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177.燃える女

177話目です。

よろしくお願いします。

 鉄扇を広げ、オリガは口元を隠した。

「何をしているのかしら? そんな余裕ぶって見せても、貴女の危機は変わらないのだけれど」

「危機?」

 バシャン、と音を立てて鉄扇を閉じたオリガは、笑みを浮かべている。


「これは単に確認しただけですよ。貴女から私がどう見えているのか」

 おぼろげではなく、オージュからはオリガの姿がはっきりと見ているらしいことを確認できたオリガは、周囲の空気に再び魔力を流しながら言葉を続けた。

「火魔法に自信があるようですが、それは私も同じです」

「……っ!? 下手なはったりを!」


「貴女は妙なことを口走りましたね。風魔法の私が風魔法の達人で、自分が火魔法の達人だ、と」

「それがどうかした? 事実じゃない」

 オージュの声はあちこちから響いている。

 それを追いかけてオリガは音の発生源を探していた。


「魔法に対する……というより、自然現象に対する理解が足りません。私とて、余の賢者すら教えを乞う程の知識をお持ちである一二三様の足元にも及びませんが、貴女はそんな私の足元にも及びません」

「なにを……強がりを!」

 オージュが放った火炎弾がオリガを襲う。


 しかし今回、オリガはよけようとすらしなかった。

「無駄です」

 火球はオリガへと到達する前に激しくはじけ飛び、小さな火を散り散りに飛ばしながらかき消えてしまった。

「えっ……?」


「火が燃えるには二つの者が必要です。燃焼するものと酸素が」

 正確にはもう一つ点火物が必要だが、オリガは省略した。

「魔法で火を起こすとき、魔力を炎へ変更する。魔力が燃焼するものになっているわけです」

「その通りよ! だから魔力が続く限り炎は燃える!」

 叫びながらオージュが再び火球を放つ。


 しかし、それは再びはじけ飛んだ。

「そうです。魔力が続けば」

 オリガは自らの魔力を操作することでオージュと火球の繋がりを遮断し、さらには魔力を使い切らせるために酸素を供給して爆発させたのだ。

「空気を操ることができる私にとって、貴女が作り出す火球は私にとっての武器にもなるのです」


 息を飲む音が聞こえる。

 オージュは自分の魔法に絶対の自信を持っていたのだろう。それがいとも簡単に乗っ取られ、破壊される。

 恐怖したオージュは、身を隠すことも忘れ、自分の頭上に巨大な火球を作り出そうとして止めた。乗っ取りを恐れたからだ。


 そこで、オージュは三十を超える小さな火球を作り出した。

「いくらオリガと言えど、この数を乗っ取ることはできないはず」

「そうですね。でも……」

 オージュは気付いていなかった。そのことで自分の位置が完全にばれてしまっていることに。


「行ったでしょう。私は空気を操ることで貴女の魔法を私の武器にできる、と」

 オリガはオージュの周囲に浮かんでいる火球へ向けて、一気に酸素を供給した。酸素にはオリガの魔力もたっぷりと織り込まれており、燃焼材と酸素を同時に受け取った火球は爆発的に燃焼する。

 オージュの周囲で。


「あっ……」

 声を上げた反応を最後に、オージュの姿は爆炎の中へと消えていった。

 燃焼よりも先に圧力がオージュの身体を四方八方から押しつぶし、そして熱が伝わり、炎が映る。

 声を上げようとしても酸素は全て炎に奪われており、音は爆炎が全て塗りつぶした。


 炎が収まった跡には、自らの炎で燃え尽きたオージュの欠片が焼け焦げて転がっているだけだった。

「さて……」

 オリガは足の痛みを思い出したように座り込んだ。

「ハジメを探さなくては……」


 オージュの足取りはおそらく途中までは本来の目的地へと向かっていただろう。オージュを捕らえて話を聞くことも考えたが、おそらく無駄だとオリガは判断し、殺すことにした。

 ここからは、別の方法で足取りを追う必要があった。

「どうしましょうか」

 考えつつも、疲労の色濃いオリガは、いつの間にかぐったりと座ったままでうとうとと眠りに入って行った。

お読みいただきましてありがとうございます。

次回もよろしくお願いします。

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