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卒論逃避行

「ん〜〜〜、やっぱり山での1人ハイキングは最高だな!締め切りにうるせえ教授にも絡まれずに済むしな。」


俺の名前は一色義明、普通の大学四年生だ。今は期限が差し迫っている卒論から現実逃避するため、1人で趣味のハイキングに興じていた。


「それにしても昨夜のあの妙にリアルな夢は一体何だったんだ?まるで俺自身が別の人間としてあの夢の世界を生きていたような感覚だった。」


俺が今日ハイキングにきた理由は単に卒論から現実逃避するためだけでなく、昨夜の夢をキッパリ忘れるためでもあったりする。


俺が見た夢でのあの焦土化した大地の景色、人間の血の匂い、けたたましい銃弾や怒号、悲痛な声。

全て五感ではっきりと認識できるほどリアリティに溢れていた。あれは単なる普通の夢ではない、なにかもっとヤバイ代物であるということを。


「それに最後、夢から醒める瞬間、俺は確実にあの砲弾を食らっていたよな。目が覚めたから良かったが、あれがもし現実だって考えただけで肝が冷える。全く今年もあと3週間で終わるってのに縁起の悪いもの見ちまったな。これが変な前触れじゃなきゃいいが、念のため帰りに近所の神社にでも寄ってくか。」

と突如として激しい雷雨が俺を襲った。


「って言ったそばから!なんてタイミングで降ってくんだよ!ちっ、ハイキングは一旦中止だ。どっかで雨を凌がないとな、でもここらで避難できる場所なんて検討もつかねぇぞ!クッソ!こうなるんなら家で大人しく深夜アニメ鑑賞会にしとけばよかった。」


深い後悔に苛まれながら、俺は避難場所を求め、森を彷徨っていた。すると運良く避難できそうな洞穴を見つけた。


「はぁぁ、なんとか助かった。まさかこんなとこ洞穴があるとはなぁ、ラッキーだった。いい感じに広いし、汚くもないから横にもなれそうだな。この調子だと雨が止むまで時間かかりそうだ。よし、暇つぶし用に持ってきた漫画で時間潰すか。」


持ってきたリュックサックを地面に置き、寝そべる準備をした。するとふと視界に何か四角い本のような物体が目に入った。


「なんだこれ? なんか図書館に置いてありそうな洋書っぽいけど。見た感じ相当年季が入ってそうだ。表紙も霞んでいてよくわからないけど、ん? 微かに読める文字があるな、なになに "ミスシーリングヘルト"? ってどう言う意味なんだ?これ。なんか察するにいかにも中二病発症した高校生が考えそうな響きだ。もしかして誰かの黒歴史ノートだったりするんじゃ。中身は俺の右腕がどうたらこうたら書いてあったりしてな。まぁ、とりあえずめくってみるか。」


無駄に分厚い表紙をめくり、本を開いた。すると見開き1ページ目の真ん中に、とある一文が添えられていた。


「なんか書いてあるぞ、"ようこそ混血の英雄よ、理不尽と不平等が渦巻くこの世界に、貴公がこの混沌とした世界に真の正義をもたらしてくれることを大いに期待している。"ってなんだこのくっさい一文は、やっぱり誰かの黒歴史ノートじゃないか、くだらね。なにが混血の英雄だよ。異世界系のラノベじゃあるまいし。あー、時間の無駄だったわ。気をとりなおしてこの前買った漫画の続きでも読み始めるか、丁度いい足置き台も手に入ったしな笑」


呆れて黒歴史ノート閉じようとすると急に強烈な眠気が俺を襲った。


「アレっ? 可笑しいな、すっげー眠くなってきた。なんでだ?まさか最近よく徹夜で卒論書いたり、オンラインゲームしてたりした疲労が影響してきたか?多分そろだろ、きっと。 一旦漫画は読むのは後にして少し横になるか。まだまだ時間はたっぷりあるし、起きたら雨もあがってるだろ。」


不摂生のせいし、この不可思議な眠気には一切の疑念を抱かぬまま、リュックサックを枕代わりに、少しばかりの睡眠を取ることにした。

まさかこれがこれから起こる全ての始まりなるとは知らずに、俺はリズムよく寝息をたてていた。


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