいいかな?


 でも、落とされた時の格好で会いに行かないと、私の偽物だとか言われてしまうかもしれない。


 さすがに崖から落ちたということは死んだということくらい、あの屋敷の家臣が進言しているはず。それならば、私の捜索より先に王都に戻って報告をしてるはずだ。だから私は一人で王都に戻ると決めたのだし。


 加護を持っているかどうかは、神殿で神官様に診てもらうしか方法はない。私が加護持ちだとは、親も知らないことだ。私だって知らなかった。


 何か特別なことがあった人が、それを確信するために神殿で診てもらう。わざわざ私は確認するほど特別なことはなかった。


 崖から落ちても無傷、剣に斬りつけられても剣が折れ、暴行を加えようとした人の方が怪我をする。


 うん、これは特別だ。ちゃんと神官様に認定してもらおう。


 その後ろ盾と、私が私である証明をするため、汚いけれどこのままの姿で会いに行くしかない。


 乗り合い馬車の距離は日に日に短くなる。王都が近くなるにつれて、街の数も増えてくるからだ。


 シュヴァルツ殿下と私とで旅をした時は通り過ぎた街もいくつかあった。路銀はまだ残っているし、このまま王都まで乗り合い馬車と宿屋でご飯とベッドを借りて行けばなんとかなるだろう。


 ……シュヴァルツ殿下が、またほんの冗談のつもりで誰かを崖から落とさなければいいのだけれど。いえ、きっと他の家臣がそこは進言したはず。


 普通、死にます、と。


 ショックを受けていらっしゃらないかな……。私が死んだと聞いて一番ショックを受けるのは両親で、次はマリアンヌかな。ヴァイス殿下もお優しくしてくれていたから、悲しんでくれているかも。


 でも、知らずに殺してしまったと知った殿下は今頃罪悪感で震えているかもしれない。


 愛してる、さよなら。そうは言っていたけど、笑っていた。冗談のつもりだったんだろう。王子として育って、私より大事にされてきたのだから、仕方ないと言えば仕方ない。


 だけど、なぜかしら。あの時の殿下の笑顔、どうしても忘れられない。


 とっても無邪気で……とても醜かった。あの笑い方もいけない、とちゃんと言ってあげないと。


 婚約破棄されたのに、私なんでこんなに元気なんだろう。シュヴァルツ殿下とは政略結婚だったからかな。


 さよなら、と言われたからかもしれない。私はとても大事に思っているけれど、そう……、まるで弟のような。


 連れ添うなら、冗談でも女性を崖から落とすような真似はしなくて、優しくて、仕事に実直で真面目な人がいい。愛してると言われても、シュヴァルツ殿下とは怖くて婚姻はどの道できない。


 ……ん? なぜか一瞬ヴァイス殿下のお顔が浮かんだ。なぜだろう。


 とにかく明日も早くに馬車に乗らないと。おやすみなさい。

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