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月女神の庭で。  作者: 祐多
第二章
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護衛──4

 




 面倒な状況に陥った。目の前に立つ男にどう対応しようかと頭を働かせる。



「餓鬼のくせにいっちょまえに護衛依頼なんぞ受けやがって……。小僧は家に帰ってママにご本でも読んでもらってろよ」



 哄笑をあげる男に、ルラはぴくりと眉を動かした。ここまで典型的な『馬鹿』がいるとは思わなかった。怒りを抱く以前に、男の頭の空っぽさ具合が憐れに思えてきてしまう。



(何て言うか……可哀想な人だな)



 脳みそまで筋肉なたぐいの人ではなさそうだ。筋肉はついていそうだが、ほどよく脂肪もありそうな体型である。


 となれば、あれか。頭を強くぶつけでもしたのだろうか。それとも生まれつき残念な思考回路をしていたのだろうか。どちらにしろ、救い様のない『馬鹿』であろう。


 この依頼を受注できているということは、ギルドの受付で正式な手続きをしているということであり、ランクは足りているということである。ランクが足りているならば、実力的な問題はないはずだ。

 確かにルラの見た目は餓鬼であろうが、実力は年齢で判断できるものではないだろう。ルラくらいの年頃の子供であっても、幼い頃からそれなりの訓練をしていればEランク依頼において足手纏いになることはない。

 逆に大人であっても鍛えていなければ、たかがEランクの護衛依頼であっても、移動速度にすらついていけないだろう。魔獣討伐など、脂肪だらけの身体ではできないに違いない。



 つまり、この男の言葉はルラにとって余計なお節介でしかない。言い返すこともせず、笑い声をあげる男を置いて再び歩き始めたルラの腕を、男が強く掴んだ。


 何用ですか、と訊ねようとしたルラの首に、何かひやりとしたものが当てられる。──鎌の刃だ。



「なに無視してんだよ!」



 ──さすがに首に刃物を宛がわれたのは初めてである。身体が硬直するが、逃れる手がないわけではないのだ。こちらには魔法というものがあるのである。


 早まる鼓動を押さえつけようとするが、どうも上手くいかない。『キレる若者』なんて言葉がふと思い浮かび、このような状況にも関わらず笑い出しそうになってしまった。



「止めないか」



 止めに入ってくれたのは、ギースだ。なんとも頼もしい。


 しかしながら、その表情はとても怖かった。強面の顔に眉間にしわを寄せた彼は、幼子が一目でも目にしたら泣き叫ぶであろう、などと失礼な想像をしてしまうほどに恐ろしい形相であった。

 『荒れ狂う一角獣ユニコーン』のメンバーであるらしいこの男以上に悪人面であるという事実。筋肉質であろうがある程度脂肪のある『ユニコーン』の男の方が、ギースと比べるとどちらかといえば善人そうだ。

 端から見たら、十を過ぎたばかりの子供(精神年齢は高校生のルラ)を気性の荒い冒険者(中身は穏やかな性格のギース)から守ろうと他の冒険者(悪評のある『ユニコーン』の男)が子供の腕を掴んだ、というシーンに見えてしまうかもしれない。何とも見た目と中身がちぐはぐである。



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