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月女神の庭で。  作者: 祐多
第一章
9/31

街──3

 





 記入を終えて、紙と万年筆を受付嬢に手渡すと、受付嬢は笑顔で受け取って、内容を確認する。



「大丈夫そうですね。……ギルドカードはできるまで暫く時間がかかります。明日の朝に取りに来てください」


「はい、わかりました」



 ぴょんと椅子から飛び降りて、ルラは頷いた。そして、一つのことに気がつく。



「今さらですが、登録料とかはかからないのですか?」



 カードを発行するのにも、金がかかっているはずなのだ。



「あぁ、登録料等は無料ですよ。有料ですと、ギルドの入会者が減りますからね」



 ──確かにそうだ。ギルドに登録して稼ぎたくても登録料が払えない者が出てくるのだろう。



「では、基本的な説明をします。──」



 受付嬢はゆっくりと説明を始めた。



 登録者にはランクというものが存在するらしい。一番下はGで、GFEと上がっていき、Aの次は最高ランクのSで、Sランクの冒険者は三名しかいない。最初は誰でもGかららしいので、ルラもGランクだ。Dランクになると一人前として扱われるそうだ。


 ギルドの建物内にあるランク別の掲示板にはられている依頼書から依頼を選び、受付へ持っていくと依頼を受注できる。自分のランクよりも低いランクのものか、自分と同じランク、もしくは一つ上のランクのものならば受けることができる。あまり自分のランクより低いランクのものをばかりを受け続けると、ランクが下がることがあるために注意が必要らしい。依頼は複数受けることが可能であるため、高ランクの冒険者は、依頼のついでにと低ランクの依頼を受けることもあるそうだ。


 依頼には、街の中での雑用から魔物の討伐まで様々なものがあり、街の中での雑用の場合、依頼主に依頼達成の証拠としてサインをもらい、魔物討伐ならギルドが指定するその魔物の特定部位を持ってくれば、依頼達成となり、ポイントがもらえる。ポイントが貯まればランクアップとなるが、Dランク以上はランクアップのための試験があるらしい。


 依頼は期間があるものが大半であり、その期間内に達成できなければ依頼は失敗となる。


 もし依頼に失敗した場合、違約金を支払わなければならない。何度も失敗をすれば、ギルドから強制的に脱退させられる。


 依頼中に死亡した場合、ギルドは責任をとらない。依頼は失敗したことになるが、この場合はもし違約金は遺品が見つかればそこから支払われる。


 この隣の受付では、魔物や薬草等の買い取りをしていおり、依頼で求められている魔物の部位や薬草以外の買い取りをしてくれる。



「大体こんな感じですね。……なにかご質問はありますか?」


「いえ、特には」



 ──つまりは各自で責任を持って依頼を受けろ、ということなのだ。



「ではこれで説明は終わりますが……、そちらのものこの隣で買い取りできますよ」


「本当ですか!」



 そちらのもの、とはすなわち、ここに来るまでに採取した薬草やあのウサギの毛皮である。

 これでようやく一文無しから脱出だ。


 受付嬢に礼を言って、ケビンと共に素材買い取りの列に並ぶ。



「ケビンさんも何か買い取ってもらうものがあるんですか?」


「ここの街に来るまでにビッグホーニトと遭遇したから、やつらの針をとった」



 ──巨大雀蜂ビッグホーニト。針に猛毒を持つが、毒は使いようには薬になる。あの女性からもらった知識の中には、ビッグホーニトの毒を使った薬の作り方もあった。


 ちなみにビッグホーニトは名前のとおり巨大な雀蜂だ。体長は今推定十二歳のルラの拳五つ分はある。



 順番が回ってきたため、ルラはウサギの毛皮と薬草を受付の男性に差し出した。



「裏赤草の葉と野兎の毛皮ですね。……葉の方は五枚で銅貨一枚、毛皮は状態が良いので半銀貨一枚、合計で半銀貨一枚と銅貨四枚でどうでしょうか」



 女性からもらった知識によれば、一般的な果実──地球でいうリンゴのようなもの──が一つで半銅貨一枚である。つまり、半銅貨はだいたい50円~100円で、半銅貨は二枚で銅貨一枚、半銀貨はだいたい銅貨二十枚──銀の含有量によってレートが変動することがあるらしい──であるため、半銅貨を75円と換算すれば、半銀貨一枚と銅貨四枚は3600円だ。


 このままでは宿にも泊まれないだろうが、それ相応の額である。



「それでお願いします」


「かしこまりました。……枚数をお確かめください」



 枚数を確かめてから、 黒いマントの裏のポケットに仕舞った。



 ──冒険者をするのに、服装は問題ないだろう。ルラは今、深くスリットの入った白いミニスカートをはいており、その下には太股を半分覆うくらいの長さのスパッツをはいていた。足元は膝上まである編み上げのこちらも白のブーツに、黒いニーハイソックスをガーターベルトで吊っている。上はこれまた白いブラウスでその上に金属製の胸当てをしており、そして黒いマントを羽織っていた。


 生前のルラならば絶対にしない女の子らしい格好に、自分の服装に気がついたときは絶句したが。


 おそらくはあの女性の趣味なのだろう。なんせ、ルラが最後に着ていたのは、可愛いげのないパジャマであったのだから。



 にしても、あの女性、趣味がよい。スカートに施された縁取るような金の刺繍は派手すぎず地味すぎず、ブラウスにはさりげないところにレースやフリルがあり、大人しめな印象をうける薄い桃色の細いリボンが首元と袖と裾にある。


 ブーツにもスカートとそろいの刺繍があり、胸当ての隅にもおなじくそろいの模様がある。小さな花と蔦の模様だ。




 ──となれば、宿代と食事代をどうにかしなければならない。



 ケビンが針を売却するのを待って、彼に断りを入れて受付嬢のもとへ戻る。カードができる前に依頼を受けることが可能かと聞いたところ、可能であるとの解答がもらえ、ルラはケビンと共に掲示板に向かった。



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