Love song
改札口を出ようとした時
「ん?」
人混みを掻き分けて その人 を探した。
見間違いか…
「待った?」
「いや 今来たとこ」
付き合い始めてもう3年になる。
高校2年の時から…
「今日はどこ行く?」
「新しく出来たモール行って服買いたい」
「…んじゃ そこ行くか…」
あまり乗り気じゃない…服選びの めんどくささ それがなんとも…
「これなんかどうかなぁ」
「いいんじゃない…」
「これは?」
「いいんじゃない…」
「ほぉ〜悟りを開いたか?心眼で見てるのかな?」
「?」
「こっちも見ないで返事しないの!」
「ごめん…」
だって…このやり取りをかれこれ2時間もやってる…
「んじゃ〜これ」
やっと決まった。
「と…」
(と?)
「これとこれ」
(おぉっと そうきたか…)
「はい!」
俺に寄越す…
「やっぱりか…」
「んじゃ 今度はあんたの買い物ね」
「これでいい」
「子供か!」
もう疲れた俺は見もせずに指を指していた…そこにあったのは マンガのような キャンディ…
今日は、付き合い始めて丸3年
記念日ということで お互いの欲しい物をプレゼントし合おうと出掛けたのだった。
服3着とグルグルキャンディ…割りに合わん…
でも買い物が やっと 終わった。
「今度はどこ行く?」
「よし!あそこ行こう!」
「あそこじゃわからん…」
「えぇ〜 わかんないの?」
あそこ で分かる人が居たら会ってみたい…
イントロクイズでも ちょっとはヒントがある…
「私達が付き合い始めたとこ」
何故そう最初から言わない…
そこは、別段何の変哲も無い公園。
「あの娘可愛いよなぁ」
「どれ どれ」
「あの右側から2人目」
「はぁ?お前ブス専か?」
「…箸どっちに持って飯食う?」
「こっち」
「そう!そっちが 右 だ!」
「おぉ!間違ってた…」
「…」
「おぉ!可愛い」
学校の屋上から女子高生の集団を 覗き見 してる俺達。
俺達の学校は男子校。
「好きだなぁ…」
「興味ないのか?」
「興味あるなしじゃなくて こんなとこで見てないで直接言えばいいじゃん」
「出来ない…恥ずかしい…喋れない…」
1人で 妄想 して照れてる。
男子校とはそういうところだ…
「女子校も同じだよ!学校に行く時 帰る時いつも男子高生見てたんだから」
と笑ってる。
「勘違いすんなよ!俺は そんなに 見てないぞ!」
半分は 見てた と認めてた。
「私も そんなに は、見てなかったよ」
こいつも 半分認めた。
「俺 告白しようかなぁ…」
「おぉ 言え 言え」
いつもの 悪たれ3人組。
屋上から見てた 例の彼女 に告ろうとしてる。
「一緒に来て…」
「何で俺らまで…」
「恥ずかしい…」
興味本位でついていく事にした 俺と 右と左がわからない こいつ。
作戦を練る。
「屋上から見てる限り、必ず あの公園を通る!」
「ただ、あっちはいつも4人でいる」
「そこが問題だ…」
「別にいいじゃん めんどくせぇなぁ!当たって砕けろ!」
「えぇ〜…」
俺の一言で 魚雷発射!
今から 告白する人とは思えないほど 顔色が悪い…
「ちょっとトイレ…」
「またぁ?5回目だぞ!」
ここに来てから まだ 30分。
「来た!」
右 もわからない ヤツ が南を見ている…
「そっちは 南!それに 意味が違う!」
告ろうとしてる コイツは震度3
「行ってこい!」
背中を押してやる。
女子高生4人組の前に不審者登場!
身構える4人組。
アイツ は、まともに見る事も出来ず終始俯いている。
意を決したのか
「お お 俺と付き合って下さい!」
言った〜!ただ…
「私でよければ」
相手からの快い返事…
「本当に…?」
アイツが顔を上げる…
俺達は笑い転げる。
アイツの前には…「ブス専?」と言われた その人が…
他の3人は
「良かったじゃん!」
と盛り上がってる。
間違いでした と言えない状況…
その帰り道
「今度の日曜に会う約束させられた…」
「やったな!念願の彼女!」
「人ごとだと思って…」
「何故間違った?」
「いや…前見れないから…右から二人目のところへ…」
「はぁ〜?朝礼の整列じゃねぇぞ!いつも 並びが一緒なわけないじゃん!」
腹がよじれるほど笑った。
月曜日
「どうだった?念願のデートは?」
「ふっ…」
何だ?この勝ち誇った笑いは…
「私服 可愛いかった〜〜」
「?」
「フリフリのスカート履いて来て 可愛いかった〜〜」
「私服だと変わるのか?顔?」
「顔はあのまま」
俺達 2人はそれ以上聞かなかった…
私服で喜んでいるコイツの幸せそうな顔。
「そうだったの?」
「今だから言うけど…アイツ間違って告ったんだよ」
「へぇ〜〜知らなかった…じゃあ 誰に告白しようとしたの?」
「今度の休み暇?」
「ん?」
「ついて来て」
「はぁ?何で俺が?」
「話が続かない…」
「それと 俺が行くっての関係なくねぇ?」
「あっちも一人連れて来るって…」
「んじゃ アイツ連れてけよ」
右と北がわからないアイツ
「ヤダよ…あんな天然連れてけないよ」
全く…折角の休み 何故コイツのデートに付き合わないといけない…
「おい!臭えよ」
「いいニオイって言ってよ」
さっきから コロン なる物を塗ったくっている…
男のくせに…
「ヤッホー!」
来た…私服が可愛い彼女…
連れて来た ツレ は、コイツが告ろうとした 顔 が可愛い人。
(おいおい…それは残酷でしょ…)
「今日 も 可愛いね 服」
「でしょ〜」
嫌味で言ったのか?それとも本気で…
まぁ 2人の問題だし…
それより コイツの眼中には 憧れの君 が入ってなかった…
(おいおい!どうでもいいけど… 俺達 の存在忘れてないか?まさか…コイツ これ を見せたくて誘ったのか?)
コイツの憧れの君 が微笑んで2人を見てる。
(笑ってんじゃなくて 微笑んでる?普通笑うだろ?この滑稽な2人見たら…)
「俺 帰るぞ!」
「えぇ〜!」
「普通にコント…話してるじゃん!」
「あのぉ…」
「ん?」
コイツの 憧れの君 が声をかけてきた…
「折角来たんだし…」
「ん?」
(これ以上コント見てても…)
「一緒にどこか行きません?」
「はぁ?俺と?」
「うん」確かに笑顔が可愛い…
(コント見てるよりはいいか…)
その人は 俺の手を引っ張って 芸人2人に気付かれないように公園を出た。
「ねぇ 誰と間違って告白しちゃったの?」
俺は黙って指を指した。
「えぇ〜!私?」
頷く。
「良かった〜…私じゃあの人の個性殺しちゃう!それに…」
俺は笑った。
確かに そうかもしれない。
あの人以外で アイツ の個性を最大限まで引き出せる人はいないだろう。
「間違えて告白して 今じゃ夫婦だもんねぇ」
そう…
アイツは 高校を卒業して すぐに子供が出来 結婚した。
世の中何があるかわからない…
「なんで昨日帰ったの?」
「あのな…俺はコント観に行ったんじゃねぇっての!」
「コント?芸人近くに居たの」
「あぁ 居たさ!俺の目の前に今日はピンで」
「えっ?どこに?」
キョロキョロしてる…
「もういい…頭痛くなってきた…」
「大丈夫?」
もしかしたら
左右 東西南北わからないアイツより コイツの方が天然だな…
「あいつ連れて来た人も帰っちゃったしさ…俺どんな人か見てないのに…」
(マジか…恋は盲目ってか?)
「見なくて良かったよ…」
「可愛いくなかったの?」
「見なくてよかった」
「あれから 私達付き合い始めたんだよね」
「そうだっけ?」
「ん〜〜多分…」
そう 2人共それが定かではないのだ。
あの日 俺の手を引っ張って 逃げた あの後の記憶が思い出せないのだ。
ただ…楽しかったという事だけは 2人共覚えていた。
その後、また会う約束をして帰ったところからの記憶はあるのだ。
「不思議だよね〜!」
「確かに…」
2人共 その数時間 の 記憶 がただただ楽しかったというだけの記憶…
それが どういう風に楽しかったのか…
いつも この話題になると 考え込む。
普通なら
「付き合って下さい」
「うん」とか「いいよ」と返事をして
カップル成立なのでは…
その件がなく3年が過ぎる。
「いいじゃん!どっちからとかなくても」
「だよね」
そんなことは気にする事ではない。
俺の側にこいつが居る。
こいつの側に俺が居る。
今となっては 夫婦漫才 のおかげで 始まった恋物語。
「アレ?なんで一緒に居るの?」
「まぁ そういう事だ」
「えぇ〜!いつから?」
「おまえのおかげだよ」
「えっ?なんで?なんで俺のおかげ?」
「?多過ぎだ!」
「えぇ〜!だって…」
「服 が可愛い人は?」
「今…来た〜!」
相方が来てご機嫌になる。
「今日も 服 可愛いね」
「でしょ〜!」
始まった…
「アレ?彼氏?」
服 が可愛い人が 顔 が可愛い人に聞く。
「うん」
顔 が可愛い人が答える。
「俺の友達なんだよ」
服 が可愛い人の相方が言う。
「そうなの?へぇ〜〜 いつから?」
このコンビは ? が多過ぎ…
「んじゃ!」
俺達が去ろうとした時
「Wデートしよう」
服 が可愛い人が言った…
顔 が可愛い人は上目遣いで
(どうする?)って俺に聞いてる
俺は
(無理)と目で合図する。
(言って)
(おまえが言えよ)
(えぇ 言ってよ)
(俺苦手なんだよ)
こんなやり取りをして 振り返ると
そこにはもう誰も居なかった…
まるで 俺達が バカップル のように…
ってか 誘っておいて おいて行くな〜〜…
でも よかった…
高校卒業後 彼女は美容師 俺は シンガーソングライターを目指した。
彼女の夢は叶うだろう。
俺は…若気の至り…世の中そんなに甘くないのはわかっているつもりだ。
ただ やらずに諦めるなら やって打ちのめされれば目が覚めるだろうと…
「専門学校には行かないの?」
「行かない…知り合いの美容室で働きながら資格取るつもり」
「そっか」
2人で夢に向かって進み出す。
俺は 仲間とライブハウスに頭を下げながら 出演の交渉に駆けずり回る。
シンガーソングライターとは
自作の音楽を歌い聴いてもらう。
学生時代の経験を活かし 曲作りに専念した。
俺達の歌は それなりに人気が出て来て収容人数を増やしていった。
そうなれば 頭を下げて歌わせてもらっていた ライブハウスから 逆に出演依頼がくるようになる。
ある意味 成功したのかもしれない…
その頃になると
俺達は 忙しくなり 彼女に会う回数が日に日に減って行く。
今日が付き合い始めて 3年目
時間を作って久しぶりに会ったのだった。
「さすが成功者!」
「ん?」
「こんな素敵なホテル予約しておくなんて」
「馬〜鹿!記念日だから無理したんだよ。それに成功者じゃねぇし…」
「でも一歩ずつ 夢 に近づいてるね」
「ん〜…何が 正確 なのかがわからないんだよ。音楽をやりたい それで やってるんだけど…確かに 大勢の前で歌うのは 気持ちいいんだけど 始める時の 気持ち を忘れたって言うか…」
「私の友達も聴きに行ってるみたいだけど スゴイよかったって言ってたよ!ラブソングが特によかったって」
「そっか」
彼女の唇の感触 肌の温もりを感じたのは その日が最後となった。
それからは ラブソングを作ることが出来なかった。
失恋ソングしか…
皮肉にもその失恋ソングがTVのCMソングに起用され 全国に俺の歌が広まる。
嬉しくはなかった…
「あんたの 夢 これからどんどん大きくなっていく その時の負担になりたくないから…今日で私達終わりにしよう」
あの日 涙を溜めて笑顔で言われた最後の言葉
俺が 詩を作れたのは あいつ がいたから…
その証拠に 今は 失恋ソングしか書けない…
詩を書く時は 必ず あいつ の事を思って書いていたのだ。
俺は 久しぶりに 夫婦漫才師 に会った。
「スゴイね〜!あの曲 毎日 車で聴いてるよ」
「そうか」
「なんだよ…あんなに流行ってんのに浮かれない顔して 最近連絡もよこさないしさ」
「こんにちは」
出た!服!それ の側にいる…子供
「女の子だっけ?」
「男の子だよ」
フリフリのスカートを履かされてるクリクリ坊主の可哀想な3歳児…
「あんた!買い物行って来るからゴミ捨てておいてよ!」
「わかったよ…」
「かなり敷かれてんな」
「子供出来たら変わっちゃった…」
「ってか…子供大丈夫か?」
「可愛いでしょ」
俺はそれ以上言わなかった。
コイツの美的感覚…まぁ 人それぞれの価値観だから…
「ところで アイツ 今何してるんだ?」
あの 左右 東西南北のわからない アイツの事を聞いた。
「アレ?知らないの?アイツ今タンザニアで生活してるよ」
「はぁ?アフリカの?」
「そう」
「何故に…」
「アメリカンドリームを探しに行くって言って」
「?」
「アフリカに行った」
久しぶりに笑った。
俺の周りこんなのばっかり…
人にウケる曲が作れたのはやっぱり あいつ のおかげだった。
その日の帰り 改札を出る時に あいつ を見かけた気がした。
(見間違いか…)
「久しぶり」
振り返ると そこに あいつが居た。
やっぱり見間違いじゃなかったんだ!
「今 何してんの?」
俺達は 駅を出たとこの店に入っていた。
「今日 試験だったんだ」
「手応えは?」
「もちろん」
「やったじゃん!もうちょっとで 夢 叶うね」
あの頃と変わらない笑顔
「そっちは もう既に叶ったもんね」
「叶ってないよ…」
「ほら!この曲」
店から 俺の曲が流れてくる。
「こんな曲流行る方がどうかしてるのさ」
「どうして?一日中どこかでは必ず流れてるよ」
「こんな寂しい曲」
「寂しい曲だけど…いい歌詞じゃん 何度か泣いちゃった…」
「そうだろうな…おまえを想って書いた 詩 だし」
「失礼!私こういう者ですが…彼女ですか?」
マスコミだ…こんな俺にまで…
「違います!学生時代の友達で さっきばったり会っただけです」
俺を庇おうとしてる…
「ごめんね…私 帰るね」
席を立って店を出て行く…
周りの人達も俺に気付いた…
そんなの関係ない…
俺は 彼女を追って店を出る。
「待てよ!」
彼女が立ち止まる。
さっきのマスコミも追いかけてきてた。
「また俺の気持ちは 無視 か?」
野次馬達が集まりざわついてる。
「俺のこと嫌いか?」
俺に背中を向けたまま大きく首を振る。
「おまえの 夢 に俺は邪魔か?」
首を振る。
「俺は あんな歌 を作りたいんじゃねぇんだよ!あんな歌で流行たくねぇんだよ!そんなんで流行たって嬉しくねぇんだよ!俺の 夢 はな 流行なくてもハッピーエンドなラブソングなんだよ…聴いた人が 自分もこんな感じの恋がしたい!そう思える曲を作りたいんだよ…でも 今は そんな曲は作れない…おまえが側に居てくれないと…勝手に俺の前から消えるなよ…嫌いじゃないなら俺の側に居てくれよ」
後ろ姿でも泣いているのがわかる。
野次馬達も静まり返ってる。
「いいか!一度しか言わないからな!もう二度と言わないからよく聞けよ!」
大きく息を吸い
「俺はおまえを愛してる!だから結婚してくれ!」
彼女は振り返り俺に抱きつき泣いていた。
今度は さっきとは違い 小さな声で 彼女の耳元で囁くように言った
「ダメか?」
「ううん」
俺の唇に あの日以来の感触があった…
「やる〜!こんな公衆の面前で…」
「馬〜鹿!こんなの誰も買わねぇよ…それより今日は あの カミさんは?」
「そろそろ帰って来ると思うよ」
車で帰ってきた。
「ほ〜らね」
車から降りてくる コイツの嫁…
「パンツ!」
そう言ったのは俺の婚約者
「あら〜久しぶり」
「久しぶり〜じゃなくてパンツ見えてるって!」
「あら ヤダ」
「だから 短過ぎるって言ったのに…」
(おいおい…降りても見えてるぞ…)
立っていても丸見えなのだ…
「可愛いでしょ?」
旦那の方が俺に言う。
もちろん 無視した。
「今日はどうしたの?」
「これ見てよ」
「誰これ?」
「この 2人」
「えぇ〜!なんで雑誌に載ってんの?」
俺を知らないみたいだ…
いや 知ってはいるんだけど…
俺が何をしているのかは 知らないのだ。
なんか 安心した。
「おまえが聴きたくない歌No1を作った人だぞ!」
なんだそのランキング?
「えぇ〜!そうなの?だってあの歌聴くと涙で前見えなくなって 運転出来なくなっちゃうから」
「もう作んないよ」
「えぇ〜!俺はあぁいうの聴きたい」
全く えぇ〜! えぇ〜!うるさい夫婦だ。
「えぇ〜!あの曲作ったの?」
時間差でかなりビックリした…
「えぇ〜!今 俺言ったじゃん!」
彼女は終始笑顔だった。
「って事でよろしくな!」
「わかった…でも俺達が友人代表なの?」
「期待してるぞ!なんなら 新郎新婦の友人代表スピーチ一緒にやってくれ」
「えぇ〜…それ面白そうだね」
「是非 お願いします」
彼女が楽しげに笑う。
「やっぱり こっちの方がよかったなぁ…あの時なんで間違ったんだろう」
「ごめんね あの時 私 言われても断わってた…だって…私 この人が好きだったから…」
「?」
「そうだったの?な〜んだ…でも 良かったね!好きな人と一緒になれて」
そう言って笑った。
ってか今の…
俺は 初耳だぞ!
コイツの家の中から
「あんた!なんで同じ雑誌10冊も買ったの!」
と怒鳴り声がした。
「うるせぇ!欲しいから買ったんだ!何が悪い!」
口答えしたのを初めて見た。
「なんか言った!」
「ごめんなさい…」
全くコイツ達は 11月22日だよ…
「後 アイツの居場所知ってるなら これ 送ってくれないか?」
「いいよ!でも…来れるかなぁ?」
「来れない時はしょうがないよ」
「いや…来ようとはすると思うんだよ…でも」
俺もちょっと心配になった…
「まぁ 月に行ったりはしないでしょ?」
帰りの車の中で さっき の事を聞いた。
「あの2人はもう忘れてるみたいだけど…私が頼んだんだ」
「そうなの?」
「たまにね 帰りに見かけてさ いいなぁって…そしたら 例の告白事件の時に あんたはあの人について来てたから 友達なんだ!って思ってね」
「ふ〜〜ん」
「だからね 今度会うとき連れて行ってって頼んだの
もちろん あっちには あんたを連れて来るようにって頼んでもらってね」
「多分…あの時 アイツは そんな事忘れてたと思うぞ!」
「そうなの?危な〜!」
「まぁ 大丈夫だったろうけどね」
「?…何が?」
「まぁ…そういう事だよ」
「何それ?わかんな〜い」
俺も あの屋上でアイツが 可愛い って言う前から こいつに興味があったのだ。
まぁ この事はその内 こいつ に話すとしよう…
結婚式当日
「よっ!久しぶり」
「おぉ 来てくれたか!」
「ちょっと寄り道しながらな…」
「寄り道?」
「タンザニアを出発してチリとフランスを経由して昨日 日本に着いたよ」
「仕事か?」
「いや…」
俺はそれ以上聞かなかった…
そこへ アイツも来た。
久しぶりの悪たれ3人組揃い踏み!
「おまえの彼女?ロビーに待たせてるの?」
「違うよ!俺の女房さ」
「えぇ〜!結婚したの?」
「去年な」
「へぇ〜 馴れ初めは?どうやって出会ったの?」
「あいつがジャッカルに食われそうになってたとこを俺が助けた」
「へぇ〜…えぇ〜!ジャッカル?」
「そう!ジャッカル!」
2人の会話を聞いていて 俺は吹き出した…
「それにしても かなり日焼けしてるな…おまえの彼女」
多分…それは日焼けではない…
披露宴が始まった。
期待通り 友人代表のスピーチは異例の 夫婦漫才 が大ウケだった。
タンザニアの嫁を待たせておくのは 俺がちょっと不安だったので 急遽 席を準備してもらい 旦那 の隣へおいた。
「タンザニア帰るのか?」
「いや…このままこっちで生活しようかと思ってる」
「そっか…その方がいいんじゃないか?」
「おまえのカミさんは何て言ってんの?」
「あまり言葉通じなくて…」
「はぁ?結婚したんだよな?」
「ジャッカルから助けてから離れなくて…それからずっと一緒にいる。」
俺は不安になり助言した
「こっちで暮らすのはいいけど…手続きちゃんとしろよ それと…絶対目を離すな!」
二次会会場での会話だ。
「それにしてもさ」
「ん?」
「あの時 “俺は興味ねぇなぁ”って感じでいたくせに おまえの 相手 があの人なんだもんなぁ…ビックリしたよ」
そう コイツは さっきまで 俺の相手 を知らなかった。
そこへ 悪たれ3人組の 奥方様3人組が料理を持って同じテーブルに座った。
「今日は本当にありがとうございました」
俺の奥方が座る前にみんなに挨拶をする。
「いい披露宴だったね〜」
(あんたら夫婦のおかげで盛り上がったからね)
「☆%€÷¥♪#〆々…」
「おい 通訳しろ」
「わからない…」
俺は タンザニアの奥方に ただ…頭を下げた…
とりあえず笑顔で 「うん うん」と頷いてたから それで 正確だったのだろう…
「それにしても…おまえの嫁さん日焼けしてんなぁ〜!」
まだ気がついてない…
間違って告白して結婚までした奴
アメリカンドリームを求めて アフリカで ジャッカルがきっかけで結婚した奴
そして…
「疲れたか?」
「全然!楽しかった〜」
「そっか なら良かった」
「後悔してない?」
「あの時 あのまま別れてたら一生後悔してた」
「本当に?」
「俺の方が最初だったんだよ」
「何が?」
「いや…」
「えぇ!何よ?気になる〜!」
唇を重ねた…
「なんだっていいじゃん 今が幸せなら」
「うん」
いろいろあったけど最後に幸せを掴んだ俺達
「あんた!ゴミ捨てしてないよ!」
「ごめん…おっ!今日も 可愛い服だね〜!」
「☆$#6々○÷¥$%」
「そろそろ言葉覚えろよ…」
「よし!こんなんでいい?」
「OK!んじゃ 行ってくるよ」
髪をセットしてもらい ライブに出かける。
街の至る所から流れる 俺の新曲
『ラブ ソング』
♪「愛してる」その一言が言えなくて
それで 傷つけた事もあったよね
君は涙をいっぱい溜めて待ってるけど
どうしても言えなかったんだ
こんな臆病者でごめんね
君の心に目隠しをさせて
手を繋いで歩いてた
「あのね…」君が初めて泣いた
僕はその涙で気がついたんだ
僕は君を苦しめていた愚か者だと
君の涙が僕に勇気をくれた
こんな憶病者でごめんね
君の心に目隠しをさせて
手を繋いで歩いてた
目隠しを外すから 僕を見ていてね
一度しか言わないから よく聞くんだよ
「愛してるんだ 結婚しよう」
聞こえたかい? 涙で返事をする君♬