4.能力値
今回は、頼れるオスカー兄さん視点です。
ルナからカードを受け取る。
ギルドを出ようと俺が歩き始めたときだった。
「そういえばルナちゃんステータス見たいって言ってたよね。行こっか。」
「うん。」
カレンがそう言って、ルナのステータスを見ることになった。
「へぇ、ステータス見るのか。あれだけ魔力込めといて平然としてるのも凄いしな。俺も見たいぜ。」
「クラウス、人のを覗くのはマナー違反だ。」
「別に良い。」
大抵の人は、ステータスを他人に見られることを嫌がる。正体不明なこの少女は、それを気にもしなかった。
記憶喪失が本当だとしたら、最初に救いの手を差し伸べた俺たちを簡単に信用してしまうのは無理も無いだろう。
「ん、そうか。」
歩きながら話しているうちに魔水晶のところまで着いた。
「これに手を乗せると石板に映し出されるわ。」
魔水晶は同じものが全部で4つあり、それぞれの間にはついたてが立っている。
魔法陣の描かれた台座に魔水晶が乗っていて、魔水晶を触るとその奥に立てられて石板にステータスが映し出される物だ。
ルナが魔水晶に手を乗せた。
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個体名
エルーシア
生命力:120/120
魔力量:1806/2075
筋力:85
魔力:1708
抵抗力:143
持久力:58
瞬発力:168
スキル
「魔術LvMAX」「闇魔法Lv7」「魔力感知Lv1」
称号スキル
「悪夢」「災禍」「封印5/5」「竜0/5」「殺人」
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石板に映し出されるステータス。
魔力が少し減っているのは、先程、カードに使ったからだろうか。
しかし見るからに異常だった。
ルナに目をやると、真顔でそれを見ていた。
まず目に付くのが個体名の欄。
『エルーシア』と表示されている。
この名前はどこかで……何だったっけか。
そして異常な魔力と、偏ったステータス。この年齢で200を超えたステータスがあること自体が異常。
スキル。最大レベルの魔術スキルと高レベルな闇魔法がある。
そして称号スキルには、『悪夢』、『災禍』の明らかに少女が持っているのは不自然なもの。『封印5/5』、『竜0/5』と言った謎のスキル。そして、一番最後に『殺人』。
普通の人間ではない…
「ルナ……」
クラウスが呟いた。
「何?」
「お前、ステータス高いな!羨ましいぜ!」
ルナは黙っている。
カレンが耳打ちしてきた。
「ね、ねぇオズ、『エルーシア』って……いや、後で話す。」
「ああ」
俺らの会話が聞こえたのか、ルナは魔水晶から手を離して、ステータスの表示を消した。
「私が、怖い?」
振り返り、こちらを見つめて言われた。哀しみ、怖れ、困惑…その瞳の中には幾つものの感情が渦巻いていて。
何も言えなかった。
するとクラウスが口を開いた。
「……俺は、貧しい村の出身で、頭も悪いし、力ばっかり強いだけで。でもこいつらは俺を見て軽蔑したり絶対にしなくて、対等な仲間として接してくれたんだ。だから、俺らはお前と今まで通り接する!な、オズ、カレン。」
その言葉に、カレンは目が覚めたように明るく言い放った。
「そうよ、何も変わらないわ!」
確かにそうだった。ステータスがどうだって、ルナはルナだ。
「そうだな。」
その言葉にも、ルナは真顔のままだった。でも、たった一つ、「ありがとう」と呟いた。
ギルドを出た。
俺は前を歩いているクラウスとルナを見て、2人に聞こえないよう街の賑わいに紛れて言った。
「カレン、さっき言ってた後で話すって何だ?」
「ルナの名前。『エルーシア』の事よ。どこかで聞いたことがあるの……オズ知らない?」
やはりカレンもそう思うか。
「俺もどこかで見聞きした事がある……気がする。気のせいかも知れないが…」
前を歩いていたクラウスとルナが振り返ってきた。
「オズ、カレン!何話してんだ?」
「特に何も!大した話じゃないよ。」
ドキドキしながら、なるべく自然に見えるように慌てて答えた。
「ところでよ、ルナ…じゃなくてエルが、エルって呼んで欲しいってよ!」
「うん。クラウス達から貰った『ルナ』の呼び方も気に入っていたけど、本当の名前が分かったから、それで呼んで欲しいの。」
「ブフッ」
ルナが顔を少し赤らめて、恥ずかしそうに笑いながらそう言うと、隣にいたカレンが吹き出した。
「うわっきったねぇ!」
「しょうがないでしょ!それにレディに向かってそれは失礼よ!」
何がしょうがないんだ?、と聞こうとしたが、その理由は直ぐに俺にも理解出来たので聞かないでおいてあげた。
「ルナちゃん…じゃなくてエル、冒険者のカードどうするの?」
「あれはあのままで良い。ルナのままで。」
「それって機能するのか?」
クラウスが言った。
「どうなんだろうなぁ?カレン、わかるか?」
「さあ?魔力込めてるから身分証にはなるんじゃない?書類で確認されたら分からないと思うけど。」
なら良いか。
話が逸れたが、せっかく本人もこちらを向いている事だし、聞いてみるか…。
「なぁエル、俺、『エルーシア』ってどこかで聞いた事があったんだが、お前の事か?」
「……知らない」
……どうやら本当に知らないようだ。真っ直ぐこちらを見て答えた。
もしくは、単に記憶喪失のせいで、目の前の謎めいた少女は、『封印されし悪夢で災禍な闇の竜』ってところか。
クラウスに言ったら「何それカッケェ!」って喜びそうな単語が並んでるな。
しかしその可能性は考え難い。何となくだが…
いろいろ考えながら歩いていたら、カレンが空腹を訴えた。
「お腹すいたー!」
「昼はとっくに過ぎてるぜ。」
「ごめん…」
エルが、自分の身分証を作っていたせいだと謝り、そんな事はないと俺らは言った。
「うん。ありがとう。私もお腹すいた。」
「そうだな。昼飯食ってから今日の宿取ろう。」
近くの店に入る。昼時じゃない事もあり、店内の客はまばらだった。
それぞれが料理を注文する。
「アタシはカレー!」
「俺はレイクバス定食だ。」
「肉だ肉!俺はオーク丼で!」
「…この中から選んで良いの?」
「おう。今日は儲かったからな。何でも選んで良いぞ。」
「じゃあ……これ。美味しそう。」
そう言ってエルが指差したのは、ドラゴン定食。
「ドラゴン定食な。」
ドラゴン定食と言っても、普通の店で売っている肉はCランクの冒険者が3人いれば倒せる程度のリトルレッサードラゴンなので、金銭的には問題ない。
「オッケー、じゃあ決まったな。」
と言って、注文を済ますと、10分くらいで料理が運ばれて来た。
それぞれが料理を食べる。
店で食べる料理は、森で食べた味気ないものとは違い、とても美味しかった。
俺の食べたレイクバス定食は、焼いた白身魚と米、貝のスープがあって、白身魚が柔らかく、熱い貝のスープが疲れた体を癒した。
ルナ改めエルはこの時共食いしています。
生命力
体のダメージの受け具合。攻撃を受けた時、怪我をした時や病気になった時に減る。HP。
魔力量
体内に蓄積された魔力。MP。
筋力
筋肉の力。
魔力
魔力量を動かす力。巨大であるほど威力の高いほど魔法を使うことができる。
抵抗力
魔法攻撃に対する防御力。
持久力
一定の運動を続ける力。
瞬発力
素早さ。
防御力がないのは、人の皮膚とかが硬くなるのは変だと思ったからです。
ステータスは大人の人間の平均を200としたもの。10歳くらいの子供なら、80くらいが普通。
因みに魔術がレベルMAXでも魔力感知と魔力操作が出来なければ魔力量を動かせないので魔法は使えないよ。