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170/204

170.ソードランテ脱出

170話目です。

よろしくお願いします。

「うーむ……」

 手応えが今一つ、と一二三は鞭のように伸びる魔力の触手で敵を両断しながら首を傾げた。

 強いことは間違いないのだが、人を殺しているという実感に欠ける。自分とつながっているのはわかるのだが、どこか自動的な部分もあるのは否めない。


 一二三は不満と違和感に唸り声を漏らしながら前進する。

 その間にも、触手に寸断された兵士たちがばらまかれ、血の雨が周囲の兵士たちを赤く染めていく。

 後ろからついてくるヴィーネは一二三が新たな攻撃方法を見せたことをキラキラとした目で見ているが、当人の不満にも気づいているようだ。


「また手の形にしたらよろしいのでは?」

「そうだなぁ……おっ、そうだ」

 一二三は何かを思いついたようで、敵を殺戮しながらも触手の一部を切り離した。

「……駄目か」

 繋がりを失った触手は、元の塗料に戻ってべちゃりと地面に落ちてしまう。


 パウダーと同様に、魔力塗料も一二三と接触して魔力の供給を受けていることで形を保っているようだ。

 ふと、一二三は触手の一部を打ち出した。

「がっ……」

 弾丸のように飛来した塗料に額を打ち抜かれ、脳漿を後頭部からまき散らして兵士が倒れる。


「こういう真似はできるが」

 だが、それもつまらない。

 拳銃が一応は作られているこの世界で一二三はそこに敵としての期待は抱いても、自分が使う方向では興味を示さなかった。

 それもこれも、殺人欲求を満たすのにあまりにも簡単で手応えがなさすぎるからだ。


 一二三はふと、左手の触手の形を変えて、刀のような形状へと変えた。

 刃渡りは彼の使い慣れた二尺三寸五分。鍔の形状も自分好みの穴が小さい、飾り気の少ないものにする。

 そして、右手を添えて構えると、形だけは日本刀になった。

「……こう使うとしよう」


 右手だけで振るう場合は、左手首から細く糸を伸ばす様にしておけば良い。慣れれば右手で直接魔力を通して形を保つこともできるだろう。

 両手で刀を構えた格好になった一二三は、差し当たって真横から来た相手に対して横一閃の斬撃を繰り出した。

「悪くない」


 しっかりと手応えを感じ、血肉をかき分けて骨を断つ手触りに頬が緩むのを感じながら、一二三はさらに前に出る。

「さあ、さあさあ! 馴染むまで百人は斬りたい! どんどんかかってこい!」

 首筋を撥ね斬り、眼窩を貫いて脳を破壊し、頭蓋を両断し、胴体を断ち割る。

 風を斬り裂くような音が立て続けに起き、つむじ風のような軽快なステップで一二三の足はぐいぐいと前に進む。


 後に残るのは死体だけだ。

 そのまま二時間ほど殺しに殺した一二三は、すっかり血まみれになってヴィーネと共に悠々とソードランテを後にした。

 町は惨憺たる有様で、大きくえぐられた城跡からまっすぐと続いている大通りには、命を失った死体が数えきれないほどに重なり合っていた。


 死の臭いが充満する表通りは、それから長い間放棄されることになる。

お読みいただきましてありがとうございます。

次回もよろしくお願いいたします。

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