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月女神の庭で。  作者: 祐多
第二章
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護衛──5

 




「っなんだよ、部外者は引っ込んでろ!」



 ギースがCランク冒険者であることを知っているのかはわからない。しかし、男は怯み、僅かに退いた。ギースの風貌ふうぼう故だったかもしれない。



「部外者じゃあないさ。俺はお前と同じように今回の護衛依頼を受けている。お前らが足を止めたら迷惑だ」



 ──その言葉がルラを助けるためのこじつけだとわかっている。だが、わかってはいても少しばかり寂しい気持ちになるのは、ルラを直接庇う言葉ではないせいだろう。


 ギロリと睨まれた男は顔を歪めたが、ルラの腕を離そうとはしない。ギリギリと音がしそうなほどに強く握りしめられて痛い。

 絶対に跡がついているだろう、と頭の隅で考えながら、男の手から逃れるべきかと思案する。


 男の手を外すこと自体は、あまり難しいことではない。幸いルラには多少ながらも武道のたしなみがあるのだ。それに、痴漢撃退法的なものも警察の開いた講習会で習ったことがある。

 しかしながら、手を外させたあとのことを考えると、それは良策ではないだろう。どんないちゃもんをつけられるかわかったものではない。骨折しただの関節を痛めただのと言われて慰謝料を請求される──なんてことが起こるに決まっている。


 できるだけ穏便にこの場を凌ぎたい。


 しかし、そんなルラの願いは叶えられることなく、──男は背負っていた大鎌を手にした。



「殺るか? あぁ?」



 わざと下から睨み上げる、というなんとも典型的な不良の仕草をして見せた男に、ルラは呆れた。

 この男は、どれだけ『馬鹿』なのだろうか。『荒れ狂う一角獣ユニコーン』のメンバーは三人で、『竜鱗りゅうりん』のメンバーは四人だ。男が彼らを知らずとも、この依頼を受けている以上、『竜鱗』のメンバーは最低でもEランク以上のランクの持ち主だとわかるはずである。

 そして『ユニコーン』のメンバー三人はEランクであり、仲間が揃ったとしても三対四となって明らかに『ユニコーン』が不利だ。


 それとも、余程実力に自信があるのだろうか。筋肉は多少ついているであろうが柔らかそうな肉の残る男に対し、防具の上からでも鍛え抜かれた体の持ち主だとわかるギース。……その自信は、どこからやってくるのか。


 だが、直後、ルラは目を見開いた。



「炎の力よ、ここに具現化し、我に従いたまえ“ファイアボール”!」



 にやりと笑った男の掌から、魔法が放たれる。

 そう、なんと男は、魔法を使えたのだ。魔法を使えるような者はすぐにDランクになる──とは受付嬢から聞いた話であるが、ならばなぜ男はEランクなのだろうか。もしかしたら冒険者ギルドに登録したばかりなのだろうか。



 ──これは、あとから聞いた話であるが、『ユニコーン』のメンバーは素行の悪さのせいでDランクからランク落ちさせられたらしい。つまり、実力的にギースに勝っていると驕りを抱いての行動だったようだ。



 朱色の炎の、野球ボールほどの大きさの丸い塊が、ギースに向かっていく。だが、ギースとて伊達にCランクではないのだ。

 眉ひとつ動かすことをせず、ギースは僅かに身体を右に傾けてあっさりとそれをかわした。流石である。



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