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レエンカルナシオンの悪夢  作者: 黒疾くろと
5/20

5.能力値…

再びエルーシア視点。

後ろの方以外は4話の別視点です。

 ギルドカードを作った後、3人に連れられ、自分のステータスをみた。

 私のステータスを見て、かなり驚いた様子だった。因みに私もびっくり。そして同時に、困惑した。

 だって、カレンが言っていたステータスの平均は200。対して私のステータスは、それを上回るものが複数あった。筋力と持久力は兎も角、魔力は1700ほど。魔力量に関しては、2000を超えている。

 スキルも(よくわからないが)かなり凄かった。『魔術』のレベルが最大。『魔術』のスキルが何の役割を果たすのか、細かくは知らないが、きっと魔法の発動を云々とか、その辺だと予想できる。『闇魔法』のレベルは7だった。多分相当な練度だと思う。

 私は過去に何をしてこれほどのレベルを手に入れたんだ?

 もしくは、生まれつき持っていたのか?

 わからない。どれも覚えていない。

 そしてレベル1の『魔力感知』。なぜ『魔術』と『闇魔法』のレベルが高く、どうして『魔力感知』だけ1なのか。おそらく、魔法は魔力量を魔力で操り発動するものである。操る魔力を感知できなければ、魔法は発動出来ない。

 称号スキルは、かなり、普通からすれば、おかしなものがたくさんあった。

『悪夢』、『災禍(わざわい)』…

 称号スキルとは、ある行動をすることで手に入る……のだと思う。それが正しいならば、私は一体何なのだろう。何をしたのだろう。

 そして『封印5/5』と『竜0/5』。読み方は、『封印5分の5』『竜5分の0』だろうか。

 封印されし竜……?…私が?……心当たりはない。すべて、何も、覚えていない。

 最後に『殺人』……。これはきっといつかの気持ち悪い豚ども2匹の事だろう。


 今わかった中で、一番自分が、知れて嬉しかったことがある。それは名前だ。

 私の名前は『エルーシア』。我ながらいい響きだ。夜の帳に光さす銀色の月のような。私はこの名前を直ぐに好きになった。

「ルナ……」

 クラウスが珍しく真顔だ。

「何?」

「お前、ステータス高いな!羨ましいぜ!」

 クラウスは、私の称号スキルを見たのだろうか。気を使ってくれているのだろうか。

「ね、ねぇオズ、『エルーシア』って……いや、後で話す。」

「ああ」

 ふと、カレンとオズの会話が聞こえた。

 私の名前が何かあるのだろうか。それとも、単に私の事を本当の名前で呼んで言っているのだろうか。

 気分が悪い。もう気を使われるのも、ステータスについて言われるのも嫌になって、全て消えればいいのにと思って魔水晶から手を離した。

 ………なぜ私は全て消えればいいなどと思ったのだろうか。

 希望どおり、ステータスの表示は石板から跡形もなく消えた。

「私が、怖い?」

 3人に振り返って、言った。

 すると、その質問には誰も答えずに、クラウスが口を開く…

「……俺は、貧しい村の出身で、頭も悪いし、力ばっかり強いだけで。でもこいつらは俺を見て軽蔑したり絶対にしなくて、対等な仲間として接してくれたんだ。だから、俺らはお前と今まで通り接する!な、オズ、カレン。」

 ……やっぱり気を使ってくれている。元気出せって事だろう。

 やはり、私のステータスは、3人の目に異質なものに映ったのだろう。

「そうよ、何も変わらないわ!」

「そうだな。」

 2人もそう言ってくれた。

「ありがとう」

 静かに、そう返事をした。


 ギルドの建物を出ると、通りの人は増えていた。

「ルナ、じゃなくてエルーシア、だったな。お前はどっちで読んで欲しいんだ?」

 クラウスが話しかけてきた。歩きながら答える。

「私はエルーシア、だったから。エルーシアが良いな。」

「そうか。改めてよろしくな、エルーシア。名前、わかって良かったな!」

「エルで良い。」

「了解。エル。」

「うん。さっきは、ありがとう。」

 クラウスは、一見馬鹿っぽく見えるけど、本当は思慮深く…ないかもしれないけど、気遣いのできる良いやつだ。

「あぁ?なんかやったか?」

 ……意識せずとも自然に出来ることはすごい事だと思う。

「え……?ならいいや。ありがと。」

「何だかわかんねぇけど、どういたしまして……?」

 するとクラウスが、後ろを歩いていたオズとカレンを振り返って言った。

「オズ、カレン!何話してんだ?」

「特に何も!大した話じゃないよ。」

「ところでよ、ルナ…じゃなくてエルが、エルって呼んで欲しいってよ!」

 そうだ。この二人にも言っておかなければ。

「うん。クラウス達から貰った『ルナ』の呼び方も気に入っていたけど、本当の名前が分かったから、それで呼んで欲しいの。」

 自分で言うのはちょっと恥ずかしかった。自分で顔が赤くなるのを感じながら、言うと、何故かカレンが吹き出した。何かあったのだろうか。鼻に虫が入ったとか……?

「ブフッ」

「うわっきったねぇ!」

「しょうがないでしょ!それにレディに向かってそれは失礼よ!」

 それは尤もだと思った。クラウスは少しデリカシーとか、礼儀とかもおぼえた方が良い。

「ルナちゃん…じゃなくてエル、冒険者のカードどうするの?」

「あれはあのままで良い。ルナのままで。」

 作り直すのが面倒なのもあるが、三人に助けてもらった事を忘れない為、という意味も込めて。

「それって機能するのか?」

 機能しなかったら、作り直すしかないか……

「どうなんだろうなぁ?カレン、わかるか?」

「さあ?魔力込めてるから身分証にはなるんじゃない?書類で確認されたら分からないと思うけど。」

 …らしい。少しほっとした。

 暫く黙って話を聞いていたオズが、口を開く。

「なぁエル、俺、『エルーシア』ってどこかで聞いた事があったんだが、お前の事か?」

 真剣な眼差しで、静かに聞いてきた。

「……知らない」

 知らない。もしくは覚えていない。忘れた。でも、知らない事は知らないのだ。私も、オズの目を見て静かに答えた。

「そうか…」


 その後、近くの店で昼食を摂った。なかなかの美味であった。


「あぁあうまかった!」

「そうね。また食べたいわ。」

「久しぶりのちゃんとした飯だった!」

「とても美味しかった。あの、ありがとうございました。」

「良いって良いって。」

 私が食べたドラゴン定食は、文字どおりのドラゴンの肉がおかずに使われた料理で、選ぶときに価格が気になったが、メニューの絵を見て、何故かどうしても食べたくなってしまった。なのでお言葉に甘えて、いただいたというわけだ。うむ。

 口の中に僅かに残る肉の味を頼りに、先ほどの思い出に浸っていると、オズが言った。

「今のうちに宿でもとるか。」

 近くにあった手頃な値段の宿に入った。中には幾つかのテーブルと椅子、カウンターがあり、そこには優しそうな老婆が座っていた。

「こんにちは。」

「いらっしゃい。」

「二部屋を、とりあえず二泊で。」

「あいよ。一部屋一泊銀貨3枚ね。満室じゃ無けりゃあ延長も出来るからね。一人銅貨5枚で朝食はいるかい?」

「お願いします。」

「はいはい。それじゃあ、二階の一と二号室。朝食は10時までて、食堂にこれを持って来れば出すよ。無くさんようにね。代金はここを出るときに受け取るよ。」

 そう言って、老婆はオズに二つの鍵と4枚の紙を手渡した。

「ごゆっくり。」

「よろしくお願いします。」

 オズはそう返事をして、階段へと向かった。

「とりあえず部屋に荷物おこうか。置いたら一階のロビー集合で。」

「うん。アタシとエルが一号室ね!」

「はいはい。これな。」

 カレンに鍵を手渡し、ちょうど階段を上り終わる。木製の床が落ち着いた雰囲気を醸し出す良い宿だ。

 私とカレンは一号室に入った。

 そこは二人部屋と思われる、質素で少し狭いくらいの部屋で、二つのベッドと机と椅子があり、ベッドの脇と机にランプが置いてあった。窓辺には、赤い花の鉢植が飾られている。

「わーーい!」

 ボスッとカレンがベッドに飛び込む。私は構わず、持っていた食料袋を机に置いた。

 カレンはバタバタしている。

「カレンさん、荷物置いたからロビーに行こう。」

「えーー、エルぅ、ベッドはふわふわで素晴らしいのに!」

 ベッドの上からカレンがそう言う。

「起きて。きっと、まだ明るいからどこかに行くんじゃない?」

 すると、今度はバッっという音が出そうな勢いで起き上がった。

「そっか!なら行こう!行くしかない!」

 この人にはスイッチの入る(?)基準があるのか?目を輝かせ、私の手を引いている……

 そうして、一階へと降りて行った。

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