未来を懸けた聖戦
――戦いの鐘は鳴った。
鐘の合図と共に、彼は己の武器を構える。負けられない戦いが、今始まった。
彼は武器を走らせ果敢に敵へと向かってゆく。しかし敵は強敵で攻略は難しく、一向に倒せない…。
(くそっ、こんな所で時間を食ってる暇はなねぇのに!!)
そう、敵はまだまだ居る。こんな所で詰まっていられない。彼は目の前の敵の後ろをちらりと覗く。後ろに居る敵は、どれもが強敵そうだ。
彼は何とか一つ目の敵を制し、二つ目へと掛かる。これまた難敵だ。しかし諦める訳には行かない。己の知恵と技をもって彼は戦ってゆく。
(ここを…こうして…こうだ!)
彼は必死に喰らい付いてゆく。
(くそっ…駄目だ。他のヤツに…)
直ぐには片付けられないと思った彼は、目の前の敵を無視し、他へと取り掛かる。
(コイツも駄目、コイツも…くそっ何なんだよもう!全然駄目じゃないか!)
彼は己の無力を嘆く。しかし戦況は変わらない。毎日努力していればこの戦況を覆せたかもしれない。でもそれは“IF”の話だ。今の話ではない。これでも彼は一応この戦いの一週間前ほどから努力はしたつもりだった。付け焼刃だろうがなんだろうが努力は努力だと…。
しかしそれは通用しなかった。所詮、付け焼刃は付け焼刃でしかなかった。
それでも彼は諦めない。昔の人は言っていた。「諦めたら試合終了」だと…。
人は自分ではどうしようもない時、何かに縋ろうとする。それは神か、はたまた自らが生み出した空想上の創造物など様々だ。
(ドラゴン!俺に力を貸せ!)
どうやら彼は後者だったようだ。しかし極度の思い込みは、時に奇跡を起こしたりもする。
(きぃたぁぁぁああ!!キタコレ、これで勝つる!)
ドラゴン(笑)の力により何とか敵を倒すことに成功した彼は、調子に乗り自分の中で、どんどん中二病を加速させていく…。
(さぁ、ショウタイムだ。ここからはずっと俺のターン!)
しかし奇跡とはそう何度も起こる物ではない。
(だー!やっぱり分からん!)
そうこうしているうちに、時間だけがどんどん過ぎてゆく。彼は武器を操り果敢に戦うが、倒した数はそれほど多くは無い。
(くそっ、くそっ!このままじゃ!もう時間が無い!でも諦めない!この戦いに、俺の未来が掛かっているんだから!負けられない戦いが!今!ここに在るんだ!!)
彼は思考を加速させる。加速し、加速し、加速し、敵をどう倒すか知恵を絞る。
そして、深く考え、彼はようやく攻略法を思いついた。
(分かった!こいつはこうすれば…)
彼の武器が敵に届く。そして敵に傷跡付け、その手に勝利を収めようとした正にその瞬間――
―――キーンコーンカーンコーン…キーンコーンカーンコーン―――
「はぁい、終了。ペン置いて、解答用紙後ろから順に回収して」
(…終わった…。)
彼の戦いは終わった。それはもう、いろんな意味で終わったのだ。
彼は己の武器(シャーペン)を地面|(机)に置いた。
そう、何を隠そうこの戦いは、学生なら誰もが通る道…所謂定期試験だったのだ。今日はこの試験で終わり、明日が最終日だった。
彼は改めて自分の戦果|(解答用紙)を見た。
(みーごとに、真っ白だわ…。)
彼の解答用紙は、三分の一程しか埋められていなかった。
(こりゃ…赤点か…?)
彼はその場でうな垂れ、一番後ろの席の人に自分の解答用紙を持っていかれた。
「あ~、終わった、終わった。よ~、お前どうだった?」
彼の友人が彼に話しかけて来るが、今の彼に返す気力はあまり無かった。
「お前は~…?」
「ん~、まぁそこそこだな。何とか赤点は免れたんじゃないか?」
そんな事を言ってのける友人に、彼は若干恨みを込めた視線を向ける。
「この裏切り者が~…!」
「え、お前そんなヤバイの?乙~(笑)」
「死ねや!」
半笑いで言ってくる友人に一発蹴りを噛ますと、彼は帰り支度をさっさと済ませ、横で弁慶の泣き所を抑えて蹲っている友人をサクッと無視して、明日の事を思う。まだ明日もあるという事を思うと、彼は少し鬱になった。
(明日こそ頑張ろう。)
彼はそう決意し、帰路に着いた。しかし彼はまだ気づいていない。たった今決意した事が、「明日から本気だす。」と同じ意味合いを持つことに…まだ、気づいてはいない…。
そして試験最終日、彼がどうなったかは、皆様のご想像にお任せする事にしよう。
この小説は作者が試験期間中コツコツと暇つぶしに書いた物である。
ネタとして戦記にしているのである。(笑)




